第二話 昼休みでの出来事
今は六月である。
季節的には夏であり、制服も既に快適な夏服に一新している。ただ、それでもまだ生徒が思う事がある。それは単純に、この季節特有の不満である為、学校側がなんとか出来るものじゃないのだ。
平たく言えば、暑い。
「帰りたい……」
トボトボ廊下を歩きながら、不満を口にする。
ちなみに、城戸崎のクラスの超能力訓練は三、四限目、つまり、終わってしまえば、昼休みである。
「よっ、お疲れさん、キド」
不意に、肩を叩かれる。振り返ると、そこにはある友人の姿があった。
東野悠基。
彼のクラスメイトで、能力名は、察知無効。
その能力は文字通り、察知行動を無効にする能力だ。種類は能力型に当たる。案外地味で目立たない感じの友人だ。
「ああ、よう……」
「相変わらず疲れてんな。もっと体力つけろって」
「……そういうのでなんとかなるようなチカラじゃないんだよ。なんていうか、能力による副作用みたいな感じか?」
「よく分かんねぇけど、ダメージって事は傷でも付いてんのか?」
歩きながら東野が訊いてきた。
「傷、というより疲労に近いかな。……にしても、支配隻眼のデメリットはでかすぎる。ただでさえ、能力使うだけで疲れんのに」
支配隻眼。
それは、隻眼と書いてある通り、城戸崎の右目に宿るチカラだ。本人も自覚しているように、それは『あるだけで能力を発動』してしまうモノだ。普段は眼帯をして、能力の発動を防いでいる。
「ちなみに、俺の察知無効はどう頑張ってもこれまでなんだよな。単に察知行動を無力化する程度のチカラだし」
呆れたように、弱々しく笑いそんな事を言う東野。
「その点、キドのチカラは測定不能が常常。俺から言わせてもらえば先の読めないチカラってことになるから良いよな」
「……決してそんなことはないと思うけど」
「んで、今日は売店に行くんだろ? 急がねえと取られちまうぞ」
じゃな、先戻ってるぞ、と言って先に行ってしまった。
城戸崎は普段は自炊派である。しかし、超能力訓練のある日には売店にてパンを購入し、食事を軽く済ませる。その理由は単純なもので、要は昼休みの間睡眠する為である。
という訳で、売店でパンを買ってきた城戸崎は、教室に戻った。
教室では机をくっつけあって楽しく食事をしている者もいれば、一人で寂しく弁当をつつく者もいる。城戸崎はどちらかと言うと後者だ。先ほど会った友人、東野とは一緒に食事はせず、基本的には一人で食べている。
食事を簡単に済ませた後は、しばしの就寝の時間である。
昼下がりの六月の陽気な日。こんな日に眠るのは最高に気持ちの良いものだろう。
だが、その眠りを妨げる者がいた。
ようやく目蓋が閉じ始めたあたりで、頬をつつかれる感覚があった。
「…………」
城戸崎はそんな悪戯をする人物を知っていた。
「つん、つんつん」
「……旭川、寝ようとしてるんだから邪魔はしないでくれると助かるんだけど……」
旭川菜香。
彼の友人で、能力名は心理観察。相手の心を読み取ることが出来るチカラである。
どうも。鷹宮雷我です。
……正直、自分でも思うのですが、この名前にしたとき、しまったと思いました。主人公よりもかっこいい名前なので。
AA、今回は昼休みの時間です。友人との軽い駄弁りもまじえました。多分次回も同じような話になります(断言します、まだバトル展開はないです)。
それではこのへんで。