第五章(表):文化祭開幕! 水上のファンシーパレードと、3人娘のきらきらライブ(裏)そのころ・・
いつもお読みいただき、本当にありがとうございます!
中間試験の赤点パニックを秒で忘れたアニマル連合と3人娘。
今回から、学校全体を巻き込む一大イベント「文化祭編」がスタートします!
サルの源さん師匠のプロデュースにより、湖に浮かぶ「水上特設ステージ」でアイドルライブを行うことになったアオイたち。
まずは、3人娘のきらきらと輝くファンシーな【表のライブステージ】をお楽しみください。
……ですが、この物語がそんな綺麗に終わるはずがありません。
後半からは、とある「ヘタレな男の子たち」の視点に切り替わり、王道ライブの裏側で起きていた泥泥・泥臭い狂気のドラマ(裏話)へと雪崩れ込んでいきます……!
1話で2度おいしい、光と闇の2部構成ステージ。
どうぞ最後までお楽しみください!
秋晴れの空の下、千草中学校アニマル特区の巨大なゲートが一般開放され、待ちに待った合同文化祭が開幕した。
カラオケボックスでのコトネのデスボイス覚醒がきっかけとなり、サルの源さん師匠のプロデュースにより決定した「文化祭・水上特設ステージ」は、お祭りムード一色。
♪【午前の部:炎と森のカーニバル】
マーチングバンド風の可愛いナポレオン衣装に身を包んだアオイ、ユズ、コトネがステージに降臨する。
「みんなー! 今日は楽しんでいってねー!」
アオイ(ピンク髪・ポニテ)が満面の笑顔でジャンプすると、
「アオイ、あまり動くと衣装のデシベルカウンターがズレますよ」
とユズ(緑髪・ツインテ)がツンとしながらも、アオイの乱れたハチマキを優しく直してあげる。
「ふふ、二人とも仲良しで可愛いですねぇ〜」
コトネ(金髪・たれ目)が二人の手をぎゅっと握りしめると、3人のぬくもりが重なり合い、水上はまるで桃源郷のような優しい百合色の空気に包まれた。
ステージのすぐ後ろでは、メイクをしたおねぇゴリラ(ドラム)や、マッチョを夢見る垂れ耳白猫のタケシ(ギターを弾くフリ)たちが、にぎやかにバックバンドを務めてライブを盛り上げる。
はるか後方では、クジラのグランが「ブシュー!」と豪快に水しぶきを上げ、夕暮れの光と合わさって、プール全体に見事な虹のアーチを架けていた。
♪【午後の部:スターライトパレード】
夜の帳が下りると、衣装は星と月がきらめく近未来パステルネオンへとチェンジ。
音楽のリズムに合わせて、レインボーカタツムリのゲイリーが殻を美しく発光させ、水面では小さなクリオネたちが魔法の光を放って、プール全体を幻想的なオーロラカラーに変身させていく。
「次は3曲目ですね。ちょっとしたロックなサプライズアレンジです〜♪」
コトネがふんわりとした笑顔でお茶目にマイクを握り締めると、会場のボルテージは最高潮に。
3人が手を繋いでウィンクを飛ばし、「バッキューン!」とあざといポーズを決めるたびに、水上のオーロラがキラキラと揺らめいた。
歌いきった3人は、大きな拍手の中でステージの幕を閉じる。
「ぷはぁ〜! やりきったぁ! 最高に楽しかったね!」
楽屋に戻り、アオイがポニーテールを弾ませてジュースをすする。
「ええ。私たちのライブデータ、今日の熱気は100点満点中500点の大成功ね」
ユズがタブレットを片手に満足そうに微笑むと、コトネもふんわりと笑った。
「ふふ、最前列のあたりに、なんだか鼻血を出して白目を剥きながら、お正月の挨拶みたいに丸まって固まってた『変な生き物たち』が何匹かいた気がしますけど……。でも、みんな楽しそうだったから、結果オーライですねぇ〜♪」
「あはは、確かに変なのいたいた! まぁ、お祭りだしかったからいっか!」
アニマルたちと作り上げた最高のファンシーライブ。
3人娘が笑顔で今日という日を締めくくろうとしていた、まさにその時。
特設ステージの最前列、深いネイビーの闇に包まれた観客席の片隅では、3人娘の知らない『もう一つの泥臭い青春(地獄)』が、限界突破した大爆発を起こしていたのである――。
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◆ 第五章(裏):一方そのころ……3年間のウジウジ黒歴史と、ダメ人間の時間消失トリック
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遡ること約3年前――小学5年生の春。
それが、ヘタレ男子3人組が、アオイ, ユズ、コトネの3人娘に『ガチ恋』を拗らせた運命の始まりだった。
当時の彼らはまだ純粋なクソガキだったが、恋を知ってしまった11歳の脳細胞は、その巨大すぎる感情の処理方法を見事に間違えたのである。
普通に話しかければいいものを、彼らの歪んだ自意識は最悪の形で暴走を繰り返した。
アオイに恋をしたガキ大将男子は、「お、おいアオイ! お前のそのポニテ、犬の尻尾みたいでダセえな! ガハハ!」と、気を引きたいがために小突き回すような『軽いいじめ』を毎日のように敢行し、普通に嫌われる土台を築き上げた。
ユズに一目惚れした自称天才男子は、「フッ、君の眼鏡の度数、僕の計算によると近視の極みだね。まぁ僕の知性には敵わないけれど」と、教卓の陰から覗き見しながらインテリぶったかっこつけを連発し、「要注意不審者リスト」に最速で登録された。
画像のように常にツインテ姿のユズを遠くから見つめることしかできない、あまりにも不器用な3年間であった。
正式なコトネのぬくもりに救われた中二病男子は、「くっ……離れろ! 俺の左腕に宿る邪眼が、お前のその眩しすぎる光に拒絶反応を……!」と、消しゴムを拾ってもらっただけで顔を真っ赤にして不審なポーズで逃走し、「いつもおててが痛そうな大変な男の子」として遠い目で見守られる存在になった。
そんな3年間の最悪なアプローチを積み重ねた結果、中学2年生になった現在の関係性は、文句なしの【変な奴ら(距離感バグり不審者)】。
そんな彼らが、本日の文化祭での「お近づき、アワヨクバ付き合いたい」という、14歳さながらの限界突破した無謀な妄想からスタートした。
普段は立ち入りが制限されているアニマル特区だが、文化祭の期間中だけはエリアが一般人にも完全解禁される。
脳内で付き合った先の「もっと上(!?)」の妄想を爆発させていた彼らだったが、ゲートをまたいだ瞬間に、アニマルメイド喫茶(フリフリエプロンの猛獣たちがパワーのせいでティーカップを物理粉砕して営業不可能になった大惨事)など、本物の野生のパルス(大迫力)に粉々に粉砕され、ゲートの隅っこで小さくなってガタガタと震えだした。
慌ててパンフレットを貪るようにめくると、3人娘のライブ情報を見つけたが、ビビり散らかして時間を無駄にしたせいで昼の部の開始まであと15分。完全に終わったと絶望しかけた3人だったが、ライブがまさかの【2部構成(昼と夜)】であるという一筋の光を発見する。
だが、この「夜の部がある」という余計な猶予ができたことが、彼らにとって最大の罠となってしまった。
もしこれが「出来る人間」であれば、すぐに状況を把握し、運営テントへ走って夜の部のチケット確保に動く。
しかし、彼らは筋金入りのヘタレ男子3人組。「時間がある」「今なら完璧な作戦が練れる」という、世の中のダメ人間が人生で必ず陥る『破滅の罠(思考ループ)』に見事にはまってしまったのだ。
ハンバーガーショップでポテトを食べながらダラダラと不純な妄想混じりの作戦会議をしていたが、ダメ人間の時間は超高速で溶けていく。気がつけば夜の部の入場規制アナウンスが流れ、次のライブまでもう3時間を切っていた。
状況に振り回されるまま、夕暮れの体育館の裏手でパニックになっていたその時、関わらなくてもいいのに、彼らの性格にミリ単位でピンポイントに似てしまっている、あのうじうじヘタレなアニマル3匹(リスのジン、ポメラニアンのレオ、おねぇゴリラ)が現れた。
自分たちと全く同じ顔でうじうじしている人間の少年3人組を見るなり、アニマル3人衆(?)は「夜の部の最前列エリアの確保など、僕たちの智謀(特別コネクション)をもってすれば容易いね、ド頭から最前列まで力強く俺たちに任せろォォォーーーッ!!」と根拠ゼロの宣言をぶちかました。
その瞬間、ヘタレ男子3人組の脳細胞に勘違いの電流が走る。中身がスッカラカンで雰囲気だけは自信ありげな後ろ盾を得ただけで、失っていた自信を120%取り戻してしまったのだ。
状況は『1ミリも変わっていない』のに、彼らの全身からは圧倒的な勝利の覇気が漲っていた。
その姿はまるで、就職氷河期に書類選考を100社連続で落とされまくり、奇跡的に1社だけ面接を取り付けただけの就活生が、「よっしゃあ内定もらったぜぇぇえ!!」と完全勝利宣言を出している哀愁の姿にそっくりだった。まだ一次面接すら始まっていないのに……!
勘違いの無敵パルスを撒き散らしながら進軍を始めた直後、スタッフ(アニマル)の「チケットのない方は入場できません」という非情なアナウンスに、6つの影が同時に硬直した。
誰もチケットを持っていないという超絶不条理な現実。さっきまでの内定を貰ったような無敵の覇気は一瞬で霧散し、履歴書をシュルダーにかけられたような絶望が彼らを襲う。
「「「うわあああどうするよコレ!! あと1時間で入場規制がかかるぞ!!」」」
追い詰められた彼らは、一般常識もプライドもすべてをドブに捨て、3人娘の控室へ直接行って土下座でチケットを譲ってもらうという暴挙へ出ることを決意した。
ドタバタと地響きを立てて控室のテント手前まで猛ダッシュした3人と3匹。しかし、テントの幕の目の前に立ったその瞬間、ヘタレ男子たちの『チキンハート』が最悪のタイミングで急ブレーキをかけ、極限の緊張で1歩も動かなくなってしまった。
本人の気配がすぐ近くにあるというだけで、身体が金縛りにあったように直立不動のカカシ状態になってしまったのだ。
「く、くっ……静まれ……! 静まれ我が魔眼よ……! 今テントに入れば、緊張のあまり我が漆黒の右腕が勝手に暴走して国際問題になりかねん……!」
眼帯を抑えて中二病男子がガタガタ震えだすと、自称天才がパニックで呟く。
「ま、まずいね。パニックで脳内メモリが完全にバグを起こしているよ……。ええと、三平方の定理は…… a^2 + b^2 = c^2 ……いや、そんなこと計算してる場合じゃないね……!」
ガキ大将男子にいたっては、「あ、あ、アオイちゃん……」と口をパクパクさせたまま、完全に魂が抜れた白目で直立不動。言い訳すら機能しないレベルで挙動不審になり、テントの前にただの不気味な置物のように突っ立っていた。
その時である。
「フッ、随分と賑やかなストリート(控室前)じゃねえか。だが、そんなところで直立不動のダンスを踊って、この俺の『ハイドロ・流体力学・ラップ』に勝てると思ってるのかい?」
背後から響く、不気味にエコーのかかったあのハスキーボイス。3人が驚いて振り返ると、そこには、次の夜のライブステージの打ち合わせ(演出確認)のために通りかかった、背中の殻をレインボーに明滅させたカタツムリのゲイリーが、ラジカセを抱えて不敵に笑っていた。
ゲイリーは、テントの前でガタガタ震えている挙動不審な人間の少年たちをじーっと見つめ、(……ん? こいつら、さっき楽屋でアオイちゃんたちが『またあの変な奴らが来たら要注意よ』とか噂してた知り合いかな?)と、持ち前のストリートな勘で察した。
「おい、ブラザー。何かトラブル(不測の事態)かい? 悩みがあるならこの俺にライム(言葉)でぶちまけてみなよ」
救世主ゲイリーのその優しい一言に、ヘタレ男子3人組の心のダムが完全に決壊した。
「ゲ、ゲイリー先輩ィィィエエエーーーッ!!!!!(泣)」
彼らはプライドをミリ単位も残さずドブに投げ捨て、ほぼ泣き落とす勢いでゲイリーの足元(殻の下)にすがりつき、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら大失態をすべて白状し始めた。
「俺たちの3年間のヘタレ癖のせいで夜のチケットを完全に忘れてたんです!! 完璧な作戦を練ろうとしてハンバーガーショップでポテト食べてたら時間が溶けたんです!! お願いです、この通りですゲイリー先輩!! 俺たちに夜の最前列のチケットを分けてくださいィィィ!! お願いしますッッッ!!!」
3人の少年たちが額を地面に擦り付けんばかりに泣き縋り、必死にチケットを譲ってくれと暴挙とも言える懇願を繰り返す。
「フッ……そういうことかい。チケットがなくて運命のディーヴァ(3人娘)のステージが見られないとは、最高にヘビーなバッドエンドじゃねえか」
ゲイリーは不敵に笑うと、背中の殻をビカビカと一段と激しく発光させ、スタッフ用の予備チケットをスッと3枚、殻の隙間から差し出した。
「乗りな。この俺の特別リザーブシート(最前列席)を分けてやるよ。ストリートの特等席で、彼女たちのパルスを骨まで刻み込みな!」
「「「ゲイリー先輩ぃぃぃいいいーーーッ!!! 一生ついていきますッッッ!!!(大号泣)」」」
こうして、ゲイリーの圧倒的な男気により、絶望の淵から奇跡的に夜の部の最前列チケット、それも極上の神席を手に入れることに成功したヘタレ男子3人組。
――しかし、ここで忘れてはならない存在がいた。
ここまで、チケットの交渉にも、ゲイリーへの泣き落としにも、『本当に何一つ、1ミリも貢献していない』はずのアニマル3匹(ジン、レオ、おねぇゴリラ)である。
彼らは、男子3人組が必死に泣きついている間、ただ後ろでどんぐりを齧ったり「くぅぅん」と可愛くポーズを決めていただけだった。
にもかかわらず。
「「「フッ……さすがは僕たちのゲイリー先輩だね。さあ、用意された神席(最前列)まで一緒についていってあげるわよ、ウホッ! キャンキャン!」」」
チケットが手に入った瞬間、アニマル3匹は何の悪気もない顔で、当然のような厚かましさで男子3人組の横にぴったりと合流した。
「ちょっと待てお前ら!! チケット交渉のとき、後ろで無言でどんぐり齧ってただろ!! 何が『ついていってあげる』だコラァァアアッ!!」
男子側の激しいツッコミを完全に無視して、アニマル達はまるで自分たちの手柄であるかのような誇らしげな顔のまま、用意された特等席へと一緒についていくのだった。
◆ 第六章:開演! 勘違いのサラリーマンどや顔と、大爆発のガチ恋パルス
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ゲイリー先輩が恵んでくれた最高峰の神席、夜の部『スターライトパレード』の最前列エリア。
そこに滑り込んだ人間のヘタレ男子3人組とアニマル3匹は、周囲の観客アニマルたちが引くほどの凄まじい覇気を放っていた。
ただカタツムリに助けられただけである。手配に関して彼らは何一つ生産的な仕事を成し遂げていない。
しかし、一世一代の修羅場を乗り越えた(と勘違いしている)彼らの表情は、数千億円規模の国家プロジェクトを独力で大成功に導いたエリートサラリーマンも真っ青の、宇宙一ふんぞり返った『どや顔』に満ち溢れていた。
隣のレオもプロペラ尻尾をブンブンと振り回し、「勝者の余裕」を撒き散らしながら胸を張っていた。
――だが、現実はそこまで甘くはなかった。
ライブ開始の定刻と同時に、それまで特設ステージを照らしていた照明が、一瞬にしてすべて完全に消灯。夜のプール会場は完全な真っ暗闇へと変貌したのだ。
「「「ひぇッ……!!」」」
さっきまでのドヤ顔は0.1秒で霧散した。
暗闇の恐怖に、3人と3匹はお化け屋敷に放り込まれた小学生のように身を寄せ合い、お互いの服の裾や毛並みを掴んでガタガタと震えだす。
その直後、真っ暗空間を引き裂くように、夜の水面から美しいエレクトロ・パレードの幻想的な音楽が流れ始める。
自称天才男子が早くも呼吸困難(挙動不審)になりながら眼鏡をガタガタ震わせ、中二病男子はパニックを起こして自分の眼帯を逆に引っ張って目を潰しかけ、ガキ大将男子は壊れたラジカセのように意味不明な音を漏らす。
正式なその瞬間が訪れる。
『シュパァァァアアンッ!!!』
眩いパステルネオンのスポットライトが夜の水上ステージを照らし出し、星と月がデザインされた、暗闇でまばゆく光る最高にキュートなアイドル衣装に身を包んだアオイ、ユズ、コトネの3人娘が降臨した。
その瞬間、彼らの脳内で、3年分の『ガチ恋パルス』が完全に大爆発を起こした。
小学5年生の春に出会ってから今日までの約3年間、好きすぎて話しかけられず、奇行とかっこつけと軽いいじめを繰り返し、毎日不審者扱いされてウジウジモジモジと過ごしてきた、あの血と涙と黒歴史のすべて。
あの全ての苦労(※9割は自業自得)が、この瞬間のためにあったのだと、彼らの魂の濁流が涙となって目からブチ上がった。
「「「アオイちゃんんんん!!! ユズちゃんんんん!!! コトネちゃんんんんんんーーーーーッッッ!!!!!!!(大号泣)」」」
今日までの全てのヘタレ癖をかなぐり捨て、3人組は両手にサイリウムを握りしめ、喉が裂けんばかりのファンコールを叫びながら、限界突破した大熱狂のオタ芸を最前列でぶちかまし始めた!
その横では、特攻服のレオが狂ったように吠え散らかし、ジンがどんぐりを激しくシェイカーのように振り、おねぇゴリラが狂喜乱舞のドラミングを轟かせる。
だが、彼らはまだ知らない。このあと、コトネちゃんがマイクを握り締め、彼らのソックリなアニマルたちのすべての絶望の言葉を乗せた、地獄の底からの『超本格派・重低音ヘヴィメタルデスボイス』を大絶唱し、客席の彼らを本当の意味で白目大福(気絶)に追い込むことなど、この時の彼らは1ミリも予想していないのだった。
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◆ 第七章:覚醒! 幻の王道アイドルと、深淵からの地獄重低音
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ステージの照明が爆発するように弾け、まばゆく輝くパステルネオンの光が夜の水面をオーロラカラーに染め上げる。
最初の1曲目、および2曲目。最前列を陣取ったヘタレ男子3人組は、3年間の拗らせた想いをすべてサイリウムの炎に変えて、喉を枯らして大号泣のファンコールを叫び続けていた。
脳内メモリは完全に桃源郷。付き合った先のそのまた「もっと上(!?)」の妄想が現実になると本気で信じ込み、彼らのガチ恋パルスは最高潮に達していた。
――しかし。運命の3曲目が始まった、その瞬間。
3人娘にとっては「ちょっと可愛いロックなサプライズアレンジ」のつもりだったその曲は、脳を焼かれたヘタレ男子視点では、一瞬にして音を立てて崩壊する悪夢の旋律となった。
『ズウゥゥゥゥウウウウウウウウンンンンッッッ!!!!!』
地殻変動でも起きたかのような、地獄の底から響く凄まじい重低音のディストーションギターが、スピーカーの防護壁をぶち破って客席へと襲いかかってきたのだ。あまりの激しさに「あれ? 僕たち、実は来てはいけない恐ろしい暗黒結界に来てしまったのでは……?」と脳が錯覚を起こすほどの、圧倒的な暴力の重低音。
男子3人組は何が起こったのか1ミリも理解できず、その場で完全に直立不動の硬直を起こした。あまりの音圧と不穏な空気に、ただただ本能的な恐怖に震えるしかない。
中二病男子の眼帯を持つ手がガチガチと激しく震えだし、自称天才男子の眼鏡は恐怖の冷や汗で一瞬で曇り果て、ガキ大将男子にいたっては顎をガクガクさせて泡を吹きかける始末。
極限の恐怖に耐えかねた3人は、藁にもすがる思いで、すぐ後ろにいるあの頼りになる後ろ盾アニマルたちを振り返った。
しかし、彼らもまた、ただの筋金入りのヘタレ(アニマル)であった。
「「「……(そわそわ、そわそわ)……」」」
後ろを向いた男子3人組の目に飛び込んできたのは、あまりの重低音の恐怖に、完全に耳をペタンと寝かせて「そわそわ」と落ち着きなく足元を往復し始めるポメラニアンのレオ。どんぐりから謎の汁を染み出させながら目を白黒させてソワソワと周囲を見回すリスのジン。そして「ちょっとォ、あたいの脳細胞がストレスで老けちゃうじゃないのォ!」と自分の巨体を小さく丸めようとするおねぇゴリラ。
状況は、文句なしの『全員ビビり散らかし状態』。今すぐゲートの向こうへ逃げ帰りたいだけのカカシと化していた。
誰も頼れない、誰もこの異常事態を説明できない。
最前列の6匹(?)が恐怖のドン底でパニックを極め、お互いにぎゅーーーっと身を寄せ合ってブルブルと震えていた、その刹那。
ステージのド真ん中で、金髪を振り乱したおっとり癒やし系のコトネが、マイクを両手で引きちぎらんばかりに握りしめた。
地獄からのデスボイスが、文化祭の夜空を爆音で引き裂いた。
「「「ド頭からァァ!! テンション全開で行くぞ野郎どもォォォーーーッ!!! 3年間のウジウジ黒歴史をここで完全に粉砕して灰にしろォォォオオオーーーッッッ!!!!!(ヘドバン大絶唱)」」」
「「「ギニャァァァアアアアアッッッッ!!!!!(白目尊死)」」」
一番の癒やし系だと信じていた推しの『本物の狂犬』への覚醒。
そして自分たちの3年間の黒歴史をピンポイントで抉り散らすシャウトを目の前で浴びたヘタレ男子3人組は、あまりの衝撃と脳内スパークにより、特大の鼻血をブチ上げながら一瞬で白目を剥き、モチモチの大福のように固まってその場にバッタリと横倒し(尊死)になるのだった。
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◆ 第八章:救済! 漆黒の洗脳パルスと、同志ペンタの降臨
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コトネの激しすぎるソロステージが2曲で幕を閉じると、爆音のディストーションギターが消え、再びステージ中央にアオイとユズが合流。何事もなかったかのように、きらきらとした王道の可愛いイントロが流れ始めた。
「あ……あぁ……う、美しい……」
白目を剥いてモチモチの大福のように固まっていた3人の目から、大粒の涙がボロボロと溢れ出す。
激しい暴力のあとに差し伸べられた、あまりにも優しく甘いメロディー。何が起こっているのか脳科学的な理屈は分からない。ただ一つ言えるのは、彼らの魂は今、完全に『救われていた』。
そう、それはまるで、激しい暴言や過酷な宗教洗脳によって精神を限界まで追い詰められ、正常な判断能力を完全に失った時にだけ発生する、究極の依存状態に極めて酷似していた。
そんな脳を極限まで焼き尽くされ、心がフニャフニャのスポンジ状態になったヘタレ3人組の正面。最前列のリザーブシートの目の前に、アイドル全開のアオイ、ユズ、コトネが並んでステップを踏む。
3人娘は、完全にターゲットをロックオンしたあざとにじみ出る笑顔を浮かべ、彼らに向かって優しく手を振り、完璧な角度でウィンクを飛ばし、トドメとばかりに指でハートを作って「バッキューン!」と撃ち抜いた。
『ドクン……!!!(ガチ恋パルス完全融解)』
脳の防衛システムを完全に破壊されていた3人組に、そのあざとすぎるクリティカルヒットが容赦なく突き刺さる。
「好き」とか「可愛い」とか、そんな生温い3次元の感情や言葉は、彼らの言語野から一瞬で消え去った。彼らの魂の底から湧き上がってきたのは、ただ一言、「……と・お・と・い(尊い)……」という宇宙の真理のみ。
今この瞬間なら、全財産を差し出せと言われようが、己の命を今すぐこのオーロラの水面に捧げろと言われようが、満面の笑みで喜んで従う自信がある。それくらい、彼らは完全なる『虜(洗脳完了)』と化していた。
だが、そんな彼らの周囲を包む、不純かつ極限まで濃縮された「尊死パルス」を、最速で察知した者がいた。
客席の片隅で、知恵熱を限界突破させて白目を剥き、本日三度目の尊死を遂げていたはずのペンギン――妄想魔のペンタくんである。
画像のように大興奮で知恵熱を出しつつハグの妄想を浮かべるペンタくん。
ガタガタとフリッパー(翼)を震わせ、パチッと白目が黒目に戻る。彼は、お互いに涙を流しながら「と、尊い……」と手を合わせているヘタレ男子3人組をじーっと見つめた。
(ク、クェ……!!? こ、こいつら、僕と全く同じ『宇宙が滅びるその日まで永久保存アーカイブ化360度VRシステム』を脳内に構築できるレベルの、ガチの神の波動を放っているクェ……!!!)
かつてない『本物の同志(同類)』を見つけたその喜びと狂気に、ペンタくんの短い足の細胞がオーバードライブする。彼はヨチヨチと千鳥足を踏みながら、大興奮で口からプシューと蒸気を吹き出し、頭上に3人娘がぎゅっとハグしている特大の妄想吹き出しを爆発させながら、ヘタレ3人組の足元へと激しく擦り寄っていった。
「クェェェエエエエーーーッ!!!(お前ら最高だクェ! 一緒に全財産を貢ぐクェェエエ!!)」
「う、うわぁぁあ!? なんだこのペンギン! 暑苦しい妄想のモヤモヤがこっちまで伝わってくるんだが……! だが、お前の言いたいことは分かるぞ……! 尊いよなァァアアアッッッ!!!」
「ガハハ! よし、お前も俺たちの仲間だ! 一緒に叫ぶぞォォオオーーーッ!!」
こうして、脳を焼かれた14歳男子3人組と、妄想大爆発のペンギン・ペンタくんは、最前列でガシッと熱いハグを交わし、宗教的な大熱狂の渦へとさらに深く、深く沈んでいくのでした。
(後ろで耳を寝かせてそわそわしていたジン、レオ、おねぇゴリラ達は、その人間の少年たちとペンギンの異様な光景に、今度こそ本気でドン引きして2歩後ずさりしていたのは言うまでもない。)
――環境として特に変化はないが、その客席の様子を、教壇の隅からじーっと見つめている白い影がいた。
天才ニワトリのアインシュタイン、こと魔術師ヤンである。
彼は、最前列で涙を流しながら「と、尊い……」と手を合わせるヘタレ男子3人組と、頭から湯気を吹いて彼らと熱くハグを交わしているペンタくん、およびその狂気に本気でドン引きして2歩後ずさりしているジン、レオ、おねぇゴリラたちの姿を、冷徹な智将のごとき鋭い眼光で見つめていた。
ヤンの脳細胞(IQ500)が、再び静かにオーバードライブを始める。
(コケ……ある意味、これもあの『神の問い』に対する、答えの一つの形なのだろうか……?)
ステージの上では、かつて自分が講堂の入り口で見たように、アニマルたちと人間の女の子たちがぬくもりを感じ合い、傷つけ合うこともなく、ただ純粋に最高のハッピーエンド(世界の答え)を形にしている。
その純粋平和パルスを仮に『 X 』とする。
正式なステージの下でも、確かに人間とアニマル(ペンギン)が、種族の壁を完全に超越して熱く魂を共鳴させ、ガシッと肩を組み合っている。この闇のドルオタパルスを『 Y 』とする。
大きい意味で見れば、上も下も「いきものたちが手を取り合う」という、全く同じ尊い平和の光景なのだ。同じ、はず、なのだが――。
(……何故だろう。コケ。なぜ X = Y の数式が成立するのか、我がIQ500の頭脳でもまったく記述できないコケ……。どう見ても同じ美しい光景には見えない。むしろ何故か、もの凄くおぞましく悍ましい、闇の宗教儀式を見せられている気分になるのは何故んだコケ……)
魔術師ヤンの持つ国家予算レベルの超高度な知能をもってしても、この不条理すぎる生態データの数式化は不可能だった。宇宙の真理すら超越したヘタレと変態のディープな絆を前に、天才アインシュタインは、どこまでも深く、深く、頭を抱えて苦悩するのであった。
――まぁ、3歩トボトボと歩いたら、その不条理な悩みも全てきれいに忘れるんだけどね。
(文化祭編・うら話 おわり)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
【表】の可愛い百合ライブの裏側で、まさかあんな「闇の宗教儀式(尊死ドルオタ同盟)」が結成されていたとは、アオイたちも夢にも思っていないことでしょう……(笑)。
最初はただ緊張してカカシになっていただけなのに、カタツムリのゲイリー先輩の圧倒的な漢気に救われ、最後は面接を取り付けただけで内定を確信した就活生のようなドヤ顔で最最前列に滑り込んだヘタレ男子3人組。
小5からの3年間の黒歴史が、コトネちゃんの重低音デスボイス(DV)とあざといウィンク(救済)によって完全に脳内スパークを起こし、妄想ペンギンのペンタくんと熱い魂のフリッパーを交わす着地には、作者自身も筆が勝手に動き出して震えました。
一番の被害者は、IQ500の頭脳で無駄に数学的に悩み、最終的に3歩歩いてすべてを忘れた天才ニワトリのアインシュタイン(ヤン)かもしれません。
「コケェーッ!忘れるんかい!」
「ゲイリー先輩がカタツムリなのにイケメンすぎるwww」
「コトネちゃんのデスボイスで私の脳細胞も老けました」
などなど、皆様からのツッコミや温かい感想のコメントを、感想欄にて心よりお待ちしております!
面白いと思ってくださった方は、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆)での応援もぜひよろしくお願いいたします!
次回からの新章(冬の行事編)もお楽しみに!




