魅了体質持ちの乙女ゲームヒロインでした
「アシュリー・セイレス!あなたが皆を魅了体質で騙したのは分かっているのよ!」
貴族学園の卒業パーティー。各々めかしこんだ生徒達の視線の先に一人の女生徒がいた。
ストロベリーブロンドの髪、エメラルドの瞳を持つ美少女。
アシュリー・セイレス子爵令嬢。
この世界は乙女ゲームの世界だった。そして、アシュリーはこの世界のヒロインだった。この世界はアシュリーがイケメンと恋するために作られた作り物の世界なのだ。
そして私はアシュリーをいじめる女生徒役。いや、ゲームでは友人だったらしいが、今は彼女の態度を改めさせるために頑張ったが果たせず、今は敵対している。オリビア・キューラーという美少女キャラに転生した、日本人である。
前世このゲームのプレゼンをSNSでたまたま見て、その後の記憶がない。多分死んだのだと思う、前世読んでた悪役令嬢ものではよくある導入だった、だからすぐ自分の境遇を受け入れたし対策できた。
アシュリーは魅了体質のヒロインで、それに攻略対象達が振り回される、というストーリーだ。
そこは悪役令嬢ものと一緒だった。
悪役令嬢ものと違ったのは、私はヒロインをいじめる役ではなくて、攻略対象の婚約者ではないということ。でもそれが何?こんな風に人を弄んで、大した女でもないのに魅了を使ってイケメンを惚れさせるなんてずるい。そんなずるい世界は正されるべきだ。
アシュリーはずっと俯いているが、それに構わず話続ける。
「今あなたが飲んだジュースは薬が入っているの。魅了体質を抑えるものよ。これであなたは男を魅了できないわ。残念だったわね。どうせ男を弄んでいい気になっていたんでしょう?その大したことない顔を見せなさいよ。」
そう、彼女が美しく見えるのだって魅了のせいだろう。いくら私より美しいと言われたって、魅了がなければ大した女ではない。そう、なんだって本当は私の方が上なはずー…。
「本当に魅了がなくなったのですか?」
「ええそうよ、だからもうあなたはただの女ってことー…」
アシュリーが顔を上げる。
その顔は変わらず美しかった。
「は!?」
「ありがとうございます!これで私は普通になれる…!人を惑わせる事もなくなります…!」
「ちょっと待てよ、なんで魅了がなくなったのに外見はそのままなのよ、普通は大したことない見た目を晒すものでしょ!?」
「…私の顔は自前ですが」
「はあ!?」
魅了と顔、両方あるわけ!?どんだけずるいのよ!
「私はこれまで、この体質で嫌なことにも巻き込まれて来ました、だけど、これからはそれもなくなるのでしょう。願ったり叶ったりです。皆を混乱させたり、気持ちを操ったりしなくていいんだと。あなたがどんなつもりでこの薬を盛ったかは分かりませんが、感謝しています。」
「なにそれ…!」
「ちょっと待ってくれアシュリーさん!俺たちは魅了がなくなっても君が好きだ!」
「はあ!?」
攻略対象達がそんなことを言い始めた。その中には私の好きな人も…なんでよ、見損なってよ、なんで上手くいかないのよ!
「こんな魅了持ちの女が好きなんておかしいじゃない!なんでその女なのよ!」
美しい私を見なさいよ!なんで私の思いどおりにいかないの!?なんでヒロインばかりなの!?
「…なんで悪役令嬢なのにヒロインに勝てないのよ!」
「…悪役令嬢、というものがなんなのか分からないが、私たちがアシュリーを好きなのは、彼女の心ばえからだ。魅了ではない。」
「そんなわけないわ!」
だったら、なんで、前世の私は選ばれなかったのか、愛されなかったのか。私より美しいアシュリーを選んだ時点で、心ばえなんて嘘だ。ヒロインを選ぶなら、ストーリーの強制力だ。ずるい。何もかもがアシュリーのためにある。私のためには何もない。なぜ世界は私のために存在しないのか。そう思考を巡らせたとき、
「えー、済まない。オリビア・キューラー。貴女を拘束する。」
と、教師達が私を囲む。
「は?なんで」
「真偽不明な薬物を盛ったからだ。毒物の可能性もある。貴族が貴族にそんなことをして、いけないと思わなかったのか?」
「あ…」
本当だ、なぜ気付かなかったのだろう。いやきっとこれもストーリーの強制力だ。私を幸せにすまい、ヒロインを勝たせようとする世界の意思!私は生涯解放されない!
「いやああああああ」
そして、オリビアは投獄され、アシュリーはそれなり幸せになったという。
◇◇◇◇◇◇
私はオリビアが騒ぐ様子を見ていた。
やっぱり転生者だったのだな、と思った。
私も転生者で名もなきモブだった。転生して私がしたことは、ともかく目の前のタスクを解消すること。だから私はオリビアにも、アシュリーにも何もしなかった、アシュリーは自分の力でこのエンディングに行き着いた。
彼女にはヒロインたる資格と精神があり、オリビアにはなかった。
このゲームには悪役令嬢は存在しない。大抵の乙女ゲームはそうだけど。
だから、彼女の理想通りではなかった。
そもそも、世界は自分向けにデザインされていない。そんなのは前世で十分分かっていたはずだ。
それでもそれを恨んでしまうのは、もう彼女の人間性の問題でしかなかった。
アシュリーはたとえ友人を失っても、自分でこの未来をたぐりよせたのだから。彼女と私が転生した時点で、この世界はもう既にアシュリーのための世界ではなかったのだから。
1万文字越える予定でしたがちょっと無理でした!次頑張ります。




