子供ができたぞ!
佐久間領、現在人口180人
佐久間領は、順調に発展しつつある。
相馬の政治能力80超のおかげで、開発に要する時間がわずかであるが減少し、開発枠が3に増えたことも大きい。
領地は、5*5マスの正方形の開発可能部がある。
真ん中の1マスは、自動的に「本拠」になるので、24マスが開発可能だ。
人口数や名声といった条件をクリアしていくことで、拡張が可能になり、
最大で、9*9(うち、本城部分3*3)にまで広げることができる。
開発できる施設は、複数の系統があり、
畑、田んぼ、上質田といった食糧生産系は食糧を産み出し、
商店、市場、繁華街等の商店系は、銭を産み出す。
他にも、兵士詰所、侍所、大長屋といった、兵士数を確保する施設、
紅葉処、薔薇園といったような、遊び要素の施設もある。
どのように領地を開発していくか も腕の見せ所なのだ。
まだまだ質素な佐久間領は、田畑と商店を増やすことに全力を費やす。
ピーンポン、軽快な電子音が流れる。
佐野からの連絡コールだ。
「おーい佐久間、いまログインしたぞ~。フレ登録するから承認してくれ」
【フレンド要求が届きました】
フレンド登録をした相手でないと、お互いの領地に行くことができない。
領地内及びその周辺というのは、個人の占有エリアなのだ。
待ち合わせをするには、フレンド登録して、お互いの占有エリアに行くか、
誰でも入れるフリーエリアに行くしかない。
フレンド管理画面から、佐野のフレンド登録を承認する。
まだフレンドリストはすっからかんだが、2日目だからしょうがないよな。
佐野が俺の領地にやってきた。
実際のところ、テレポートなんだが設定上「歩いてきた」事になっている。
「よう、3時間ぶり~」学校で会ったもんな。
VRの注意事項として、体格をいじると普段との相違で体を動かしにくくなる という事がある。そのため、体格は大きくいじらない事がメーカーから推奨されている。
俺も佐野も、まぁ多少はいじってるけど、ほぼリアルのまま。
「結局、ステ振りどうしたんだ?」
「魅力特化」
「え?また、何でそんな地雷を目指すかなぁ。しょうがねぇ。俺の子供を養子にしないか?
武力特化の俺に似て、武力は高いぞ」
佐野は、ベータ版からのユーザだ。
ベータ版から正式版への引き継ぎ要素として、いくばくかのゲーム内資産と、一族の武将を引き連れていく事が出来る。
子供は、親武将の要素を引き継ぐ。
武力特化の佐野の子供なら武力は期待できる。
俺の配下にぜひほしいタイプの人材だ。そもそも人材不足ではあるしな。
「え、良いのか?」
「良いよ良いよ。ちゃんと可愛がってくれよ?俺だと思って」
早速、養子の手続きを行う。
プレイヤ同士での武将のやりとりはシステム上不可能。多重アカウント対策の一環なんだろう。
唯一の例外が養子縁組だ。
一通りの手続き(といっても、システム上だけだが)が終わり、佐野の子供が呼ばれてきた。
「お初にお目にかかります。佐野元太改め、佐久間元太でござる
父上殿、よろしくお願いいたす」
「こちらこそ、よろしくな」
佐野に面影が似ているが、こいつのほうがイケメンだぞ?
早速ステータスチェックをする。
『武力:80超 知力:10超 政治:20超 魅力:10超 技術:20超』
劣化版佐野、なんだろうなぁ。
「よし、配下とPT組んでフリーエリアにでも行くか?」
「いいねぇ、まだ行ったことがないんだ」
フリーエリアは領地エリアとは別に存在する、誰でも侵入可能なエリアだ。
一般的な「MMORPG」をイメージしてもらうとわかりやすいと思う。
岐阜、京、堺といった街と、街をつなぐフィールドがある。
フリーエリアでクエストや戦闘を行うと、「銀」がもらえる。
この世界には「銭」「銀」「金」の3種の通貨がある。
「銭」は資源扱いで、施設の建造や兵士の武器防具の整備など、領地経営に使用される。
「銀」は領主個人に所属し、スキル習得や名刀・茶道具等の業物アイテム取引に使われる。
最後の「金」は合戦の報酬や金山開発で得られ、特殊なアイテムの取得や配下武将に与えることで忠誠を大きく引き上げる効果がある。
佐野とPTを組む。メンツは、俺、元太、相馬の佐久間組3人と、佐野と配下2人の佐野組3人。
リーダーは佐野。
「よし、行くぞ~、とりあえず、美濃からな」
プレイヤーは、東北、関東、中部、近畿、中国、九州のいずれかをスタート地点に選べる。
近畿を選んだ場合、最初に行けるフリーエリアが美濃なのだ。
史実では、斉藤道三は桶狭間の戦いの前に世を去っているが、この世界ではゲームの都合上、未だぴんぴんしており、群雄の一人として美濃から天下を伺っている設定になっている。
稲葉山城を遠くに見ながら、最初の村についた。
佐野に教えてもらいながら、手頃なクエストを順次クリアしていく。
「お、山賊本拠地襲撃が発生したぞ」
「いきなり発生したか。運が良いな。
そのクエ、山賊のボスが武将扱いだから上手く生捕ればスカウトできるぞ。
能力合計がそこそこあるから使えるけど、すぐ逃げるんだよな」
「このメンバで行けるか?」
「余裕、余裕。ボス以外は武力20くらいだし行けるだろ」
俺たちは、山賊の本拠地に向かった。
「お待ちください。お館様、ご友人様」
本拠地である、廃棄された山砦跡の前で、20人くらいの山賊が輪になって何か相談をしている。
彼らが見えるあたりまで来たとき、周囲を観察していた相馬が、俺たちを引き留めた。
「なんだ?」
「あそことあっちの木をよく見てください。枝が不自然にしなっています。
上に人が隠れ、投網のようなものを持っているようです。
大方、乱戦になったときに、足止めをする作戦なのではないかと」
「となると、まとまって戦うのは危険 ということか」
「はい、武力に優れたご友人様方と元太殿が散開して戦い、
投網をかけられたら、お館様と私が救出に行く というのが良いかと」
何も考えずに突っ込むつもりだったが、佐野と相談し、簡単な作戦を立てる。
まず、武力重視の4人が時間差で突撃し、俺と相馬は後からついていく というだけだが。
そして、戦闘が開始された。
「うぉぉぉ!」
先陣を切って走る佐野めがけて、木の上から投網が投げつけられる。
「バレバレなんだよ!」
システムの助けもあるのだろうが、佐野は大きくジャンプして、あっさり投網をかわす。
かっこいいぞ、佐野。普段はアレだけど。
後続の武将たちも、刀を振りかざしながら特攻していくが、佐野武将の一人が投網にかかった。
さすがに佐野の真似は無理だったかぁ。
雑魚山賊からの攻撃を受ける前に、俺がカバーに入り、相馬が投網を切り裂いて助け出す。
佐野や元太は、山賊たちと派手に切り結んでいる。さすがに武力特化は恐ろしい。
一騎当千。当たるを幸い、どんどん山賊をなぎ倒す。
「そういえば、ボスは生捕りにする必要があるんだよなぁ」
ふと、地面を見ると、佐野がかわした投網が目についた。
「覚えていやがれ!」
いくらAIだからって、セリフにひねりがほしいもんだ。
ほぼ半数の山賊が倒れたあたりで、ボスが逃げ出した。
予め回り込んでいた俺は、山賊のボスに投網をかけてみた。
「なんだ、これは、うぉ~」配下数人と一緒に、あっさり確保することができた。
「なぁ、お前たち、俺の配下にならないか?」
山賊のボスのステータスは
『武:60超 知:20超 政:30超 魅:40超 技:40超』
俺の魅力100の前では、スカウトを断ることは不可能!
3人目の武将、元山賊の「八野六郎」が仲間になった。
おまけに、一緒に捕まえた山賊も兵士として組み込めた。
佐野も、それなりに「銀」が手に入ったらしい。ほくほくしていた。
PTを組んで楽しめるよう、ちゃんと配慮してあるんだなぁ。
次回「嫁取り合戦!」
ついに、女性キャラ登場。