猫と嫁!
三毛村さんと出会った翌日。
リアルで会ったときに佐野に話したが、まるで信じてくれなかった。
だが、俺は佐野が信じたくない理由に心当たりがある。
彼の領地のしゃべる生き物は、あの人魚(仮)の可能性があるからだ。
昨日は、三毛村さんと一緒に、館まで帰ってからログアウト。
三毛村さんは、領内では有名猫のようで、領民から慕われていた。
「あっ、三毛村さん、お館さまに仕えたのですね」
「うむ、そうじゃぁ」
「三毛村さん、また飲みにいきましょうよ」
「牛の乳ならいいなぁ」
配下武将たちも普通に三毛村さんと接していた。
本人いわく「神通力」とのことだが……
このゲーム会社、三国志に始皇帝、劉邦、李世民の三大皇帝オンパレードとかしてるから気にしたら負けか。
■
今日は「武将探索」の報告会をする。
バージョンアップで追加された、8*8マス拡張クエストは、超混雑しているのようなので、もう少し我慢。
このクエストは、日本各地の大名に手紙を届けるというものだ。
各国の本城城下町に一度でも行ったことがあれば、転移でその国に一瞬で行けるが、行ったことが無ければ、地道に歩いていくしかない。
その結果、移動力増強アイテム「名馬」の値段が高騰している。
「名馬」は、領地に牧場を建設すると、稀に出現することがある。
うちの牧場からは、まだ「名馬」は出たことが無い。
今日、「乳牛」が出たという報告があったのが不思議ではある。
まずは、景気づけに、こないだ貰ったスキルガチャを引いてみる。
【魅力系スキル『脅迫』を入手しました】
「NPCの弱みに付け込んで、自分の思い通りに行動させる
ただし、対象NPCからの友好度が一段下がる」
と説明文に書いてあった。
今回のバージョンアップで新規追加されたスキルらしく、スキル名だけは一覧にあるが使用例がネット上に上がっていない。
一応は、出現率「レア」のスキルなのだが、当たりなのか外れなのか、判断に困る。
気を取り直して「武将探索」の結果報告会を館で開く。
まずは、相馬を配下PTに入れる。
俺の知力は30台。決して高い数字ではない。
他人のステータス確認は知力値依存の行動だ。
そのため、他人のステータスを見ても「?」と表示され能力値が解らない。
だが、相馬をPTに入れると、知力補正とスキル『人物評価』のおかげでステータスの数字がある程度見えるようになる。
気になっていた三毛村さんのステータスを確認。
『武:10未 知:100超 政:100超 魅:50超 技:10未』
空いた口がふさがりません。うちの軍師は猫ですか?
「お館さま。うちの姉です」
相馬が連れてきたのは、ほっそりとした、日に焼けたこげ茶色の髪の女性。
「お館さま、うちのバカ弟が、いつもお世話になっております」
『武:80超 知:60超 政:20超 魅:50超 技:60超』
さすが相馬の姉だけあって、高い能力。武力に偏ってるのが、姉弟間の力関係を指しているようで怖い。
2人で組ませて1隊任せられそうだ。
「うむ、姉弟ともども、よろしく頼むぞ」
次は、八野行ってみるか。
「すげぇ奴を連れてきました。歌舞伎町の顔役、舞蹴です!」
「ヨロシクゥ!」
背の高い、色黒のマッチョマン。
黄色と黒の虎縞模様の着流しに、熊の毛皮の羽織。傾いた男だ。
『武:50超 知:20超 政:30超 魅:40超 技:10超』
「帰れ」「シット!」
また、飲み仲間ネタか、八野!
「お館さまぁ。ちょといいか?」
三毛村さんが肉球でつんつんしてくる。
「この領地で、一番人が集まるのは歌舞伎町だぞ。
そこの顔役を押さえておくことは、領地管理の観点で損は無いよ?」
猫のくせに、なかなかいいこと言いやがる。
「むぅ、確かに。舞蹴、採用だ。歌舞伎町の情報収集と、
暇そうな奴らの寡兵を命じる!」
「イエェェェ!」舞蹴は、八野とハイタッチしている。
大丈夫かこいつら。
阿部は危険なので今回は工場で働かせている。
どうせ行かせても、オチが見えている。
「健太郎、頼むぞ」
健太郎は忍者だ。
変装に優れ、いつも違った風体をしているので本当の姿は俺もわからない。
「は。修験者上がりの老人を連れてきました」
入ってきたのは、60歳くらいの白髭のお爺さん。
中肉中背で、髪も眉毛も白いものが混じっている。
「ほっほっほ、お館さま、いつもいつも腰痛の薬草を頂き、
感謝しておりますぞ」
よく見たら、いつもの薬草クエスト爺さんだった。
あのクエストは毎回山賊が湧くので、兵士数確保のためにヒマな時は何度もマラソンしている。
いちおう、ステータス確認。
『武:隠匿 知:隠匿 政:隠匿 魅:隠匿 技:隠匿』
ステータスが見えない。スキル『隠匿』とスキル『人物評価』がかち合うとこうなる。
といっても、能力値に大きく差があれば、情報を引き抜けるはずなのに。
今のPT構成は、三毛村さん(知力100超)と相馬(知力90超)が居て、知力特化になっている。
これでも抜けないというのは、ただものじゃ無いぞ、この爺さん。
「健太郎も人が悪いぞぉ。君のお師匠さまじゃないかぁ」
三毛村さん、なんでそんな事知ってるんだ??
「さすが三毛村殿、バレておりますか。
お館様、ワシは健太郎の忍術の師匠ですわい。老い先短い命、好きなように使って下され」
「採用!諜報活動と、忍者集団の技能向上を頼む」
即決。忍者という、特殊技術者は喉から手が出るほどほしい。
「承知。血が湧きますなぁ ククククク」
あの薬草、なんかヤバい成分でも入っていたのじゃなかろうか。
「じゃ、中原はどうだ?」
「面目ない。拙者は、今回は見つけられなかったでござる。
元太殿に期待しておりまする」
中原が、にやにやしながら、元太の方を見ている。
2人で協力して見つけて元太に功を譲った とかかな?
「という事らしいが、元太。締めを頼むぜ」
「は、はい。入れ」
元太が、やけに緊張して固くなっている。
入ってきたのは、10代後半の、可愛らしいが少し大柄な女性。
元太の隣に並んで座る。元太も体が大きいので、並んで座ると良い感じ。
「中原の姪で、けい と申します」
ステータスを確認する。まさか、また忍者とか言わないよな。
『武:30超 知:20超 政:20超 魅:30超 技:20超』
一般人よりは上だが、それほど高くは無い。
源三のときみたいにスキル持ちか?
「父上、元太は、けい殿と夫婦の契りを結びたく思う次第であります!」
婚活か!?
「お似合いだにゃぁ」「ほうほう」「イェェ」
ぱちぱちぱちと誰かが拍手を始める。
絶句していた俺をしり目に、大広間の中はお祭り騒ぎだ。もう何も言える雰囲気では無い。
まぁ、いいか。元太の嫁取りどうしようかって悩んでたから渡りに船だ。
「よし、許す!」
今回の武将探索は、猫に始まり、嫁に終わる、上々の結果で終わった。
これで、現実的に4,5部隊は構築できる。
選りすぐりの精鋭武将たち。
大大名と全面戦争でもしない限り、まず問題は無い顔ぶれだ。
早速、8*8マスに拡張して、次のバージョンアップに備えよう。
武将が増えてきたので、
次回は情報まとめておきます




