『勇者は赤面しなかった』
夏休みの間、私たちはひたすらヌードの表現を追い求めた。
色んなポーズのデッサンはもちろん、着彩や画材に至るまで、それはそれは色んなことを試してみた。
試しては悩み、また試しては脱いでを繰り返すその合間に、私たちは息抜きと称して遊びに出かけては夏休みを満喫した。
そうした中で、私は唐子の写真を撮って撮って撮りまくった。
そしてそれは唐子だけにとどまらない。
散らばった画材、描きかけのデッサンや途中で没になった作品たち。
気分転換に歩いた散歩道や、二人で出掛けた動物公園の動物たちなど。
撮りたいと思ったものを、好きなように、好きなだけ撮った。
数か月前からは考えられないほど、自由気ままに。
「あ、これいーね!良く撮れてるよ!」
「今回はコイツが一番だな」
私はその中で、唐子が欲しがった写真を現像してあげる。
唐子はそれを、二人で買ったアルバムに仕舞っていった。
唐子のアルバムが私の写真でいっぱいになっていくのは、素直に嬉しかった。
なんだか、最近は昔の自分に…
写真を撮る事を純粋に楽しんでいた自分に戻れたような気がして、実に気分がいい。
「アサミちゃんはさー、いつも何に怒ってたの?」
「え?」
いつものようにヌードモデルをしていると、突然唐子にそんなことを聞かれた。
唐子は時々、こうやってこっちがドキッとするような事を聞いてくる。
「私ってそんな短気な様に見える?」
「短気ではあるとは思うけれど…「短気だとは思ってんのかい!」…そうじゃなくてさ」
「私、アサミちゃんの目を見た時に思ったんだよね。あ、この人は『何か』に対して怒りを抱えている人だって」
「そんなこと思われてたんだ……ちなみにそれっていつの話?」
「屋上で最初に会った時!」
「第一印象がそれ!?ファーストインプレッションがそれって私ヤベー奴じゃん!」
今明かされる衝撃の事実。
驚いた拍子に私の胸が上下した。
「…というか、よくそんな奴にポージング決めてきたな」
「それとこれとは別の話だから…とうとう私に取材が来たんだって、本気で思ったんだもん」
「唐子ってそういうとこ、ホントにポジティブだよね…」
「___ねぇ、アサミちゃんは何に怒ってるの?」
画用紙から顔を出した唐子が、私を見つめる。
私の眼鏡越しの視線と唐子の視線が交差した。
私はそれに対して、包み隠さず胸の内を曝け出す。
「世界…かな」
「世界?」
「うん。私を取り巻く世界の全て…って言ったら過言だけど、そんな感じ」
「面白おかしく生きていくには煩わしい事が多すぎるこの世界に____腹が立つ」
唐子を前にすると、こんな胸の内だって恥ずかしげも無く喋れる。
ともすると、それは私が全裸だからかもしれない。
…いや、それは関係ないか。
「私はさ、人生面白おかしく生きていたいって言ったじゃんか」
「うん」
「それって具体的には美味しいもんを食べたり、誰かと楽しく語り合ったり、気に入った瞬間を切り撮った写真を眺めたりだとか、そういう事何だけど…」
「でも、この世の中ってのはそれだけじゃダメなことが多いじゃん。家族のこととか学校のこととか…将来のこととか。でも、それだけならまだいいんだよ。それは人生に必要不可欠な外圧だから。それは煩わしいけれど、自分に必要な事だって…納得できる」
これは、ただ私が唐子を信頼しているってだけの話だ。
きっと、唐子には知っておいてほしいんだろう。
私の事を。
理解っていて、欲しいんだ。
「でも、私がそうやって好きなことをして生きている世界に、ずけずけと上がり込んできて文句をつけてくる奴がいる。私のことを何も知らないくせに、私を否定して馬鹿にしてくる奴がいる」
どうしてそんな奴の、どうでもいいはずの言葉が一々気になってしまうんだろう?
どうしてそれに傷ついて、怒りが身を震わせるんだろう?
それは多分、私が私以外の世界と整合性を保とうとしているからだ。
私の中に確かに根付いている常識や倫理観といったフィルターが、私を大衆から逸脱しないように修正しているんだ。
だから____
「私はそういう時、『恥ずかしい』って思うんだよ。馬鹿にされて貶されて辱められて、苦しくって悔しくって悲しくって辛くって……恥ずかしくって、腹が立つ」
「…」
全身の血の巡りが早くなって、私は自分の体温が上がっていくのを感じた。
何も着ていない状態だと、こういった自分の身体の変化を如実に感じ取れる。
「私は自分の大事な世界を脅かされたくないんだよ。それはいつだって私に『恥』と『怒り』を感じさせるから……特に唐子と屋上で会った頃は荒れてたからね」
あの頃の私はまとわりつく煩わしい声を振り払おうと躍起になってた。
煮えたぎる怒りに振り回されて、それをなんとか消火しようとしていた。
自分の世界を大事にする自分と、外聞を気にする内圧がせめぎ合っていた。
今は違う。
私は怒りを打ち払う剣を手に入れたから。
_____大事な、宝物も。
「でも、私はその怒りに一つの結論を出せたんだよ」
「…そうなの?」
「うん。最近の話だけどね」
それは他ならぬ唐子のお陰だ。
私は怒りを鎮めるんじゃなくて、消化することにした。
飲み干して飲み込んで、自分の一部にすることにした。
唐子みたいに…
怒りすらも、面白おかしき人生の原動力とする為に。
「だから、何に怒ってたのかって言えばやっぱりそういう私を『侵略』してくるナニカに対して怒ってたんだろうね」
「なるほどね…それじゃあ私はいいの?ある意味ではヌードに侵食されていってるわけだけども…」
「これはいいんだよ。だって、モデルになる事を選んだのは私なんだからさ。少なくとも、私は自分の世界にヌードが入ってきたことに満足してるよ」
「…へへ、そっかぁ」
私の答えに、唐子はご機嫌に筆を走らせた。
相変わらず唐子は分かりやすい。
「最近、ようやくそいつらに自分を理解して欲しかったわけじゃなかったんだって悟ったからさ。言わせたい奴には言わせておけばいいんだよ」
一番ダメなのは、その言葉に振り回されて本来の自分を見失うこと。
一番大切なのは、外ばっかり気にしてないで自分の本当に大事なモノを見つめる事だ。
私の人生は私だけのものだ。だから、私は自分に導かれるがままに行動をする。
たった一度の人生を、面白おかしく生きる為に。
それを、一体何を恥じることがあろうか。
「だから今の私は…人生の絶頂ってわけ!」
私は、それがいつまでも続けばいいなって、そう思った。
クーラーの吐き出す冷風が私の火照った身体を冷やしてくれる。
あんなに騒がしかった蝉の声は、もうどこからも聞こえてこない。
こうして私たちの夏休みは、穏やかに終わっていった。
○ △ ○
残暑が厳しい九月の学校は色めき立っていた。
みんなが心待ちにしている秋の祭典、文化祭に向けて。
「七種~後はお前だけだぞ、文化祭の取材先提出してないのぉー」
「先生、私どこも取材しません。というか部活やめます」
「えぇ?!あ、おい…」
「それでは」
私はその雰囲気に逆行するように、部活を辞めた。
顧問に退部届を気分的には叩きつけて、私は淀んだ部室を後にする。
後ろ髪は引かれない。むしろ、肩の荷がおりたような晴れ晴れとした気分だ。
私は錆びた階段を軽快に叩きながら、いつもの屋上へと上がる。
そこでは唐子が『屋上のヴィーナス』の最後の仕上げをしていた。
私はその真剣な唐子の横顔を徐に撮る。
雨上がりの曇り空から差し込む細い光と相まって、実に良い写真だ。
そんな私に気付いた唐子が、相も変わらず頬に絵の具をつけながら顔をあげる。
「お!今日も来たなー盗撮魔め!」
「私のこれは合法だもんねー。…いやぁしかし、これもいよいよ完成ともなると感慨深いものがあるね」
「ホントにね!」
夏休みの試行錯誤のかいあってか、屋上のヴィーナスは様変わりした。
当初からポージングや着彩が大きく変えられていて、それに合わせて特に胸部分がナーフされている。
ヴィーナスのヌードというよりか、もはや私のヌードだ。
まぁベースとなってるモデルが私なんだから当然なんだけども……自分がヴィーナス扱いされているみたいでちょっと気恥ずかしい。
「これで完成だよっ!」
唐子はまるで達磨の目に墨を入れるかのごとく、ヴィーナスの乳首を筆で塗り上げた。
私たちは二人で屋上の梯子を登って、上から作品を確認する。
高い所から見下ろした屋上は、一面まるで海の様だった。
そして、その艶やかな青の中心に顕現したるは薄橙の裸体。
今まさに海からの産まれ出てきたかのような女神の生々しさは、私に『ヴィーナスの誕生』を思わせた。
これは…傑作だ。
一宮唐子が生み出したまごう事なきアートだと、そう思った。
「なんというか…こうやって形になったのを改めて見ると、なんとも言いようのない雰囲気があるね」
「ふっふっふ!ヌードには不思議な力があるからね!良いヌードってのはその全身から魔力が溢れ出すモノなんだよ!」
「あ、私そういうのは間に合ってますんで…」
「ボケじゃなくて真面目な話だよぉ!?」
まぁでも言わんとすることは分からないでもない。
「やっぱりデカめにサイズアップしたのは正解だったね。屋上というキャンパスを余すところなく利用したからこその大迫力!周りの景色と相まって、まさにこれぞ総合芸術って感じ!」
「へへへ…んも~アサミちゃんほめ過ぎだよ~!」
「んじゃ、さっそく記念撮影でもしますかね」
「うん!」
私達はヴィーナスの上に大の字になった。
私たちを見下ろすカメラが、まるで祝福するみたいに歓声を上げた。
「…私さ、ここにヌードを描かせてもらったけど、本当はこの絵を誰かに見せるつもりはなかったんだぁ」
「え、そうなん?」
「うん。でもアサミちゃんが手伝ってくれて、色々と思うところがありまして……私、顧問の先生に直談判したの!」
「ふむ?」
「この『屋上のヴィーナス』を…私達の作品を!文化祭で展示しまっす!」
「お、おおおお!?」
唐子は薄い胸を張って堂々とそう宣言した。
それを聞いた私に最初思い浮かんだのは、喜びとかよりも唐子への心配だった。
「まぁ学内限定の一日目だけだけどね!」
「…反対、されなかった?」
「うん。先生この絵を見に来てくれてさ。背中押してくれたんだぁ。是非とも完成させなさいって!」
「そっか…そっかぁ」
「良かったね、唐子」
別に、唐子の絵が誰にも評価されなくたって、私は唐子がヌードを描き続ける限り力になるつもりだった。
でも…唐子の努力が誰かに認められたというのなら…こんなに嬉しいことはない。
「やっぱり皆にも見て欲しいって、そう思えたの。屋上のヴィーナスは…私の現時点での最高到達点だから!」
「このヴィーナスの美しさを、ヌードの持つ素晴らしさを皆にも見せてあげたい。伝えてあげたい!だって、私は_____
未来の『天才』ヌード・アーティスト!一宮唐子だからね!」
唐子はそう言って、いつもみたいに笑うのだった。
「それでアサミちゃんとこは文化祭何するの?写真展示とか?」
私たちは茶色の小瓶を突き合わせて乾杯をした。
屋上の風に当たりながら飲むオロナミンCは、甘い炭酸が弾けてそれはそれは格別の一杯だ。
「そだねー。写真部は今まで撮った写真の展示とか、後は文化祭の各所の取材らしいよ。ま、私は部活辞めたから関係ないんだけどね」
「へぇーそうなんだ。アサミちゃん部活辞めたんだぁ……ってええぇ?!」
「おっ良いリアクションするね」
唐子は絵に描いたようなノリでこっちに振り向いてくれる。
私はそれをすかさずパシャリ。驚き顔いただきだ。
「どゆことどゆこと?!なんで急に!?」
「前々から考えてはいたんだよね。部活と自分のやりたい事との齟齬っていうか?そんな感じ」
「ええぇ?…あまりに突然の告白すぎる…」
「ま、つまり今の私はフリーのカメラマンだからさ!唐子の展示の準備とか手伝えるってこと!」
「それは全くもってありがとうございますだけれど…」
看板とか受付とか、考えることはいっぱいだ。
絵は屋上の床に描かれてるわけだし、スリッパとかに履き替えてもらった方がいいかもしれない。
エナジードリンクのおかげか、はたまたの唐子の前向きさに当てられたかは分かんないけれど、とにかく今の私は活力に満ちていた。
「第四高校ヌード制作部!文化祭目指して頑張るぞォー!!」
「いつの間にか独立してるっ!?」
こうして私たちの文化祭が始まった。
どんな結果になろうとも、これもいい思い出になる。
私はなんとなくだけど、そう思った。
○ ▽ ○
「____あれ?唐子いないじゃん」
私が昼メシの買い出しから戻ると、階段前のパイプ椅子には誰も座っていなかった。
便所にでも行ってるのかと首をかしげて……私の頭上から誰かの話声が聞こえてくる。
どうやら、ようやくヴィーナスの鑑賞者が現れたらしい。
「さてはて、どんな反応をされてることやら…」
間違いなくドン引きされてるとは思うけれど、わざわざ看板にも『屋上ヌード・アート』と銘打っているんだ。
案外、ヌードを理解できる奴が見に来てくれているかもしれない。
もしくはエロ目当ての猿どもか……っと、いけないいけない。お猿さんだって大切なお客様だ。表面上は丁重にもてなさないと、こっちの品位まで落ちてしまいかねない。
アートは平等なのだ。良くも悪くも。
ま、ともすれば野生の猿を芸術人間に覚醒させるだけのパワーが唐子のヌードにあるかもしれないし。
「……流石にそれはないかぁ」
私は益体もない事を考えながら階段を登っていく。
正直なところ、私は今回のチャレンジは良い結果にならないと、そう踏んでいた。
唐子の歩んでいる道はセンシティブだ。そう漫画の様に、みんなから拍手喝采とはならないだろう。
だけれど、それでもいいと最近の私はそう思える様になった。……当の唐子がどうかわかんないけど。
ガチで落ち込んでたら派手に慰めてやるか。
他人の評価を第一に考えて欲しくない。面白おかしく笑いながら、楽しくやって行きたい。
…なんというか、唐子にもそう在って欲しいと思うのは、私の押し付けなんだろうなぁ。
塗装しなおした色とりどりの螺旋階段を踏みつけて、私は屋上に向かう。
「…なんかドキドキしてきたな」
作品を公表することに対して、こんなにも緊張するのは初めての経験かもしれない。
とにかく、私は今回のヌード作品を公表することに対して、後ろ指刺される事を想定している。
そして、それを受け止めるだけの覚悟はしてきたつもりだ。
___つもりだった。
「一宮さんまだそんなことやってんの?キモ〜」
その声を聴いた瞬間、私の肌が粟立った。
私はこの、人を見下したような雰囲気を孕んだ声色の人間を知っている。
その人物を中心として、その周りでクスクスと嘲笑をまき散らす取り巻きどもを知っている。
「中学の時にわたし言ってあげたよねぇ。そういうのキショイから止めときなってさぁ」
「ちょっと愛菜言い過ぎ~!この子がかわいそうじゃ~ん」
「俺知ってるぜ!こういうのをヌードって言うんだろ〜?」
「岡崎、五月蝿い」
「ひでぇ!」
「ハハハ、そもそも看板に書いてあっただろ、それ」
唐子の目の前に、多田愛菜が立っていた。
それと、多田以外にも男が二人と女が二人。
いつもの多田軍団が、雁首を揃えて唐子を取り囲んでいた。
私はそれを見て、反射的に階段の影に隠れた。
二人は知り合い…ってか同中だったのかよ。初耳だぞ、それ。
「裸を描きたいとかさぁ、どういう思考回路してたらそんな気色の悪いことを思いつくわけ?」
「俺知ってるぜ~?こういう奴をレズビアンって言うんだろ!」
「違うよ…そんなんじゃない…!」
「女の裸描いて喜んでる奴がレズじゃなくて何だっていうの?それとも一宮さんってぇ___」
「自分のハダカを見せびらかしたい欲求でもあるんじゃないのぉ~?」
ひときわ大きな笑いが私の耳を劈いた。
低俗だ。あまりにも。
こいつらはこうやって人を見下し嘲笑ってコミュニケーションを取っている。
人をこき下ろすことで、快感と充足感を得ているんだ。
自分と同じ人間だとは思いたくない程に下劣で悪辣な存在。
聞いているこっちまで嫌な気分になる。
「ねぇねぇ~、こんなわいせつ物を白昼堂々と文化祭に陳列してもいいと本気で思ってる?」
「ちゃ、ちゃんと先生の許可は取ってあるよ!」
「モラルの問題だよモラルのさぁ。こんなもんウキウキで見せびらかして恥ずかしくないわけ?」
『こんなもの見せびらかして恥ずかしくないのぉ?』
同じ人物から放たれた同じニュアンスの同じような言葉。
それが私の脳裏で再生されてリフレインする。
それは私にとって最も忌まわしい記憶の一端。
自分に言われた訳じゃないのに、私は何故だか恥ずかしさを感じた。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい_____
頭に血が上って、腹の底でナニカが渦巻いて、胃がむかむかする。
背筋を冷や汗が流れていった。
言いようのない感情とやりようのない激情が、私の心情を乱雑に踏み荒らす。
身に余りかねた気持ちが、私の身体を震えさせ、それに耐え兼ねた心臓が悲鳴を上げている気がした。
唐子が、馬鹿にされている。
私はその事実に、恥ずかしさと怒りの両方を感じてるんだ。
…どうして?
「これはアートだから!前にも言ったけど、私はヌードを見せつけてるわけじゃなくて、ちゃんとした手順でちゃんとした場所に展示してるだけだよ!」
「そりゃそっちの言い分でしょ。こっちは見たくもない裸を見せつけられて気分を害してるわけ!お願いだから日の当たる世界に出てこないでくんない?」
「そういう性癖は影でシコシコ独りでやってろよ!」
二人のやりとりは尚も続く。
私は居ても立っても居られなくなって、今すぐこの階段から飛び降りていきたかった。
でも、それとは真逆の感情が私をこの場所に縫い付けている。
唐子なら…もしかしたら。
あのいけ好かない多田の奴を、言い負かしてくれるかもしれない。
ぶっ飛んだヌードトークで、あの薄気味悪い嘲笑を吹き飛ばしてしてくれるかもしれない。
唐子なら…一宮唐子なら。
私の『天才』ヌード・アーティストなら!
泰然で超然と自然に、あんな奴らを。
きっと笑い飛ばしてくれるって、そう思った。
私の嫌な記憶を、あの時みたいに塗りつぶしてくれるって、そう思って。
私はそこから動けなくなった。
後ろにも……前にも。
「性癖って…ヌードはそんなんじゃない!」
「はーぁ?こんなの描いてるなんてどう考えても変態じゃんか!」
クスクスと、ゲラゲラと。
侮蔑を孕んだ嘲笑が私の耳を劈いた。
その音波の歪みに引き摺られるように音が遠のいていって世界が歪む。心が軋む。頭が沸騰する。
怒りと恥ずかしさがぐるぐると渦巻いて、腹の底でぶつかった。
どうして私たちがこんなことを言われなくちゃならないんだろう。
批判されるかもしれないと思ってた。否定されるだろうって思ってた!
でも、馬鹿にされて、笑い者にされる謂れはどこにもないはずだ!
ねぇ唐子____いつも私にしてるみたいに、そいつらに語って聞かせてやってよ。
あんたの熱いオモイを。
ヌードにかける情熱で、そんな奴らねじ伏せてよ。
私は縋る様に唐子を見て_____
「……」
唐子は無言で_____笑った。
初めて見るような顔で、諦めた様に、曖昧に。
唐子が…笑った。
今にも泣いてしまいそうなほど、辛そうに。
ーーーーーーッ!
その顔を見た瞬間、私の天秤が地面に振り切った。
常識や倫理、恥と外聞を乗せた重たい皿を、天高く吹き飛ばすように。
お前は何をやってるんだ?七種麻実。
こんな所で一人でうずくまって。
なんで私たちがこんなオモイをしなくちゃならないんだ?
どうして、人の宝箱の中身をずけずけと覗き込んできた上に…
大事にしている宝物を、馬鹿にされなくっちゃならないんだッ!!!
『ねぇ、アサミちゃんは何に怒ってるの?』
どいつもこいつもッ!
こいつらは私達の世界を踏み荒らす薄汚い侵略者だ。
馬鹿にされて恥ずかしい!?恥ずかしいだって?!何がだ!!
こんなカスみたいな奴らに馬鹿にされたことがか?!
二人して数ヶ月もかけて誰にも評価されないヌードを作ったことがか!?
唐子と_____友達なことが?
恥ずかしいことなわけがない。
一ミリだって私たちに恥じる部分は無い。
今ここで一番恥ずかしい愚か者は……
友達がバカにされて悲しんでるのに!見て見ぬふりして縮こまってる自分だろうがッ!!
私は立ち上がる。
あいつらと相対する為に。唐子を助けるために。
私の中にあった、邪魔くさい天秤を蹴っ飛ばして。
私は自分の存在をこの世に轟かすように、螺旋階段を思いっきり踏みつけた。
「唐子どしたー?なんかトラブってる?」
「あれー?七種さんじゃん。なんでここにいんの?」
「あ、アサミちゃん……」
私は声をかけてきた多田さんをスルーして唐子に歩み寄る。
私の眼鏡の端を、顔を顰めた多田さんが通り抜けてゆく。
何故か、唐子は申し訳なさそうな顔をして私を見た。
どうしてそんな顔をするんだろう。謝りたいのはこっちだってのに……
私は唐子を背中に庇って、多田軍団の正面に仁王立つ。
「やっほー多田さんたち。私たちのヌードアート見に来てくれたんだ。いい出来でしょ?」
「私たちぃ…?部活に顔出さないで何をしてるのかと思えば…」
「私、ヌードに目覚めちゃってさぁ。唐子とヌード制作していくことにしたんだよねー」
「えっ…アサミちゃん…?」
「オイオイ七種まじかよ!カメラマンから一転してヌーディストか!」
「七種さんって結構ロックだったんだ」
「ハハハ」
さっきまで隠れて聞いてたことなんておくびにも出さずに、私は努めて冷静を装った。
その発言に、ニタリと多田が私をロックオンする。
何も知らない獲物を見つけては厭らしく舌なめずり。
こいつはこうやってギリギリのラインを攻めながら、人を見下すことで自分の体裁を保っている哀れな人間なんだ。
「ちょっとやめてよねぇ~。これ以上私の知り合いに変態が増えたら困るんですけどぉ」
「変態ぃ?どういうこと?」
「いやいやいや…だってそうでしょ?だってヌードなんて…ねぇーえ?」
「まともじゃないでしょ!」
「何言ってるのかよくわかんないな。ヌードだって立派な芸術分野じゃんか。まともじゃないなんて…私はそうは思わないけど?」
「え?え?なになにその感じ?もしかしてだけど…あんたらってそういう関係なのぉ!?」
「え?だとしたらまじヤバなんですけどぉ!!」
「うひょー!そうなのか七種!?お互いの裸を見せ合ってるふかぁーい関係なのかぁ〜??」
多田の的外れな発言に、周囲が色めき立つ。
全くどいつもこいつも……頭の中にそれしかないのか?万年発情期かよ。
「そうだけど?ま、見せてるのは私だけだけどね」
「…えっ?」
「私と唐子はモデルと絵描き。だから_____
この絵のモデル、私だもん」
私は多田の目を見て、ハッキリとそう言った。
青いカラコンの入った瞳がいびつに歪む。
「まーじでぇ!?七種さん脱いじゃったのぉ?」
「まてまて、てことは…これって七種の裸ってことかぁ!?」
「七種さんにそんな度胸があったなんて、私見直した」
「アッハハ!岡崎ぃ~あんたも七種さんにヌードモデル頼み込んだらぁ?念願かなって女の子の裸を拝めるかもよぉ」
「七種さん!是非ともお願いします!」
多田軍団は私の告白にぎゃはぎゃはと下卑た笑いで応じてくる。
「岡崎はヤだね。だって写真に下心しかないじゃん。色んなとこ伸ばしながら撮ってきそうだし」
私はそれに冷や水をぶっかけた。
さぁ___ケンカの始まりだ。
「ちょっ…ヒデーな七種ぇ!そんなことないって!俺の写真は熱意100%だから!」
「おいおい言われてんぞ岡崎ぃー!」
私の発言にエロ猿が顔を赤くする。
表面上はおちゃらけてるけど、内心言い返されて苛立っているのが丸わかりだ。
こいつは自分は人を小バカにするくせに、自分が小バカにされるのは嫌な道化師以下の存在だ。
それを率いてる王の程度も知れるというもの。
「__まぁ、多田さんになら撮らせてあげてもいいけどね?」
「は?なんでわたし?」
「あれ!?唐子の作品見に来てくれたぐらいだから、てっきり多田さんもヌードに興味津々なのかと思ってた!」
「はぁ!?なにそれ意味わかんないし!誰がこんなキモイもんに興味あるかッ!」
そんなお山の大将は私の挑発に威勢よく食いついてきた。
多田は普段の余裕は何処へやら、声を荒げて口が悪くなっている。
反撃されるなんて微塵も思っていなかったんだろう。
いつも、そういう奴しか相手にしてこなかったから。
昔の、私みたいな。
「お前らみてーな『水モン』が女を売り物にしてるから私らの品位が落ちてるんだよ!!異常者のくせしてまともな感性の私たちに迷惑かけないでくれるぅ??」
「それは世の中の色んな人に対してリスペクトに欠けた発言じゃないか?そもそも、こちとら他ならない『女性』が持つ素晴らしさの一端をアートとして表現しているわけなんだが?そういう考え方と態度が一番自分らの品位を落としてるって思わないのかね……あ!それともあれか?」
「パパがヌードに夢中になると『お小遣い』が減っちゃうからムキになってるのか?」
私のその言葉に、ここに来て初めて多田の顔色が変わる。
その色白な肌が、怒りによって朱に染まった。
「親はかんけーねーだろーがッ!!!」
そっちの意味で言ったんじゃないんだけど……そこが引っかかるのか。
なんかあんのか?こいつの身の上話とかどうでもいいけど。
多田のボルテージにつられて、私のギアも一段階上がる。
「というか、テメーで殴りかかってきた癖に一丁前に傷ついてんじゃねーよ。殴り返されて泣きべそかくくらいなら最初から突っかかってくんなよな」
「はぁ?!なに!?喧嘩売ってんの!?」
「売られたケンカを買ってんだよこっちはよォ!」
ここで引くわけにはいかない。
言い負けるわけにもいかない!
友達を、馬鹿にされたままで!
こいつの驕り高ぶった鼻っ柱をへし折って!二度と唐子をバカにできないくらいにけちょんけちょんにするまでは!!!
「先生が展示を認めてる以上これはアートなんだよ。それをお前らはわざわざ見に来て不健全だのなんだの叫んでるわけだ。自分で美術館に足を運んどいて、場もわきまえずに騒いでる無法者ってわけ。自分で自分はおバカですって喧伝してるようなもんだよねそれ」
「あ!でもそもそもお前らが大人しく鑑賞するなんて無理な話だったかぁ!だって裸を見たらお猿さんみたいにすぐ興奮しちゃってアート鑑賞どころじゃ無くなるもんな!」
「はぁ!?ち、ちげーし!」
「お前も一宮も恥ずかしーんだよ!何自分に酔っちゃってるわけぇ!?」
「カラダだけが頼みのブスがイキがってんじゃねーよ」
「安心しなよ島根さん。ヌードならどんな身体でもアートに昇華してくれるからさ!胸のコンプレックスなんか気にならなくなるよ?あと鳥取さんも唐子に描いてもらったらどう?お姫様プレイに我慢出来なかった元カレがアートに感動して帰ってきてくれるかも!」
「な、ん……お前ぇ!!」
鳥取と島根も顔を真っ赤にしながら、今にも私に手が出そうになっている。
いつもデカい声で猥談してるからこうなるんだよ。
こちとら知りたくもねぇおめーらの情事を余すところなく聞かされてんだ。いくらでも罵倒に引っ張ってこれるぞ。
岡崎は言わずもがな、鳥取と島根もどうとでもなる。
小川はさっきからキョロキョロキョロキョロしていて一言も喋ってないから論外。と、なれば…
「アングラ陰キャのくせに態度がでかいね。ナメクジみてーに石の下でコソコソねちょねちょヤっとけよお前らは!」
最後に残るはやっぱり多田愛菜だ。
「陰キャ陽キャでしか人間を分類できないの?やっぱ多田さんたちにはアートはまだ早かったみたいだね。頭が単純すぎるもん。」
「は?意味わかんない。それお前らのキモさとなんか関係あるわけ?」
「まさにそこが話の肝なんだけどね。ゲラウヒアゴーホーム。回れ右して今すぐ檻に帰ったほうがいいよ。飼育員さんが探してるだろうし」
「ハッ!図体だけじゃなくてなんか気もデカくなってるみたいだけど、どうせアートとか体のいいお為ごかしでしょ?そうやって自分の鬱屈した欲望を石の下でしか発散するしかできないもんねぇ?」
「あれ?急に自己紹介?自分より下に人がいないと自我を保てないプルプルプライドだもんね。下ばっか見すぎて赤べこになっちゃうんじゃないの?振動で崩れちゃわないか心配だよ」
「お前こそ家に引き篭もってぷるぷるしながら勝手に全裸になってろよ!服を脱ぐことでしか自分を表現出来ないビビりが!なーにがアートだよアホくさ!芸術語るなら今すぐ私らにその素晴らしいヌードとやらを直接見せてみろよ!」
「ほらぬーげ!ぬーげ!脱いでみろよ!どうせ出来やしないくせにさ!あー恥ずかっしー!結局お前も一宮も王道を歩けない爪弾きモンのカスってこと!アッハハハハハ!」
多田は勝ち誇ったように高笑いした。
それを見ていた取り巻きたちも水を得たようにニヤニヤとしだす。
こいつらはどこまでも私たちを見下している。
だから私が出来やしないと思い込んでるんだ。
今の私を舐めるなよ。
余計な柵を脱ぎ捨てたネイキッドな私に、怖いものなんてないのだから!
ヌードの力を、舐めるな!
「……言ったな?」
私は激情ままにブラウスのボタンを引きちぎった。
「ハハハは___えっ?」
そして、残った上着を放り投げる。
私はカメラを残してトップレス状態になった。
公衆の面前に、私のありのままの乳房が晒される。
正直、何か策があったわけじゃなかった。
でも私は口だけの女になりたくなかったし、それに唐子の言葉を信じていた。
『ヌードには不思議な力があるからね!』
私は、それに賭けた。
「ヌードワナビーのお前らには上だけで十分だろ?ほら見せてやったぞ。どうした?これが見たかったんじゃないのか?」
「おい岡崎!ほらよく見ろよ。オメーの大好きなおっぱいだぞ~」
私が両手で胸を揺らしてやっても、男どもは目をそらしたままだ。
普段はもっとえげつないエロトークしてるくせに、まともに見ることすらできてねーじゃねーか。度胸が無いのはどっちだよ。
「いまからここはヌード実演場だ!私を好きなだけ撮ってみろよ!」
私が煽ったその瞬間、まるで神さまが見ていてくれたかの様に、私に奇跡が舞い降りた。
空より天使のラッパがかき鳴らされる。
私たちの屋上に、霹靂が轟いた。
「きゃ!?」
雨は一滴も降ってない。ただ、私達の頭上を覆う黒い雷雲が、ゴロゴロをうなりを上げている。
いつもよりもはるかに近い雷の気配に多田軍団が怯えた表情をする中で、私と唐子だけは別のところを見ていた。
刹那、唐子と目が合う。さっきまでの不安そうな顔は消えていない。
だけれど、その表情は確かに私と同じことを考えていた。
私はいつも、唐子を通して私を見ていた。
唐子が描き出したデッサンや模写を通して、唐子の世界にいる自分を見ていた。
裸の私を見つめる唐子の瞳の奥には確かに私が居て、ヌードモデルを繰り返す内に、『それ』をどうすればいいのかが段々わかってきた。
それはカメラを使って写真を撮るのと同じ事だった。今シャッターを切ればどんな瞬間が撮れるかなんてファインダーを見なくとも分かるように。
私は唐子を通して、自分のヌードを表現した。
その時、確かに私たちの世界はヌードを通して一つになっていたんだ。
今、この瞬間みたいに_____
電撃が走ったみたいに、私たちの脳裏に一つの画が思い浮かんだ。
「ちゃんと焼き付けろよッ!!!」
私は叫んで屋上の梯子を飛び登る。
急げ、急げ急げ急げ_____
激しく胸が暴れるのを無視して私は天上へ辿り着く。
「私がここに居るぞッッッッ!」
私は荒ぶる感情のままに空へ叫んだ。
私が屋上てっぺんでポーズをキメたのと同時に、曇天の空に雷鳴が迸って、稲光が私の肌を鋭くライティングした。
完璧なタイミング、最高の角度、この先二度と無いだろうシチュエーション。
私たちはこの時この瞬間だけ…天をも味方につけたのだ。
_____ああ、雨も降ってたらもっと良かったのになぁ。
カシャリ、と
「____なんで今のを誰も撮ってないんだよ…」
それは私のカメラが発した落胆の声だった。
私は梯子を飛び降りて多田の眼前に今撮った写真を見せつける。
「ほら見ろよ!お前らの間抜け面!良く撮れてるだろ!?____それで?さっきの神がかってた私のヌードを撮った奴は!?誰もいねーの?!」
私はさっきまでとは違う怒りでわなわなしてきた。
「マジかよ!これじゃ私が脱いだ意味ないじゃん!今の瞬間にシャッター切れないとかお前ら何のためにカメラぶら下げてんだって話!」
今はもう、喧嘩とか勝ち負けとかどうでもよかった。
ただただ、今の光景を写真で切り撮れなかったことが口惜しい。
「…お前頭イカれてんじゃねーの!?」
多田はそれだけ言い捨てると、スリッパを脱ぎ捨てながらドタバタと階段を走り降りていった。
「あっ!ちょっと愛菜待ってよー!」
「おい、俺たちも行こうぜ…」
多田軍団も蜘蛛の子を散らす様にその後を追う。
「一昨日も来んじゃねーぞーーッ!」
私はその背中に追い打ちを吐き捨てた。
正直、勢い任せにいらんでいい事まで言っちゃった気がするけど……まぁいいか。
ここに、私たちの戦いは終息した。
「…ったく、今の撮ってないとかあり得ないよね。アイツら何のためにカメラやってんだか」
「大丈夫だよアサミちゃん。私はちゃんと見てたから____この目に、アサミちゃんのヌードを焼き付けたから」
「…それならいいや」
唐子が着ていたカーディガンを私にかけてくれる。
ブラウスのボタンを完全に引きちぎっちゃったから、正直ありがたい。
でも、そんなことよりも私にはまずやるべきことがあった。
「唐子ゴメン!」
私は唐子に深々と頭を下げた。
ノーブラどころかオープンに晒されている私の胸がかすかに暴れたけれど、この謝意に比べれば些細なことだ。
「え?え!?なんで!?」
「…私、二人の話を隠れて聞いてたんだよ。唐子が多田にからまれてるってのに私…隠れてた」
「私さぁ…唐子が馬鹿にされてるのに、恥ずかしいって思っちゃった!早く唐子が何とかしてくれって…そう思って…」
「多田たちの前に、出ていけなかったんだよ…」
「そ、そんなこと…そんなことないよっ!」
私の謝罪を唐子は否定した。
…泣きそうな顔をしながら。
「だってアサミちゃんは助けに来てくれたじゃんか!私はっ!……私は、アサミちゃんみたいに立ち向かえなかった…」
「アサミちゃんが怒ってくれてる時も!私は隠れてた!早く終わってくれないかなって…やり過ごそうとしてた!」
「アサミちゃんが……私のために怒ってくれてたのに……」
「唐子…」
「ごめん…ごめんね、アサミちゃん……」
初めてみる唐子の歪んだ表情。
たぶん、私も酷い顔をしてるんだと思う。
私は胸元が出るのも厭わずに大きく腕を開く。
そして、私たちはどちらともなく抱き合った。
お互いの謝罪への答えは、それだけで十分だった。
曝け出された私の頂点が少し乱雑に擦れたけれど、そんなことは些細なことだ。
「…アサミちゃん、服着ないと風邪引いちゃうよ?」
「私なら大丈夫だよ。ほら!今の私めっちゃカッカしてるからさ____あらっ?」
「ちょっ!?アサミちゃーん!!??」
唐子に元気ポーズでアピールをしてたら、私の鼻から唐突に血が流れ落ちた。
あー、ちょっと頭に血が昇りすぎたか…
唐子にハンカチを当てられながら、私は天を仰ぐ。
「あ!上向いちゃダメなんだよ!」
ぶ厚い雲が雨も降らさずにどこか遠くへ流れていくのを、私はぼんやりと眺めた。
結局、私たちのヌード・アートを見に来たのはこの多田軍団だけだった。
曇り空が徐々に晴れ渡っていくのと同じくして、私たちの文化祭は静かに終わっていったのだった。




