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絆、満たす覚悟!

イベント4日目


誰が初めに言い出したのかは、わからない。

だが、誰かが掲示板に書き込んだ、平安京の道についての違和感。

それは、プレイヤの間に広がり、平安京の構造の違いについて検証スレが立っていた。


いろいろな場所で、道の位置がわずかにずれている。

いろいろな場所で、地図とわずかに食い違っている。

碁盤状と思い込んでいると、錯覚と思って見過ごしてしまうくらいの違和感。

だが、道が丸まっている部分もあった。本来はありえない形だ。

そうなると、そこに行ってみる人が出てくる。

「現地来たけど、よく見たら、ここの土の色違わないか?」

「本当だ、言われないとわからないけど、確かに少しだけ色が薄い」

「この色の薄いところ、ずっと繋がってるよな」

「行ってみるか」

そうして色の違う道を歩き回り、その位置をプロットして検証された結果。

裏平安京には、巨大な、麒麟の形をした魔法陣が存在していた。


麒麟の魔法陣。

麒麟は方角なら中央、大地を示す。

この時代、道はそのまま土であり、大地である。

最初から、麒麟の魔法陣は、われわれの前に示されていたのだ。


俺がログインしたとき、既に麒麟の魔法陣の全貌が確定されていた。

一歩一歩、核心に迫っていることは確かだ。


ピーンポン。

ほえもんからのコールだ。待ち合わせ場所を決めて、PTに合流する。

俺、ほえもん、相馬、八野、それに、中原と阿部の6人。

いつのまにかフルPTだ。

「佐久間殿。知ってるか?麒麟の魔法陣の話」

「ネットで話題になってるあれですか?」

「行ってみないか?」

「行きましょう」


麒麟の魔法陣は、もはや観光名所ぶりもひと段落していた。

初めは、一筆書きでなぞればいいのでは?と上を歩く人も多かった。

が、何も起こらず。

逆回りや、書き始める場所 といった検証も行われたが、何も起こらない。

今、有力なのは、他の魔法陣同様「宇宙人」を退治して、

ドロップするアイテムを捧げるのではないか という話。

そのため、寺の阿吽像や千手観音が襲撃される事案が多発している。

「そういえば、中原が宇宙人倒したら、ネギ落としたんだよな?」

「そうでござる」

う~ん、いくら大地とはいっても、ネギ捧げて、麒麟復活 って無いよな。

魚で青竜と比べると、違ってるようにしか見えない。


「とりあえず、魔法陣の上を歩いてみないか?

俺は京都出身なんだが、普段は通れない、道の無い場所を通れるから、

歩くのだけでも楽しみなんだ」

確かに、ほえもんの言うとおりだな。今日はイベントを忘れて、京を楽しむか。

手近なところから魔法陣に入る。魔法陣の道をてこてこ歩く。

ほえもんが、平安京の見所をいろいろいろと教えてくれた。

彼の解説は、歴史に疎い俺にも面白く、ちょっとした観光気分だ。


麒麟の魔法陣は、平安京全域を覆っている。

魔法陣に沿って歩いていると、自然と西の側も通る。

道を曲がると、大イノシシが居た。また、このパターンかよ!

「ブフゥゥゥゥ!」大イノシシが駈け出そうとした瞬間。

先手を取ったほえもんの抜き打ちが、大イノシシの脇腹をえぐる。

よろめいた大イノシシの眉間を追撃の刀が貫く。

たった二撃で大イノシシは消滅していった。

鎧袖一触とはこのことだ。

「強いですね フレに武力特化が居ますが、彼よりも速い」

「まぁ、オフレコで頼むが、リアルでその手の仕事してるからな」

「え!?剣道の道場主とか?」

「まぁ、そんなもんかな。

このゲーム、出来がいいからさ、イメトレにぴったりなんだよ。

そもそもゲームすきってのもあるけどな」

「ほほ~」親近感がわくな、ゲーム好きの剣道家か。


「ところで、この魔法陣、どうやったら起動できるかな?」

「今まではドロップアイテムですけど、今回は違うでしょう。

もし、ドロップアイテムで反応するのであれば、

1度くらいは誰かが持ち込んでいると思うんですよ」

「未だ反応がないところを見ると、そんなアイテムは無い、か」

「はい。既に4日もたって、一度も反応しない ってことは、

アイテムでは無い可能性が高いかなぁ、と。」

「ほうほう。で、他に心当たりはあるんだろ?」

「えぇ。まぁ、勘なんですけどね」

「教えてもらっていいかな?」

「はい。ちょっと気になった事があって。

普段、配下PTを組んでいるときに武将をスカウトした場合ですが、

2人制限にひっかかると、その場にいる配下武将で再編成が出来ますよね。

そして、あぶれた配下武将は領地に自動帰還し、結局人数は同じままです。

でも、今回はそうじゃない」

「それは、イベント中だけ配下2人制限が無いからだろ?」

「はい。では、何故、制限を無くす必要があるのでしょう?」

「何故?……ここで出会う武将と一緒に居させるため?」

「そうです。

このイベント中、スカウトしたら、そのまま人数が増えます。

そうなると、いつものようにプレイヤ同士でのパーティが組めなくなる」


普段は、自分+配下武将2人の合計3人が、行動の基本単位だ。

友人とあわせて6人PTとして遊ぶことも多い。

もちろん、最大6人までの組み合わせなので、自分+配下1の合計2人*3 でも良い。

だが、今のイベント中は配下2人制限が外れている。

誰もが途中で出会った検非違使や陰陽師を、追加の配下武将として連れ歩いている。

俺も、1日目でいきなり中原に出会い、配下にしている。

そのため、プレイヤ達は、4ないし5人のPTで行動しているものの、

実体は、ボッチで歩きまわっているにすぎない。

このイベント中、何度も「自分は一人だ」ということを感じた。

複数のサーバを用意して、ランダムでプレイヤを配置したのも、

プレイヤ同士でPTを組ませにくくするための方策なんだろう。


「そういえば、佐久間殿を待っている間、

やけに配下希望なNPCに出会ったが、そのせいだったのか」

「ええ、PT人数を増やそうとする仕組みがあるのかもしれません。

って、全部断ったのですか!?」

「あぁ。だって佐久間殿とPT組む約束してたろ?」

本当に、義理がたい人だな、ほえもんさんは。


「プレイヤ同士がPTを組んだ状態で、麒麟を一回りすれば、

何かが起こる と踏んでるんですけどね」

「そうか。そうに違いないな!佐久間殿は鋭いな」

「いえいえ。昨日、ほえもんさんと焚火しながら話した時に

『イベント中、初めてプレイヤとPTくんだな』って思ったんですよ。

そしたら、不自然なくらい、PT組ませないようにしてる気がして」

「さて、そこの角を曲がったら、一周だぞ。何が起こるか」

「間違えても、笑わないでくださいよ?」

「その時は、逆回りを試すだけさ」


俺たちのPTが、ちょうど魔法陣を一周した瞬間。

足元から、黄色い光が立ち上る!

光は、俺たちが歩いてきた道をものすごい勢いで逆走していき、魔法陣を一周して戻ってくる。

平安京全体がまばゆく光り、麒麟のホログラフが上空に現れた。


『我は、麒麟。世界の中央を統べる聖獣』

『傲慢、嫉妬、怯懦、強欲……

人の欲、人の業。それを超えねば、我は呼び出せぬ。

我、汝らの持つ、絆、満たす覚悟に敬意を払おう』


麒麟。五番目の聖獣。

その魔法陣を活性化させる条件は「絆、満ちし時」

要は、プレイヤー同士でPTを組んで、麒麟の魔法陣をなぞることだった。


「絆、満たす覚悟」というのは、実はプレイヤ間(にんげん)でPTを組むために、

配下武将を切り捨てる覚悟だ。

その決断は難しい。

ソロ専門のほえもんが居てくれたから、できたことなのだ。

「誰かがやってくれるだろう」

「せっかく配下にしたのに手放したくない」

そう思うのが普通だ。

正解かどうかわからない状況で、踏み切る勇気があるだろうか。


麒麟の話は続く。

『我ら聖獣は復活した。この世界を正しき方向に導く。

我らの力で、汝らを元居た時代へ送り返そう』


イベントクリアだ!

「詳細うぷよろ!」「やったぁぁ!」


システムメッセージが流れる。

【おめでとうございます。イベント前半戦クリアです。】

【戦国時代へ帰還となります。この世界で配下となった武将は、

一旦解散となり、改めて各豪族様の本拠地に転送されます】

え、まだ前半戦?聞いてないぞ?


転送特有の浮遊感に襲われる。

目を開くと、そこはやはり平安京。二条御所の真ん前。

我々の目の前で、二条御所が燃えていた。


【イベン後半戦 開始です!】

炎上する二条御所。ほえもんの二刀流がベールを脱ぐ。

次回「我が名、雲の上まで!」

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