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戦国時代風VRMMOSLG 「俺様の野望」!!  作者: めへめへさん
大更改時代 ~上月城の戦い~
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上月城の戦い3 ~謀聖~

■ゲーム時間での2日後

リアルでは学生の夏休みが始まり、ぽえるも少しばかりは夜更かしが許可される。

ゲーム世界で、俺たちの反撃が始まる。


忍者たちの諜報の結果、上月城に籠る兵数はおよそ1万。

旗指物こそ宇喜多のものだが、宇喜多勢と小早川勢がおよそ半数ずつと見られている。

上月城の、一度は空っぽにした兵糧倉も、毛利方が長期戦に備えて持ってきた兵糧の大半を持ち込んだらしく、十分に備えられているそうだ。

無血開城したせいで城壁に破損は無い。

そろそろ、入城直後のピリピリと警戒していた空気が、惰気へと変わりつつある。


この上月城合戦、バージョンアップ直後にいきなり起きたため、プレイヤ間では話題になっていない。

毛利家と友好的なプレイヤ達の中には、情報を入手次第、急いで準備を整えて、遠征軍を追いかけていった者もいたが、彼らが追いつく前に、あっさり上月城が開城、遠征軍が帰還を始めたため、領地へと戻っていった。


今日の決戦、赤影さんと鷹目、佐野が手伝いに来てくれている。

部隊を移動させるだけの時間的余裕はないので、本人のみの単独行動。

彼らにぽえるを紹介し、策戦の概要を伝える。

「ぽえるちゃん、今度さぁ、うちの合戦も手伝ってくれないかな?」

鷹目がぽえるをリクルートしている。彼女の領地は、三河の国の東方。

武田家から丁重な「お手紙」を頂いたそうだ。

近々「ザ・武田家上洛イベント」が行われるらしい。


高倉山のふもとで全部隊が集合。総数は一万を超える。

「上月城のほうは頼むぜ ぽえる」

「はい、佐久間さんも気を付けて」

俺が率いるのは、別動の奇襲部隊。

佐久間軍は、俺と相馬、健太郎。そして槍兵2000。

友軍として、山中幸盛が率いる槍兵1000。

槍兵は、高い防御力の他に、移動時に地形のペナルティを受けにくいの特性を持つ。

その特性を最大限に生かし、山や森を直線的に越えて奇襲を行う。


攻城本隊は、総大将がぽえる。

江利津軍4000と、元太が率いる佐久間隊2000。

尼子勝久率いる、尼子家郎党2000。

さらに、俺のフレンドたちと、陣借りに来た「尼子萌え」なプレイヤさんたち数名が参加。

偽兵部隊として、三毛村さんと茂部山兄弟率いる農民兵たち。

かれらは、後方の森の中で騒ぎ立て、後詰がいるように見せかける役目だ。

「佐久間殿、号令を」

尼子勝久に請われ、皆が俺を見守る中、この合戦の号令を行う。


「俺たちの、上月城の戦い 始めるぜ!!」



■ ■

高倉山のふもとから、上月城までは数キロ程度の距離。

その短い行軍の間に、奇襲部隊はこっそり森の中へ離脱していく。

偽兵部隊も離脱するが、こちらは派手に木々を鳴らしながら、森の中を進軍する。


遠目に上月城の大手門が見える辺りまで辿り着いた頃、宇喜多家の旗指物を指した軍使が馬に乗って駆け寄ってきた。

「この為様は何事か!」

「上月城を取り返しにきました」

ぽえるが、生真面目に答える。

「片腹痛い!攻城兵器も持たず、我らが守る城にこの程度の兵数で攻め込むとは」

横あいから、尼子勝久が出てきて一喝。

「とっとと帰って城主に伝えろ。上月城、返してもらう!」

「なっ、後で後悔するなよ」

軍使は顔色を真っ青にして、城に帰っていった。


(ゲーム版)上月城の大手門は、しっかりと鉄張りで補強されている。

さらに、大手門の筋向いには白漆喰の隅櫓が配置されており、門を破壊するために近寄ると、後ろから櫓に狙い撃ちされる仕組みだ。

上月城内部はすでに臨戦態勢。

櫓から、時折ひょこひょこと敵兵の顔が見え隠れする。


弓矢が届かない場所に一旦陣取る。

「え~と、まずはあの櫓からですね。

鷹目さん、ここの部分を撃ち抜いてください」

「わかった」

ぽえるが、隅櫓の絵を鷹目に見せながら、指示を行う。

鷹目が指示された個所を銃で撃つと、壁から黒い液体が滲みだして白い漆喰を黒く染めていく。

攻め手側からはその様子がハッキリと見えるが、守り手側からは死角になっており、見ることができない。

「次に火矢をお願いします」

「任せとけ」

用意されていた弓と火矢を受け取り、黒い液体に向けて打ち出す。

矢は櫓の表面で弾き返されたが、火の粉が黒い液体にかかると、猛烈な炎をあげて燃え出す。

一筋の炎が漆喰の上を滑りながら黒い液体を燃やしていく。

しばらく経ってから、櫓の内部から爆発が起きた。

爆発は何度も何度も櫓の中で連鎖し、内部から櫓を崩していく。

燃え上がる炎が櫓を飲み込んで、櫓は原型を留めないほどに破壊された。



このシリーズでおなじみの「罠」。

本来は、フィールドに設置するオブジェクトである。

設置者の知力が高いほど見つけにくく、効果範囲も拡大する。

火薬を利用した「火罠」は、敵部隊に混乱とダメージ、士気減少を与え、防御陣地を破壊する。

この火罠を、一週間の間、上月城の要所要所に配置した。

ぽえるの知力は100を超え、所持する戦法スキルも多い。

そんじょそこらの武将では、ぽえるの罠は見破ることが出来ない。



「突撃です!」

ぽえるの指示のもと、突撃部隊の十数人が、各々炮烙玉を手に持って突撃していく。

炮烙玉とは、素焼きの陶器の中に火薬や発火性の強い物質を詰めた、いわば火炎ビン。

堅い物に当たって割れると、爆発を起こす。

上月城の大手門は、鉄板による補強と見せかけながら、柱の方に仕掛けがある。

柱には切れ込みが入れてあるので、炮烙玉で強い衝撃が加わったことで、内側に向かって倒れていった。

門扉は、内部で待機していた武将や兵を巻き添えにし、残った守備兵たちも逃げ散っていった。


「佐野さん、二の丸崩し、お願いします」

「おっし、一番乗りか」

ぽえるの指示で、佐野が馬を操って倒れた門扉を駆け抜け、三の丸に突入する。

三の丸は、既に守備兵が逃げ散り、無人だ。

佐野を追って、尼子勢や他の兵たちも城内へ突撃していく。

「確か、この辺だったよな」

佐野が炮烙玉に火を点け、三の丸の一階層上にある、二の丸を囲む石壁に向けて投げつける。

石壁にぶつかった炮烙玉が大きな爆発を起こす。

そこにも多数の火罠が仕掛けてあり、火罠が順々に発動していき、連鎖した大爆発が二の丸の端で土砂崩れを引き起こす。

二の丸の石壁の崩壊で、人工的な地すべりが起こり、三の丸から二の丸へ登る道が作られた。

そこを、後続の部隊がどんどん登って、二の丸を目指していく。


「引くな!守り切れ!」

仮設の「道」に、機転の利く毛利方の武将が、持ち場の門を放棄して急行。

「道」の二の丸側出口付近に陣取り、登ってくる尼子勢を押し返す。

土砂崩れで強引に作り出した道であるため足場が悪く、思うように動けない攻め手は、降り注ぐ矢玉に次々と倒れていく。


上月城で激しい城戦が行われている間。


別動隊は、道なき道を突き進んでいた。

騎馬や弓兵を主体とした毛利軍は、曲がりくねった山道を進んで帰還している。

我々は槍兵のみで部隊を構成、直線コースで山や森を走破し、彼らに奇襲をかける。

予定では、このまま強行軍を行えば半日後には彼らの姿を捉える計算である。


しばらく進んだところで一休みし、健太郎に進行方向を確認させる。

その間に、部隊に号令をかける。

「我々は毛利本隊に奇襲をする。狙いは、小早川隊。

兵糧と攻城兵器を焼き尽くす。強行軍になるが、耐えてくれよ」

「おう!」

配下の士気は十分に高い。


今まで何処かに行っていた赤影が、配下武将の青影、白影の二人を引き連れて、ぽえるのそばに降り立つ。

「さて、敵の忍者部隊は排除し終わったぞ」

「赤影さん、ありがとうございます」

ぽえるが可愛らしく頭を下げる。



「あぁ!うきたのうらぎりだぁ」

「だから、こんなにはやく、おおてもんがやぶられたのか」

「ぱねぇっす、はやくにげなきゃ」

知力系スキルのひとつ『流言』。

配下の忍者を使って偽情報を放ち、敵部隊の士気を低下させる。

赤影が敵の忍者をけん制している間に、城の隅々にまで散らばったぽえる配下の忍者たちが『流言』を放つ。

それはあっという間に城全体に広がり、守備兵たちの内部分裂へとつながった。

大手門及び隅櫓の破壊、罠による士気低下、二の丸への侵入と、罠や策略に翻弄され、

士気が落ちていた敵部隊はさらに浮足立ち、脱走兵が現れ始める。

「道」の出口に陣取って、二の丸を守備していた部隊も兵の脱走が始まったことで戦線が崩壊。

敵陣にあいた穴を尼子勢が突破し、続いて本隊が二の丸へと侵攻。

二の丸の残存兵を駆逐していく。


「ここからが大詰めですっ。鷹目さんお願いします」

「大船にのったつもりでいて」

Vサインを出した鷹目が、二の丸に新築された高楼の櫓に走っていく。

この櫓は城攻略/守備の動線とはかけ離れた位置に作られているため、無事に残っていた。

櫓はかなり高く作られており、上からは本丸が見渡せる。


先鋒の尼子勢は二の丸を落とした勢いで本丸へと向かい、炮烙玉で本丸城門を破壊。

だが、最後に残った城主直属の部隊が、鉄張りの門扉を盾代わりにして死闘を繰り広げ、双方が一歩も引かない。

守備側は城主自らが前線に立って奮闘し、配下の士気を繋いでいる。

逃げかけた守備側の兵士たちも、彼の元に集まって体制を立て直し、疲労がたまった尼子勢を押し返す。

そして、一息ついた隙に、城主は士気を回復する魅力系スキル『鼓舞』を使用。

「耐えろ!敵にも疲れが見える。本隊はまだ遠くまで行っていない、日が落ちれば本隊が来るっ!」

「「おうっ!」」

『鼓舞』が発動し、守備兵の士気が上がった。

「いいえ、彼らは来ません。我々の別働隊が足止めします」

攻撃部隊の中からぽえるが踏みだし、よく通る声で言い放つ。

「それよりも、早く降伏してください。降伏すれば、命までは取りません」

「ありがたい申し出だ。だが、断る!」

城主の回答を受けて、ぽえるが片手を挙げると、高楼の櫓から銃声が響く。

銃弾は城主の頬を掠め、後方へと飛び去っていった。

「狙撃とは笑止なり。万策尽きたと見た」

城主が合図をすると、城内や本丸の各所に散っていた兵が結集し、突撃陣形を組み立てていく。

「我らが底意地、見せてやろう。押し通る!」

「そうはさせぬ。尼子の武勇、その目に焼き付けろ!」

城主の気合を尼子勝久が受け流し、防御陣形で尼子郎党を展開させる。

多数の兵士が城主の周りに集まり、突進陣形をとった時、ぽえるがにこりと笑う。

「ごめんなさい、これも、私の罠です」

兵たちの密集した重量によって、轟音とともに上月城本丸に仕掛けられた罠「落とし穴」(士気大幅ダウン)が発動。

城主は、配下もろとも深さ2mほどの穴に落下した。

「城主さん、確保ですっ!」

ぽえるの指示で、兵たちが落とし穴に駆け寄り、戦意喪失した城主や部下たちの身柄を確保していく。

残存の守備兵は最後の士気が崩壊し、降伏か逃亡かのどちらかを選択した。



半日足らずの戦闘で、上月城は再び尼子家の所有となった。


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