愛のタイムマシン
どうなってしまったのだろう。
昔はこうでなかった。
仲のいい夫婦だったのに。
いまでは、ことあるごとにぶつかり合う。
がまんも限界だ。
オレは決意した。
そして、タイムマシンをつくった。
自分の愛情が足りなかったのかもしれない。わがままが過ぎたのかも。
だから、もう一度やり直せばいい。
過去に戻り、結婚生活をリスタートさせた。
だが、結果は同じだった。効果がまったくなかったのである
そこで、再度考え直した。
三つ子の魂百までという。
結婚後が悪かったのではない。いっしょになるまでの教育に問題があったのだ。
そう思ったオレは、彼女の生まれて間もなくの世界にワープした。
年がかなり離れているのを利用、保育士、教師になって、自分好みの女になるようしつけに加わった。
で、結婚。
だが、またまた元のもくあみだった。
二人の相性に問題があったのではないかと思いついたのは、このときだった。
だとすると、ほかに方法はない。
独身時代に戻り、別の女性と結婚した。
しかし、女というのはそんなに変わりがないというのがわかっただけだった。
今度は前の妻より気が合わなかった。
追い出すまでもなく、勝手に出て行った。
もう一人のほうがいい。気楽だ。
家事など今の世の中、慣れれば苦にするほどのものではない。
時は過ぎて行った。
ある日、年老いたオレはすれ違った女に目を留めた。
最初の妻だった。
白いものが目立つ髪からは油気が抜け、化粧もしていない。
気になって後をつけた。
薄汚れた木造アパートの奥まった部屋に住んでいた。
こんな年になって働いているところをみると、経済的に楽ではないだろう。
もちろん男がいる気配もない。
ひとりさびしげに飯を食う女の姿に胸が痛んだ。
あのときオレが結婚してやっていたら。
いたたまれなくなって、表へ飛び出した。
戻り道、数々の思い出が頭をよぎった。歩みは徐々に速くなった。
家にたどり着いたオレは、物置の片隅でほこりをかぶっていたタイムマシンをまた引き出してきた。