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でふぉ。  作者: Takibi
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一人目の。

その人にとっての普通。

それは、生まれてから今日まで積み重ねてきたデフォルトだ。


世間では「変わっている」と言われる人も、

その人の世界では、それが当たり前だったりする。


そのデフォルトが最もぶつかる場所は、

もしかすると恋愛なのかもしれない。


うまく噛み合い、続いていく恋もあれば、

静かに終わってしまう恋もある。


けれど、その多くは

誰かが完全に悪者になる形では終わらない。


すれ違い。

価値観のずれ。

育ってきた環境や、性格の違い。


正しいとも、間違っているとも言えないデフォルト同士が、

ただ噛み合わなかっただけ。


良い恋愛とは、何なのだろう。


その答えは、

経験することでしか見えてこないのかもしれない。


この物語は、

そんな恋愛の一つを、

擬似体験してもらうための話である。

「寝坊だ。」

予定時刻を当に過ぎていることに今しがた気がついたかのように一言つぶやいた。


勢いよく起き上がった私は、膝にかかったままの羽毛布団から外に出ようと試みた。上半身は起き上がった勢いでなんとか脱出したが、そこから抜け出すのは至難の業だ。足が重いのか、布団が重いのか。全ての人が疑問に思うだろう。私はその答えを知っている。布団だ。


だって私は自慢ではないが、スレンダーな美人だ。スタイルには気をつかっている。美人は生まれつき。

そうこれは、自慢ではない。事実だ。


「なんて重い布団なんだ。・・・羽毛の癖に。」


そんなことを呟きながら、さっきまで3を指していた時計の針が5に届きそうになっていることに気がつき、時計の針さん!4を通るのを忘れていますよね?って言いたくなったが、流石に言わない。そんなわけないのはわかっている。なぜならもう21年間前からこの世にいるけどそんなことは一度もなかったからだ。


流石にこれ以上の遅刻はまずいな。と現実的な判断ができる程度に頭が回り始めていた。

「寝過ごした!」

と、まるで今しがた気がついたかのように。

焦っている人が言いそうな感じでさっきより大きめにひとりごとを。


そしてその勢いで膝にかかった重量級の羽毛布団をバサっと押し除けた。

それももちろん焦った人がとるであろう振る舞いで。


まるで寝坊がわざとではないと知らせるかのように。

それを知らせているのは母でも父でもない。ましてや最近ではしばらく話していない兄でもない。そう自分に知らせているのだ。


母は仕事で父はもっと前の時間から仕事で家にいない。兄も今日はいないみたいだ。


自分に知らせる理由なんて一つだ。自分はわざと寝坊をするような人間じゃないと思いたいからだ。

いや実際、わざとじゃない。ただ、家を出る予定だった15分前には一度起きていて、今すぐに用意したら間に合うことを知りながらも、さまざまな理由と冬の季節が羽毛布団を重くしたから、しかたなく。しかたなーく。もう少しだけとどまろうと思い、瞬きをした瞬間2時間が経過していたのだ。ね?わざとじゃないでしょう?と言い聞かせながら、いつも通り顔を洗い、髪の毛を整え、歯磨きをし、少しのメイクをしたら朝の準備が終わった。


そこでようやくスマホを取り出した。見たくなかったのだ。彼からどんな連絡が来ているかを。

なんて言われても彼との関係は今日までなのだから嫌われったって良いが。

・・・いや、やっぱり嫌われたくない気持ちはある。彼にじゃない。人に嫌われるのは嫌だ。だからそもそも私はなるべく人と関わらない。関わらなければ嫌われることもないしね。


恐る恐る目を背けていた彼からのラインには電話三通と、心配のメッセージがあった。

こういうところが嫌いだ。優しくするな。

「怒ったら良いのに。」

そう。彼は優しい。友達も多ければ、夢もある。向上心があって勉強熱心な努力家。好きなこと、好きなもの、好きな人のためならなんでもできる主人公。

ならなぜ別れようとしてるかって。惨めになるからよ。


私のためになんでもしてくれる彼と、彼なら許してくれる。嫌われたらそれはそれで別れを告げる負担もなくなってちょうど良い。なんて考える私。まぁ、優しい彼は何も言わないこともわかっていたんだけど。


「なんで私を選んだんだろ。どうせ見た目よね。」


そのひとりごとを否定してくれる人はまだ隣にはいなかった。

私が寝坊したからなんだけどね。


彼に、「ごめん、寝坊した。今から出る。」とラインを返した私はトイレに行ってから玄関を出た。


外に出ると「何かあったわけじゃなくてよかった。気をつけて来てね。」と返信が来ていた。


「怒れば良いのに。はぁ・・・・」



彼女の視点ではこんな感じだろうということを僕は知っていた。

全てがわかるわけではないが、生まれつき僕は人の感情を読み取りやすい性質があった。相手の言って欲しいこと。どういう行動をとって欲しいか。そのまま実践すれば大抵はうまく行った。だけど恋愛は違う。確かに僕が読み取った彼女の求めることは間違っていない。だけど、それを全てできてしまうのは逆に彼女にとっては負担になってしまうようだ。難しい。


普段はできてしまう僕がたまに失敗すると、その隙を狙ったかのように離れていっていく人もいた。今回もそうかもしれない。そういう日はなんとなくわかってしまうものだ。


待ち合わせ時間の15分前に駅に着いた僕は、カフェで本を読みながら待っていることにした。遅刻癖のある彼女だが、いつも着いた時には申し訳なさそうな顔をする。それが本心かは置いておいて、来てくれたのならそれだけで嬉しい。だから構わない。恋は盲目だ。


待ち合わせの10時になっても来ないので電話をかけてみた。


「出ない。」


「起きてる?駅前のカフェで待ってます。」とラインを入れてしばらく待つが、30分経っても連絡が来ないのでもう一度電話をかけた。


「出ない。」


今度はラインは送らない。そしてそこから1時間が経ち、11時半になったが音沙汰はないのでもう一度だけと自分に言い聞かせ電話をかけた。


「やっぱり出ない。」


流石に少し心配になったが心配してもしょうがないから心配してはいけないと思い、いくつか電話に出ない状況を予想した。最近特に疲れていた彼女が自分におもっているであろうこと。そしてそれが布団から出たくない理由になるであろうこと。他にも寒さやストレスで現実を見るのに時間がかかって気づいたらこんな時間になっていた。みたいなことではないかな。と考え、あと彼女は寝坊して起きてもすぐに返信はせず、先に用意をしてから家を出る時に連絡を返す。その理由は僕にはあまりわからない。待たせているから少しでも早く用意しようとかかな?でもその理由は彼女らしくない。というかそうだとしても先に連絡をしてくれた方が安心だし嬉しい。まぁ彼女には言えないけどね。


「はぁ・・・」


なぜって、彼女なりに考えがあっての行動なんだからそれを否定したくないし、自分の意見を押し付けてはいけないと思うから。何より僕は彼女に悪気がないと信じたい。


そんなことを考えていると彼女からのラインが来た。時間は11時45分。約2時間も遅れている。寝坊で今から出るそう。少し心がもやっとしたが、安心と嬉しさが勝ち何も言わず彼女を待つことにした。恋は盲目だ。












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