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合戦に行こう!

佐久間領 人口510人。


リアルの学校での一幕。

「なぁ、佐久間。こないだの謝罪キャンペーンのスキルガチャ どうだった?」

「『逃げ足』が出た。佐野は?」

「『剣豪』……、自力で手に入れた途端出たよ」

「俺様の野望23」でも、正式サービス後に不調が多発した。

VRシステムの根幹は既に確立されているので、「ログアウトできないデスゲーム」

のような危険性の高い問題は発生していない。

だが、見えないけれどカベがある というやつが結構あったのだ。

痛覚も多少は反映されているので、カベに激突すると地味に痛いんだよな。

そのお詫びもかねて、登録ユーザ全員にスキルガチャ券が配られた。

本来は、京の天皇家に大量に銀を寄付をした場合にもらう事ができるものだ。

まぁ、どこのオンゲでも一度は通る、謝罪キャンペーン というやつだな。



合戦は、3のつく日と8のつく日に行われ、月に6回開催される。

30日と31日は無いぞ?

佐久間領も人口が500人を超え、そこそこの規模になってきた。

空き地もだんだん埋まってきたので、人口増も頭打ちだ。

これからは、技術研究を行い、効果の高い施設や、兵法の開発を行っていくつもりだ。

だが、その前に合戦を経験してみることにした。


合戦は、1隊につき武将を3人まで配置できる。

配属できる兵士数は武将の「統率力」に依存する。

「統率力」は、武将のステータスや官位、スキルから算出される。

俺は、なんのかんので1000人の兵士を統率できる。

うちの兵士は、全部あわせても30人しか居ないけどな。


合戦に行くにあたり、我が佐久間軍の陣容を設定する。

第一隊は、主将が俺。副将に相馬。兵数20。

第二隊は、主将が元太。副将八野。兵数10。

数は少ないが、兵士は全員お揃いの、槍、陣笠、胴丸のいでたち。


「あなた、行ってらっしゃいませ。ご武運をお祈りしております」

嫁の、そのちゃんが見送ってくれる。

ほんとは行きたくないんだけどね。

佐野が、どうしても一度経験しておけってうるさいんだ。

領民に見送られながら、いざ出陣!


合戦は、合戦の時にだけ出入りができる、合戦エリアで行われる。

今日の近畿地方では、森部で織田家VS斎藤家の合戦が行われる。

史実では、信長が兵数差4倍をひっくり返し、斉藤軍に勝利した合戦場。

さすがに初陣敗北はゲンが悪いので、織田側に陣借り。


といっても、ガチで戦場ど真ん中に行く気はさらさらない。

予め設定された配置範囲で、戦場から離れた森の中で陣取りし、開戦の合図を待つ。

「野郎ども!今回の指令は、いのちだいじに だ。頑張るぞ!」

こんな号令で何を頑張れと言うのかな、俺は。


【森部戦場 合戦が開始されます】

しばらく待っていると、合戦開始のシステムメッセージが流れた。


ガチ戦場では、早速一番槍争いが始まっている。

ごうごうと地面を揺るがすような、ときの声が聞こえてくる。

だが、こっちは静かなもんだ。ぽかぽか陽気で眠くなってきた。

ぼ~っと、空を見上げる。

落ち着いてきたら、ちょこっとだけ、ガチ戦場を見に行ってみるかなぁ。

その時、視界の中に『逃げ足』スキルのガイドカーソルが灯った。

「全員整列!移動準備」とっさに配下武将に命令する。

「どうしました?お館さま」「父上?」

「陣を移動させる。殿は二番隊!元太頼むぞ。

準備の出来たものからついてこい!」

わが部隊は慌ただしく出発した。

『逃げ足』のガイドカーソルに従って、森を進み、渓流を渡り、山を登る。

やがて、ガイドカーソルは小さくなって消えた。

「全軍停止。八野、ちょっと木に登って、周囲を確認してくれ。

特に、さっきまで布陣していたあたりを頼む」

「あいよ」

八野がするすると木に登っていく。

奴は『狩人』スキル持ちだから、アウトドアに強い。

八野を待つ間に、部隊は再集結した。元太も最後尾から走ってくる。

「父上、落後者はありません。全員無事です」

「お、お館さまっ!」八野が木から飛び降りてきた。

「すごい数の敵兵が居ます。さっきまで布陣していたあたりを、日比野下野守と思われる軍勢が通過しています。その数、500!」

あ~やっぱりか。『逃げ足』のガイドカーソルが出た時にピンと来たんだ。

AIは、史実と同じように動くわけじゃ無いからなぁ。奇襲でもしに行ったか。

「八野、敵はどのように行軍していた?」

懐から布製の地図を取り出しながら、相馬が尋ねる。

「こっちから、こう、こう」八野が地図の上を指さす。

相馬は、地図と八野の指をにらみながら、考え込んでいる。

しばらくして。

「お館さま。我に策あり です。仕掛けましょう」

「犠牲を出すような策は興味が無い。それでも、やるか?」

「はい、犠牲は出させません!」

「よし、聞こう」


1時間後、我々は、山のさらに奥地にいた。

「お館さま、来ました」八野からの報告が来た。

相馬の策はいたってシンプル。

敵の進軍ルートを予想し、切り立った崖の下を通る場所で待ち構える。

我々は崖の上から、岩や火のついた枯れ木を落とす というものだ。

こっちは、切り立った崖の上、高さは50mは軽くあるような場所にいる。

敵軍が3割くらいが通過したところで、合図をする。

「よし、落とせぇぇぇぇ!」

元太や兵たちが、岩を投げ落とす。

八郎は用意しておいた枯れ木に火をつけて回り、ある程度燃え始めたところで崖下に落とす。

ついでに油をかけた生木も落とし煙を発生させる。

名付けて「落石混乱の計」

「うわぁぁぁ殺されるぅぅぅ」「裏切りか!」「落ち着け、同士討ちするな」

混乱しまくってるよ。これも相馬の知力90超の補正のせいらしい。


「お館さま。そろそろ引きましょう、反撃に動き始める頃合です」

「よし、全軍集結。撤退にうつるぞ」

相馬の進言で部隊を立て直し、撤退を始めた。

ほぼ同時に『逃げ足』のガイドカーソルが灯ったが、撤退を始めるとすぐに消えた。

あばよ!間抜けな斉藤軍。

初陣において、我が部隊は一人の負傷者も出さず、その場を離れた。


【合戦が終了しました。1分後に各領地入口へ転送されます】

合戦終了のシステムメッセージが流れた。


1分後、俺が転送された先は、領地では無く、どこかの陣幕の中だった。

俺と同様に、何人かのプレイヤーと思われる面々が並んでおり、

陣幕の奥には、NPCが10人ほどいる。

中央にいる床机に座った人物が、織田信長なんだろうな。

このゲームでは著名武将には有名俳優を起用して、表情やしぐさを完璧にトレースし、

ゲームでの再現を行っている。

そのせいか、信長の一挙手一投足から迫力を感じる。気圧されそうだ。

「佐久間殿!このたびの戦功、あっぱれであった!

その功績をたたえ、金10枚を進呈する」

佐久間隊が奇襲部隊を半壊させたので、奇襲は失敗。

織田軍は、史実通りに勝利したらしい。俺たち、頑張ったもんなぁ。

勲功式が終わった後、今度はちゃんと領地に転送された。


「あなた、お帰りなさいませ。おめでとうございます」

そのちゃんが出迎えてくれる。俺頑張ったよ~。

信長さまにも会ってきたんだぞ。

まぁ、こっちはこっちで論功行賞しておかないとな。


「相馬、汝の献策見事なり。よって金5枚を与える。

元太、その虜力見事なり。八野、落石の配置が見事であった。

汝ら両名に、金2枚ずつを与える」

「ありがたき幸せ」(一礼

「父上ぇぇ」(感涙

「おっしゃ!」(サムズアップ

みんな、感謝してくれた。これからも頼むぜ!野郎ども。

次回「ここに病院を建てよう!」

戦争の後は、平和が訪れる。

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