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鬼が島5 リアル鬼ごっこ

第一勝負 

生産技術比べは、鷹目の機転により、我々が勝利を勝ち得た。



「人間風情がやってくれるぜ。第二勝負は、鬼ごっこ だ。

時間はきっかり10分。ちょうど10分後に鬼だった側が負けだ。

試合終了30秒前と15秒前にドラを鳴らす」

「追加ルールとして、競技場外に落ちた場合、自動的に鬼になる。

さらにペナルティとして10秒間動けない」

鬼とおにごっことは、笑えないというか、予想通り というか。


鬼の側からは、第二勝負の代表として緑色の鬼と黄色い鬼が前に出る。

どちらも中肉中背の、ぱっとしない外見の鬼だ。

戦隊モノでいうところの、3号4号ポジションと言えば、

イメージが伝わるだろうか。


「よし、こっちは、俺と佐久間の友情コンビだ!」

佐野が(勝手に)高らかに宣言する。

「第一回戦はそっちの勝ちだったから、そちらが先に鬼でいいか?」

「いいぞ」

黒鬼の問いかけに、俺は即答する。

この「鬼ごっこ」、途中経過がどうであれ勝敗はシンプル。

10分後のドラがなった瞬間に、「鬼」であったほうの負け。

それなら、開幕直後や途中経過はどちらが鬼であっても関係ない。

閉幕ぎりぎりに二人がかりで、どちらかの鬼をフクロにして、

場外にぶち落としてしまえば、それで勝利だ。



「では、第二勝負 鬼ごっこ はじめぃ!」

黒鬼の開始号令の直後。

緑の鬼はあっという間に体を縮小させ、視認できない大きさになった。

「あ、このへん居るはずだから ってのは無しだぞ?」

黒鬼が余計なルールを追加する。

緑鬼が何処にいるのか、さっぱりわからん。

「おいおい、昔話でそういう鬼が居るのは知ってるが、

それは反則じゃねぇのか?」

とりあえず、黒鬼に抗議してみる。

「はっはっは。お前自身が言ったように、昔から鬼ってのはそういうもんだ。

相手が悪かったと思うんだな」

黒鬼のドヤ顔が頭にくる。

とはいえ、こちらもさっきの勝負では反則のストライクゾーンど真ん中を行っているので、あまり強いことは言えない。



しょうがないので、黄色鬼に矛先を転じる。

「忍法、雲隠れ!」

今度は黄色鬼の体色が、黄色からどんどん透明になっていく。

こっちもどこに居るのかさっぱりわからなくなった。

「おいおい、そんな鬼は聞いたことねぇぞ。今度こそ反則だろ」

「アルヨ」「アルアル」

黒鬼と、最後に残った三つ目の鬼が、棒読みしながら二人でうなずき合う。

やられる側に立つと、ものすごく頭に来るなアレ。



さて、どうするか。

制限時間は10分。まだまだ時間はある。

俺は、一旦落ち着いて、腕を組んで考え込む。


まず、縮小鬼(緑鬼)の方だ。

これはマズイ。

よくよく探せば見つけられるかもしれない。

だが、見つけたところで「見つけたままキープ」することは難しいであろう。

触ったら、その時点で攻守が入れ替わる。

相手が「鬼」になった後、ノミやダニのように服の裾などに忍び込まれ、

時間ぎりぎりで「タッチ」とやられたら、目も当てられない。

いっそ、SATUGAIありきで潰してしまう というのも手だろうが、

そもそも制限時間以内に見つけられるか? という問題もある。



一方で変色鬼(黄色鬼)。

こっちの方が楽か。

姿が見えないだけだから、投網をしまくっていれば、いずれひっかけて捕まえられるだろう。

それなら一石二鳥だ。

投網でぐるぐるにした所で、ボコって場外にすれば自動的に

奴が鬼+10秒フリーズだ。

まずは、歩き回ってアタリをつけておくか。


アイテム袋に手を入れながら、数歩歩き出す。

「そうか!解ったぞ。

佐久間、音が聞こえたところに、投網をぶちかます氣だな!

それなら、見えていなくても捕まえられる!」

佐野よ、こっちの手をゲロるなよ。

「あぁ。その通りだよ!」

「ふふふ、佐久間、そんな必要はないぜ。

スキル『流水の理』を会得した俺には、やつらの気配が感じられる!」

佐野が、誇らしげな顔をしながら、競技場の中をしばらく歩き回る。

「そこだ!」

いきなり、佐野が体重をのせた回し蹴りをすると、何もないように見えた空中で蹴りが当たる鈍い音が聞こえ、黄色鬼が姿を現した。

黄色鬼は蹴られた勢いでごろごろと地面を転がり、場外へと落ちる。

「場外、黄色鬼が鬼 10秒待機」

黒鬼が、冷静にジャッジする。


黄色鬼は当たり所が悪かったのか、鼻血を垂らしながらのろのろと起きあがる。

「よくもやってくれたな!

こっちが鬼となった以上、我々の勝ちは決まったようなもんだ。

そっちの奴は、透明化が見破れないようだから、このまま時間ぎりぎりまで粘って、その後で鬼になってもらうぞ」

黄色鬼は憎々しげに俺の方にやつあたりの矛先を向ける。

困ったもんだ。


「場外、佐久間が鬼 10秒待機」

「え?」

呆然とする黄色鬼を無視して、黒鬼が冷静にジャッジする。

しょうがないので、俺も場外にわざと落ちた。

これで「鬼の権利」はこっちのもの。

そして間髪入れず、用意していた抹茶の粉を黄色鬼にぶっかける。

こんなこともあろうかと、抹茶もんぶらん用の「抹茶」を準備していた。

これで完全な透明化は出来まい。

歯ぎしりしながら、悔しがる黄色鬼。


俺たちは互いから目を離さないようにしながら、

待機時間の経過後、ゆっくりと、競技台の上に戻る。

あとは、時間が来たらタッチすればいい。



「場外、緑鬼が鬼 10秒待機」

「何っ!」

いつの間にか、緑鬼が縮小化を解いて場外に出ていた。

これで、「鬼の権利」は再度鬼側に移ったことになる。

黄色鬼のカモフラージュ能力は封じた。

だが、緑鬼の能力はヤバイ。

昔話を題材にしているとすれば、あの鬼は「巨大化」もできる。

巨大化されようものなら、競技台の上など一網打尽にされる。


ここで、ジャーン と銅鑼の音が洞窟の中に響く。

「30秒前!」

洞窟が震えるような大音声で黒鬼が宣言する。



「場外、佐野が鬼 10秒待機」

ここで、佐野が場外に飛び出た。

最後は奴に賭けるしか無いか。

かなりギリギリの争いになってきた。

このタイミングでの場外に、黄鬼と緑鬼の表情に緊張が走る。

さらに場外に出て「鬼の権利」を取り戻すか、このまま逃げに徹するかを決めかねている。


鬼が悩み、動けない間に、ジャーンと2回目の銅鑼の音が響く。

「15秒前!」

ほぼ同時に佐野の待機も解除される。


「よっしゃ、行くぜ!」

佐野が競技台に軽々と飛び乗った。

リアルはともかく、この世界での奴は武力100超の、勇者と言うに足る運動能力を持っている。

「黄色を狙え!」

俺は佐野に指示を出す。緑鬼にはまだ「縮小」がある。

追いかけているときに縮小されると、見失って時間切れになりかねない。

そして、競技台を振り返った時、競技台の上には緑鬼が2人いた。

黄色鬼め。よりによって、緑色にカムフラージュしやがった!

こうなると、抹茶もあまり意味をなさない。

「ど、どっちだ、佐久間?」

「もう、どっちでもいいから、突っ込め!」



2人の鬼はこれ見よがしに左右にわかれて逃げまわり、

佐野が選択したほうは、外れだった……


壮絶なる駆け引きの結果、俺たちは敗退した。

第二回戦、 敗退。

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