1/5
▼サヨナラのために▼
華やかな仕事場でタイムカードを切りスタッフルームに戻ると、チーフが書類をまとめていた。
邪魔をしないように、あまり大きくない音量でリサは声をかける。
「お疲れ様でした」
「あら、リサちゃん、楽しんでらっしゃいね」
苦笑いを営業スマイルで誤魔化し、ロッカールームへ進む。ユニフォームを脱ぐと、纏っていた鎧を脱ぎ捨てたようで何とも心もとない気分になった。
それもこれも、きっとこの後の予定のせい。
「行きたくないなぁ」
呟いてから盛大なため息をつくと、鞄の中で携帯電話か震えているのに気がついた。小さなウィンドウを確認すると、これから会う同級生の一人からの電話。
「何?」
『あからさまにイヤそうね』
「まぁね、でもちゃんと行くよ」
『知ってるわよ』
「でも、今からだとギリギリ乗船開始時間かも」
『わかった、ミツに言っておくわ』
「先輩によろしく」
電源ボタンを押して通話を終了させると、重たく沈む心を叱咤して立ち上がる。
「いつまでも逃げてたって仕方ないか」
ひとつのサヨナラのために、リサは仕事場を後にした。