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【Ⅸ】隠者 ~忍者 服部半蔵~

今回の武田家上洛イベントで、大規模戦闘用サーバに本格的に火が入る。

えげつないほどの人数の戦闘を処理するハイエンドモデル。


上洛作戦は、一言坂、二俣城、三方が原、野田城、岡崎城、そして決戦場の6つの戦場から成る。

武田家の総兵力を、名将たちが率いて各戦場の攻略にあたり、対する徳川家も総力を挙げて防衛に取り組む。

決戦場を除く5カ所の戦場は10個の「チャネル」に分割されており、

AIたちは、10のチャネルにランダムに分配されて戦闘する。

一方でプレイヤは、5カ所*10チャネル*2陣営 から自由にひとつを選んで参戦できる。

徳川方につくプレイヤは、少しでも武田家の兵力を削る事が目的となり、

武田方につくプレイヤは、武田家の軍勢の損害を軽減させながら、徳川の防壁を突破するのが目的である。

「決戦場」は、織田家VS残った武田勢の架空の大決戦。

ここに出場できるプレイヤは、5カ所の戦場での成績上位者のみ。


選んだチャネルにより戦力が異なるため、運が悪ければ多数の敵に囲まれる。

しかし、逆に味方が多すぎて敵が少なくても、成果の取り合いとなり、決戦に出られなくなる。

どの戦場に出撃するか、プレイヤ達はギルド単位で頭を悩ませていた。

武田家有利と思われた合戦ではあるが、ネットでの下馬票では徳川側有利。

ランカーを幾人も抱えるトップ連合「西方不敗」が総員そろって徳川方に肩入れを宣言。

それが徳川家人気を押し上げているのだ。


■二俣城

俺が辿り着いた時、二俣城は上洛イベントの登録を行うプレイヤ達とその配下でごった返していた。

臨時に配置されたAI武将が、声高に戦場心得(合戦ルール)を説明したり、受付をしているのが見える。

今回、俺は戦目付けという立場であるので、相馬と流水斎を連れただけで、兵力はゼロ。

「良いんですか?お館さま」

相馬が生真面目に突っ込みを入れてくる。

「いやぁ、多少の兵力を入れても、今更感だし」

正直、万のレベルで兵士が動いているので、動きにくいってありゃしなかった。

合戦の登録手続きが行われると、一般兵士たちは一足先に登録先のチャネルに転移し、合戦の準備期間が始まるまで「凍結」されることになる。



城に入る前に、城の周囲を一回りすることにした。

籠城に備えて、「穴」の有無を確認するのも戦目付けの仕事らしい。

『古来、中国では目に呪力が宿るとされていた。

目付けとは、その呪力を持った目で城壁や城門見つめ、呪力をもって城を守護するための役職なのである』

と、二俣城までの道中、相馬に教えてもらった。

なんとなく、民明館書房的な気がしないでもないが。

「相馬、城壁見てなんかわかるか?」

「いやぁ、私、江利津殿と違って、墨子は知らないのですよねぇ」

彼は、はっはっはと乾いた笑いをたてる。

当然、知力が低い俺が城壁を見回してみても、何にもわからん。

いったい、何のための「目付け」なのやら。

「流水斎、忍者的にはどうなんだ?」

「要所要所に憎い仕掛けが施されていますのぅ。

なかなかの者が詰めているらしいですぞ」

「お前がそういうのなら、忍者対策は十分かな」

「お館さま。そいつがお出ましのようですぞ」

流水斎が俺をかばうように、素早く俺の背後に移動する。

ガサガサと音を立てて、一人の農民風の男が木々から現れた。

手拭いで頬かむりをしているので、顔は見えない。


「もしや、もしや、佐久間内膳正殿では御座いませんかっ!?」

咄嗟に彼のステータスを見ると、全て「隠匿」状態。

ただのモブ忍者ではありえず、流水斎並みの上級忍者だ。

ちらりと流水斎の方をみると、彼はニヤリと笑って警戒を解く。

「お館さま、この者は私の友人の息子で、服部といいます。

怪しいものではありませぬ。服部、顔を見せてみろ」

「拙者は、服部半蔵正成と申す」

忍者ハットリくんは、予想よりも悪人顔でした。

彼は、手拭いを外して素顔をさらした後、いきなり地面に平伏する。

「佐久間内膳正殿、かつての、三河の幼子とのお約束を覚えて居られますでしょうか?」

「当然だぞ、半蔵。

ワシの主君は、どんな些細な約束事も反故にする方ではない。

上月城では、一度の口約束を守り、我が身を顧みずに敵陣に赴かれた」

横から、流水斎がドヤ顔で自慢する。

「やはり、やはり、佐久間殿こそが男の中の男でござるっ!」

服部正成は、ひれ伏したまま、男泣きに号泣を始める。

「あ、いや我々は……ぐふぅ」

間違いを訂正しようとした相馬の脇腹に、流水斎の鉄拳がめり込む。

「我が恩義ある主の嫡男、信康殿が故なき讒言に陥れられ、明日をも知れぬ命。

約定を違えず、佐久間殿が二俣城に来られたその赤心、心より感服いたします」

【服部半蔵とコネができました。技術+2】


かつて、三河を旅した時、俺は一人の少年とコネが出来た。

幼名竹千代、長じて、松平信康。

当時、知らずに配下にならないかと勧誘したところ、あっさり断られた。

「何かあったら、よろしくね」の捨て台詞を残して。


上洛イベントの裏で目立たなかったけど、切腹イベントが同時に動いていたのか。

こりゃあ、いっちょ助けに行かないと寝覚めが悪いな。

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