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北北東に進路を取れ!

淡い金色の髪。全てを見通すような鋭い目つき。

だが、柔かな頬と口元のラインが鋭さを緩和させている。

女性にしては高めの170センチ超の身長は、ふっくらとした体つきとバランスが取れている。

大学生とも見える可愛らしい時もあれば、30を超えるような思慮さを見せる事もある、年齢不詳な美女。

かつて「御流後23」と名乗った女、鷹目理沙。


彼女は今、俺の領地の工芸所で、できたてのもんぶらんを試食していた。

だが、これを「試食」と言っていいのか、俺には疑問が残る。

なぜなら、食べた量が既に30個を超えているからだ。

工芸所で働くモブ工員さんの目に、諦めの色が見える。

地面に穴を掘り、そしてまた埋める作業を行う、哀れな捕虜の眼の色だ。

モブ住民の間では、佐久間領で最も過酷な職業は工芸所の工員 と言われている。


「(もぐもぐ)お代わり、(ぱくっ、ごく)もっと持ってきてよ(ぽろぽろ)」

食べこぼしが半端ない。美人なのに残念な女だ。

「わんこそばじゃないんだから、もう少しちゃんと味わってくれよ」

「味わって(むしゃ)いるわよ(ごくり)バカにしないで」


50個くらいで「試食」が終わった。

工場長が土下座しながら、泣いて謝ったからだ。

「ん~美味しかったぁ。ごめんね、急にきちゃって。

お詫びにこれあげる。こないだの合戦で褒美に貰ったんだけど使わないし」

もう二度と来るな。

鷹目は、俺に竹でできた呼子のような笛を3個投げてきた。馬呼笛だ。

「いいのか?3個も」

「いいよ。どうせ、もう10個くらい持ってるし」

戦国時代なら合戦の功績に名馬を渡すのは珍しい事じゃないか。

狙撃手なら、豪族(プレイヤ)を何十人も殺して、功績ためてるもんなぁ。


馬呼笛とは、「名馬」を呼びだすアイテムだ。

馬は、普通の「馬」と「名馬」の2種類がある。

一般的な「馬」は、銭や食料と同様、領地の資産である。

牧場という施設から生み出され、合戦で兵士が騎乗するモブ兵士限定の馬。

合戦で「騎馬部隊」を運用するために存在する。

「名馬」は、プレイヤと配下武将専用の馬。

馬呼笛を吹けばやってきて、降りれば領地に帰っていく という、MMORPGテイストな馬。

もちろん、不適正な場所で呼ぶと来ない という制限はある。

名馬に乗ると、フリーエリアでの移動速度がおおよそ2倍から3倍になる。

いずれ欲しいと思っていたものなのだ。


「俺様の野望」は、北海道と沖縄、離島を除く日本列島全体が舞台になっている。

いくら近畿地方で始めたからといって、ずっとここに縛られる必要も無い。

どうせ転移もできるのだし、ちょっと足を伸ばして、戦国の世の中を一回りしてみたかったのだ。

ただ、フリーエリアを徒歩で移動するのは、かなりの時間がかかるので「名馬」を求めていた。

このゲームでは、一旦行った「国」には銀さえ消費すれば、転移で移動できるし、領地への帰還も一瞬で転移できる。

「行き」の足さえ確保できれば、旅路はそれほど難しいものではない。

ここに、佐久間一行の、日本一周計画が始まった!


向かうのは、北から。

速めに行っておかないと、雪で閉ざされる危険性があるものな。


元太と相馬を従えて、いざ、戦国時代周遊紀行へ。

最初に行くのは、尾張国清州城。

次話「尾張良ければ、全てよし!」


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