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【Ⅰ】魔術師 ~旅の始まり~

その日、俺はぽえると配下PTを組んで銀稼ぎクエストに勤しんでいた。

連れて行った配下武将は、直接戦闘力を考慮して、かえでさんと元太。

ぽえるの側も、腕っぷしで選ばれた猛者が2人。

彼ら、武闘派の配下武将4人を前線に立たせ、俺とぽえるは後衛。

「天下統一は先の長い話になりそうだな~」

「史実上、これから何十年もかかるのですから、仕方ないですよ」

ぽえるとだべりながら、配下武将の戦闘を見守る。

成長により『勧誘』『投網』『威圧』等、デバフ系のスキルが充実している。

弱体化させてしまえば、盗賊だろうが熊だろうが恐れるに足らない。

「そういえば、鷹目さんが野田城に籠るって言ってましたよ」

「狙撃でもする気かねぇ」

「史実では、そういう話もありますね」

「あいつならやりかねん」

最近、武田家の上洛イベントに向けて、ゲーム内が非常に騒がしい。

何日もかけて部隊を移動させ、遠く東北や四国から遠征する猛者もいる。

だが、俺もぽえるも参加予定は無く、のんびりとしたものだ。

たわいもないことを話しながら、今日のクエストノルマを終えて領地に戻った。


領地では、最近、軍事施設が増加傾向にある。

先日の一時徴兵で戦場を経験した農家の次男坊、三男坊の志願兵が増えているからだ。

兵力維持費用もバカにならないので、領主としては

「開墾するから、農家してくれよ」

という思いもあるのだが、世の中上手くいかないものである。

(※農家の子弟は、スキル『農業』を持っているので、収穫量が増える)


「お館さま~、和尚様がお呼びです」

ぶらぶらと城下町をひやかしながら城を目指していると、寺の小坊主が何処からか走り寄ってきた。

和尚とダベりに寺に行ったとき、大きな湯のみでお茶を出してきたガキだ。

華麗にスルーしておいたことは言うまでも無い。

小坊主に案内され、向かった先は「食う寝る遊ぶ」の最上級施設、歌舞伎町。

(和尚が来て良いところじゃないだろ)と、内心突っ込みながら、

片隅の蕎麦屋へ向かう。

奥座敷では、和尚(足利義輝)と三毛村さんが話しあっていた。

三毛村さんが俺に気づいて手招きをしてくるのが、どう見ても招き猫。

「お館さま、大変だぞぉ。毛利の外交僧、安国寺恵瓊が来た」

「三毛村殿が機転を利かせてくれてな。

拙僧はここで匿ってもらっているというわけだ」

和尚は左手一本で器用に蕎麦を手繰り、酒の肴にしている。

彼は一応元将軍だけに、恵瓊には面が割れている。


毛利家が先日の件で、何か仕返しにでも動いたか?

武田家といい、毛利家といい、どうして大大名は善良な弱小プレイヤを目の敵にするのかな。

「それは弟(相馬)の出番ですね」

腕組みをして考え込んだ俺を見て、かえでさんが横から助け舟を出してくれる。

「愚弟は、昔、西の方にも見聞を広めに行っていたはずです」

「すまんが、ちょっと呼んできてくれ」

「わかりました」

「外交」系のやりとりでは、政治能力が求められる。

配下で政治が高い面子は、三毛村さん、相馬、阿部の3人。

相馬以外の2人は、性格や容姿の面で、外交官としては問題があるので、必然的に相馬の出番である。

さらに、相馬はいろいろと各地を巡った経験があるので、意外な知識を持つことが多く、外交官として高い適正を持っている。


ところで、安国寺恵瓊。

実在の彼は、毛利元就に滅ぼされた安芸武田家の末裔(と言われている)

落城の際に武将に助け出された後、紆余曲折を経て禅僧となり、毛利家の外交僧だった師匠の跡を継ぎ、仇敵毛利家の外交僧として、この時代を生きぬいた人物である。

足利幕府最後の将軍、足利義昭との付き合いもある、コネの広い人だ。

このゲーム内では、世にも珍しい魅力特化の武将である。

ちなみに、毛利元就は未だ存命。

隠居武将であるため、居住地の吉田郡山城付近を離れることが出来ないが、

歴史とは違った、ゲームでの「if」の活躍が望まれている。



相馬と合流し、寺へと向かう。

「わざわざ宣戦布告でしょうか?」

「嫌がらせだろ、それ」

「なんでまた、零細小名のうちに来ますかねぇ」

ぶつくさ言いながら寺に向かうと、20代半ばの超イケメン坊主が待ちかまえていた。

目元涼やか、口元すっきり。

カツラをかぶったら、そのままジャニーズに入れると思う。

「佐久間内膳正どの、お初にお目にかかります。

安芸安国寺の住持、恵瓊と申します」

イケメンは何をやっても、立ち居振る舞いが格好いいネ。

「本題ですが、毛利の大殿(毛利元就)から、貴方様に感状を御預かりしております」

彼は、懐から丁寧に包まれた書状を取りだす。

「感状は配下に対して出すものでしょう?無関係な私が、これを受け取るわけにはいかない」

「ふふ、冗談です。本当は、大殿ご直筆の貴殿連合との同盟依願書です」

「それも、受け取るわけにはいかないな」

「織田家、いや羽柴殿との友誼の為、というわけですかな」

「そう思っていただいて構いません」

「さすがは、あの御兄弟を手玉に取られた佐久間殿だ。

大殿があなたのことを気になされるはずです」

彼は、言いたいことだけ言うと、同盟依願書を置いたまま帰っていった。


【安国寺恵瓊とコネができました。政治+1】


「お館さま、同盟をお受けになるのですか?」

相馬が訪ねる。

「今さら同盟しても良いこと無いだろ?これはこのまま、羽柴殿に渡そう」

「それが良いでしょうね。最近平和ですし、お館様直々にお渡しされるのが良いかと」

「そうだな。上月城をもらったお礼も兼ねて、一度会いに行ってくるか」


転移を使えば、秀吉が拠点にしている姫路城まではすぐに行き来できる。

俺は、軽い日帰り旅行程度の気持ちで、姫路城まで行くことにした。

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