上月城の戦い5 ~戦を終えて~
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別働隊の帰路は、小早川、宇喜多の動きを確認しながら、ゆっくりと一日かけて進む。
偵察隊の偵察結果によると、小早川は散逸した兵士を再編したものの、反撃を諦めて帰還していったらしい。
今回の策戦は、毛利方が、吉川、小早川、宇喜多の3つの集合体であるところに目を付けた。
吉川は、調略(『脅迫』)で無効化させ、小早川、宇喜多は、ぽえるの「離間の計」を用いることで、連携行動を封鎖。
宇喜多の兵力は攻城戦で削いでおき、小早川の兵力は奇襲で削いでおくことで、兵数を正面決戦できないまでに減らして反撃を封じる。
予想外の事態はあったが、うまくいったもんだ。
退却をしながら、その日はログアウトした。
ログアウトしている間、ゲーム内の身体は代理AIがちゃんと動かしていてくれる。
翌日、ログインすると、ちょうど別働隊が上月城に入城するところだった。
一歩先に城に戻った山中幸盛は、尼子勝久や他の武将たちに囲まれながらお互いの武勲をうれしそうに自慢しあっている。
「佐久間さん、小早川部隊を潰走させた ってすごいじゃないですか!
どんな策をつかったのですか?」
ぽえるが駆け寄ってきて、憧れ色のきらきらした目で俺を見つめる。
「あぁ、策、策ね。それは言えないなぁ、秘密だよ」
「うわぁ、すっごく気になりますね」
ものすごく後ろめたい。
それから数日は、戦後の後片付けで過ぎていった。
我々は上月城の倉庫を空っぽにして先方に引き渡したが、毛利勢が満タンにして返してくれた。
そのおかげで、消耗した武器防具や兵糧は補てんできた。
だが、大量に使用した火薬の類は完全に持ち出し。
バージョンアップ特需のせいなのか、火薬関連が以前の2~3倍ほどのお値段になっており、
しばらくは派手な行動は行うことが出来そうに無い。
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戦後処理を行っている間に、織田家から尼子勝久の無血開城を叱責する使者が到着した。
しかし、尼子勝久と使者との会見場所は、当の上月城大広間。
たまたま上月城に来ていた俺も同席させてもらった。
上月城は未だ補修途中。所々に戦闘の名残を留め、激戦があったことを物語っている。
終わってみれば、織田側の尼子勢が周辺諸氏と共闘し、織田本隊の力を借りずに、独力で上月城を守り通した。
毛利両川と宇喜多忠家が率いる部隊に、万を超える損害を与え、多数の物資を奪い、損壊させた攻城兵器も数知れず。
これは、一方的な勝利と喧伝しても差し支えない。
使者は、流石にその辺はしっかり押さえており、尼子勝久の武勇伝を聞いて
「さすが、謀聖の血筋!」「その場に居たかったでござる」
と軽くかわしていた。
俺は、毛利両川の、吉川、小早川を相次いで撃退したことで、
隠し称号『両川返し』を手に入れた。
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【今回のバージョンアップで追加されたスキルの不具合修正を行いました】
【ご迷惑をおかけし、真に申し訳ございませんでした 「俺様の野望」開発チーム】
ネットで流れていた情報によると、
『鼓舞』は本来、魅力値半分の士気上げ効果があるらしい。
スキル使用の結果として士気100超えもありうるので、今回のバージョンアップで『鼓舞』使用時に限り、士気100上限を解除したそうな。
しかし、運営は大成功による数値効果倍増ボーナスを忘れていたらしく、あっけなくバランス崩壊。
その後、『鼓舞』は大成功しないスキルとして調整しなおされ、さらに士気は上限100を超えないように修正された。
次回からは、またまた新章です。




