戦国時代へ
時は202X年。
VRがゲームに組み込まれてから、はや数年。
最初は、RPGのジャンルが草分け的存在であったが
シミュレーションゲーム(SLG)がリリースされることになったのだ。
『俺様の野望 23』 数十年にわたるヒット商品の最新作。
プレイヤーは各地の豪族.
自分の領地を発展させ部下とともに戦場に赴く。
VRが威力を発揮する部分。
それは、戦国時代という、熱く燃えた時代の再現。
研究用に製造されたスパコンを連結させ実現させた圧倒的にリアルな質感。
己が領地に建造される、壮大な城、八幡宮、黄金の茶室等の建築物の数々。
領地を歩けば、領民が治世に応じた挨拶をする。
NPCは配下武将としてスカウトし、共に覇道を歩くことができる。
領民からの「お願い」を叶えて、領地を治めよ。
そして、圧巻の『合戦』。数万の兵士が激突する!
一騎当千の猛将として戦場を駆け抜けるか、
万策を弄し、知的に立ち回るか。
著名武将に陣狩りをするもよし、新興勢力として割り込むもよし。
参戦方法は自由自在。名を挙げよ!名誉を勝ち取れ!
勝ったものが、正しい。
ぶっちゃけ、「箱庭」的領地経営と、戦場における「無双」、そして「MMORPG」の良いところどりをしようというあこぎな作品なのだ。
俺、佐久間律人は、友人に誘われて『俺様の野望 23』をプレイすることにした。
悪友、佐野健介は、ベータ版からの経験者。すっかりこのゲームのとりこだ。
ベータ版の情報は、ネットで大々的に公開されているので予習をしておく。
過去のシリーズと同じように、
「武力」「知力」「政治」「魅力」「技術」の能力値と、
「スキル」という要素で武将は構成される。
能力値の説明。
「武力」は、肉体的戦闘能力。100を超えると銃弾を切り落とせる。
「知力」は、戦場における軍師。「他人のステータス」を見る能力だ。
「政治」は、領内の納税量があがり隠遁している名士を見つけやすくする。
さらに行商人との取引にボーナスがあり、建築速度が上がるというメリットもある。
「魅力」は、武将のスカウト成功率や忠誠度の上下に影響する。
「技術」は、手先の器用さを指す。
生産技術や、鉄砲射撃はこの値で取り扱う。
100を超えると、「ヘッドショット」が可能になる。
スキルは、ゲーム内通貨で得られる技能。
鉄砲が使えるようになる「鉄砲取扱」
近接武器のダメージが上がる「剣豪」
海戦で有利になる「海賊」といった、多種多様なスキルがある。
ベータ時には、技術総振りしたスナイパー「御流後23」と
武力総振り剣豪持ちの「石川ほえもん」の激烈な一騎打ちが話題になった。
動画サイトには、対戦動画が転がっており、人気上昇に一役買っている。
プレイヤは自分と2人までの配下武将(NPC)を連れた「配下PT」か、
配下含め、最大6人までの武将が組める「徒党PT」の
いずれかの構成で、戦国時代を歩きまわることができる。
ある時は、夜盗の本拠地に殴りこみ。ある時は、薬草の採取。
配下を連れて、領地を歩きまわるだけでも、領地の治安上昇効果があり、
領民からの贈り物や、配下となりうるNPCとの接触イベントが起こる。
高性能AIで生き生きと表現されたNPCは話題も表情も豊富。
「嫁」と昼夜話し続けるやつもいるとか。
攻略サイトの情報では、キャラメイクでお勧めなタイプが解説されていた。
武力重視は、いちばんスタンダード。
クエストでも合戦でも活躍ができるからだ。
知力重視は、玄人むき。
合戦の地形に応じた罠や戦略を考えなければいけない。
だが、上手くはまれば、最高の戦果をあげられるのもこのタイプだ。
政治重視は、箱庭好きに向いている。建設できる施設は100を超える。
季節に応じて趣を変え、VR技術とあいまって旅行している気分になれる。
「俺様領地コンテスト」があり、白亜の城と紅葉を誇る「姫痔城」がベータ版での優勝者だ。
魅力重視は、有能な配下武将を見つけられるかが勝負。
武将の能力を見抜くのは知力であるため、知力不足で相手の能力を判断することが出来ないからだ。
技術重視は、生産もしくは、FPS大好き人間向け。
迫りくる騎馬武者を、ヘッドショットでたたき落とすのが痛快だそうな。
俺は、迷わず「地雷」である魅力総振りを選んだ。
能力値は、基本30、ボーナス100が与えられる。
俺は、魅力を初期最大の100まで割り振り、
「武力40 知力30 政治30 魅力100 技術50」
にした。
そして、リアルと同じ名前「佐久間律人」を入力し、戦国時代へと 飛びだした!