ぼくらの、7*7戦争!
新章開始。
ウォーミングアップから。
その日、俺は合戦に参加していた。
VRモードではなく、マウスやキーボードで操作する、デバイスモードで参戦。
ウィンドウの1枚に「ゲーム画面」を表示させながら、別のウィンドウでレポートを書く。
『2014年の理研STAP細胞騒動を境に、研究論文の著述システムが見直され……』
VRモードでもレポートは書けるのだが、はかどらないことは経験済み。
仕方が無いので、無理やりデバイスモードでゲームをしていた。
合戦に参加 といっても、率いる兵力は50人だけ。
配下武将は連れてきていない。
前回の反省を踏まえ、戦術的に全く価値のない、仮定戦場の端の端。
最も外側に居る。
領地を7*7に拡張するためには、名声と合戦参加回数が条件になる。
イベントのおかげで名声値は十分なので、参加回数だけ稼ぎに来た。
ついでに、宿題のレポートを片付けていた。
配下武将達は、現在、内政コマンド「武将探索」を実行している。
この「武将探索」というコマンドは、命令してから24時間も実行武将が拘束されるのだが、武将候補を連れ帰ってくることがある。
俺は後から謁見して、採用不採用を判断すればいいのだ。
この合戦終了後に謁見ができるように、昨日、時間を調整して、命令を下しておいた。
レポートを書き終わってゲーム画面を見ると、ちょうど合戦終了のシステムメッセージが流れた。
ちゃんとレポートを保存。
合戦後に領地に転送されたことを確認して、一旦ログアウト。
VRセットを身に着け、VRモードで入りなおす。
さて、どんな武将候補が引っ掛かったかな。
館に戻り、大部屋の上座に座る。
まずは、相馬を回収して配下PTに入れる。
こいつがいないと『人物評価』が使えないからステータスが見えない。
「お館さま。申し訳ありません。目ぼしい人物を発見できませんでした」
まぁ、仕方がない。
相馬は病院の件があるから、斜め上が来ることを少し恐れていた。
次は、八野行ってみるか。
「すげぇ奴を連れてきましたぜ!木こりの与作です!」
「おらぁ、こんなとこくんのはじめてだぁ」
『武:30超 知:10超 政:10超 魅:20超 技:10超』
「帰れ」「うぇぇぇ、よさくぅ~」
困ったからって、飲み仲間のおっさん連れてきてんじゃねぇぞ、八野ぉ!
3番手は、新入りの安部修造。
やせ形の優男で、リアルでいたら女にもてそうだ。決して暑苦しくは無い。
こいつは、政治能力が高いから、連れてくる武将にちょっと期待している。
「私が見つけたのは、すごいですよ。お館さまも、絶対気に入るはずです!」
やってきたのは着物を着崩し、豊満なバストを強調させた妖艶な女性。
「お・や・か・た・さ・ま。よろしくね(はぁと」
「驚異の、胸囲96です。どうですか!?」
『武:10未満 知:10未満 政:10未満 魅:30超 技:30超』
「か、帰れ」「なんですと!お館さまは、幼女派ですか!次こそは必ず幼女を」
コイツ(しゅうぞう)、領内で施設開発に専念させよう。外に出せそうにない。
残すは、元太と中原か。どっちも政治いまいちだし、期待薄だなぁ。
中原は、スキンヘッドの筋肉質な巨漢。
外見でジョブが決まるのなら、絶対「モンク」になるような男。
「拙者が見つけたのは、この男です。伝説の刀鍛冶、伊右衛門です」
『武:10未満 知:10未満 政:10未満 魅:10未満 技:90超』
凄い奴をみつけたな。なんか、よぼよぼしてる爺さんなのが気になるが。
「伊右衛門どの、我が配下になってくださるか?」
「飯はまだかいのう」
「はいはい、お爺さん、これがお館さまですぞ」中原が俺を紹介する。
「今日のおかずは、お館さまかいのう、豪勢じゃ、豪勢じゃ~」
「……帰れ」
「はいはい、お爺さん、かえりましょうね」中原が爺さんと一緒に出ていく。
「お館さまはどうなったのかのう、食べたいのう」
元太、最後、頼むわ。
「父上、私が見つけた男は、このような男ですが……」
「よろしくお願いするでごんす」
『武:40超 知:20超 政:30超 魅:20超 技:30超』
良くも無く、悪くも無く ってとこだな、いまいちぱっとしない。
元太の申し訳なさそうな顔に心を動かされる。頭数として採用しておくかなぁ。
「山師の源三です」
山師だと!!それを先に言え。
スキル『山師』はNPC専用のレアスキル。
領地を歩かせておくと、勝手に銀が貯まる というトンデモ技能。
もちろん、自分でクエストをすることに比べると微々たるものだが、
四六時中積みあがっていく というのはバカにできない。
「よし、源三、今日から我が配下だ。よろしくな」
元太と源三の顔が喜びに輝く。
「早速だが、源三には我が領地を一回りしてもらおう」
試しに「武将探索」をやってみた結果としては上出来かな。
やっぱり、自分の足で探すしかないのか。
最後に、忠誠上げのために、イベントで新規加入の和尚と中原、阿倍の3人に、
金1枚を与えておいた。何か、施設でも作ってくれないかな。
次回「忍たま健太郎!」
やはり、戦国時代には忍者がいないとね。




