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本の紹介23『ハイネ詩集』 ハイネ/著

作者: ムクダム
掲載日:2025/11/15

愛と情念を歌い上げた力強い言葉の奔流

 海外の詩人の作品を読むと、言葉選びや表現に普段馴染みのない面白さを感じます。言語の違いはものの考え方や表現の仕方にも影響しているということでしょうか。ちょっと変わった言葉を拾いたい、意表を突いたものの考え方に触れて脳に刺激を与えたいと思ったら海外の詩集をめくって見ると良いかもしれません。自分が属する国の言語と別の言語で生活している人の言葉や思考は、それだけで少し特別なのものに感じます。

 もしも地球外生命体が作った詩があればぜひ読んでみたいものです。彼らが言語というものを使っている保証はありませんが。

 ハイネは情熱的な言葉の表現に長けているなと感じました。情熱というと、前向きで明るいものをイメージしがちですが、ハイネの場合は結構後ろ向きというか、恨み節のような表現にエネルギーを注いでいる印象があります。自分の愛が成就しないことを力強く、それでいて巧みな言葉で投げかけてくるところに好感を持ちました。情景描写も素敵で、特に夜が持つ冷たさや涼やかさの表現が秀逸です。

 勝手な印象ですが、ハイネは現実の苦さや苦しさを身に染みて理解した上でその現実に立ち向かっていくために、現実の姿をある時は朗らかに、ある時は皮肉を交えて豊かな語彙で表現しているように感じました。過酷な現実を生き抜くためには自分の思いや信念を言葉にするほかなかったように思います。甘美な歌にも切実さが通底していることを感じ、それが読む者の心に迫力を持って迫ってくるようです。

 世の中には言葉を巧みに操る人、口が上手い人が溢れています。本屋に立ち寄ると、よくもこれだけの数の本を日々生み出すことができるものだと驚くと同時に、呆れた気持ちになることがあります。商業ベースで本が出回るまでには多くの人の努力と時間が費やされているはずで、それが休みなく続けられていることに驚くのですが、同時にキャッチーなフレーズや奇抜なストーリーで人々の歓心を買う技術もどんどん編み出されているようで、ちょっと引いてしまうのですね。

 どんな本が売れているか、人々の関心がどこにあるかを示すデータベースは日々整備が進み、AIの活用でその分析もより深度を持つようになると思います。いずれAIが作り出した作品や流行が社会を覆い尽くすことになるかも知れません(もうなっているかもですが)。

 流行に沿ったものを作る、または流行そのものを作り出すというフィールドにおいてはAIの躍進が予想されます。AIは冷たく、効率的に物事を処理することができるからです。冷たいというのは必ずしも悪い意味ではありません。その冷たさが求められる分野や、それに救われる人も多くいるはずです。効率的な処理を行うという役目については人間はAIにその椅子を譲ることになります。では、AIが人間にとって替わることができないもの、人間にあってAIにないものは何かというと、それが情念や切実な気持ちだと考えます。生きることへの屈折した気持ちや切実さというものは効率的に動くことをモットーとするAIには馴染まないものであり、生物に特有のものだと思うのです。

 その情念、切実さがストレートに表現されているのが詩であり、ハイネの詩からは特に強くそれらを受け取ることができると感じます。人間が存在する意義は何かと考えるとき、ちょっと立ち止まって詩と向き合って見るのも一興ではないでしょうか。終わり

 

 

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― 新着の感想 ―
情念、怨念などの感情ですか……。 ハイネの詩集を読んでみたくなりました。
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