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魔断の剣11 人妖の罠  作者: 46(shiro)
第1章 終焉たる開幕

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第8回

 アルフレートの2通目の返答。


『無茶をおっしゃられては困ります。彼女の名が出立予定者名簿に記されていないのはご存知でしょう。初代の者たちが定めた規定によれば、所属者の選別は名簿内に限ってのこと。彼女はあてはまりません』


 以後、数度に渡る手紙のやりとりをしながら執拗に食い下がったのは、大国のフライアル、カルサークス、シャザム、エライン、イシャス、アルザ、マイカ。そして母親の血による優先権とルビアに受けた災厄を矛としてかざして圧力をかけてくるミスティアと、財政的に余裕のある国40あまりだった。


 養育費用の値が今までにない、法外なものになることを懸念して早々に手を引いた国もいて、約半分に減ったとはいえ、やはり途方もない数である。むしろ一癖も二癖もある厄介なものばかり残ったというべきだろう。これではたとえどの国に彼女の所属が決まったとしても、国々の間に禍根を残すことになる。


 4カ月を経、セオドアの体から完全に瘴気が抜け、傷も治癒して以前どおりの生活ができる状態まできてはそれを理由にもできなくなり、困りかけたときにあの騒ぎが起きたのだ。


 彼女との感応を望む声。運営に支障をきたすほどの動きは、各国より訪れた使者への影響もさぞかし大きかったことだろう。


『ご覧のとおりです。彼女は魔断を必要としながら手にしていない者、候補生なのです』


 使者の報告付きのその返書はさぞかし効果があったに違いない。騒ぎの沈静を理由に結論を遅らせることもできて、これ幸いと胸をさすったものだ。


 けれどうやむやにはできない一件であるのは違いない。なにも、彼女をどこにもやりたくないと思っているわけではないのだから。

 剣師はただでさえ少ない存在。こんなにも彼女を熱望するのは、ひとえに自国民を殺されたくないからだ。各国の過剰な要求も理解できる。まして当人であるセオドアのことを思えば、1日も早く剣師として立派に出立させてやりたい。


 当初は、おりを見てだれかが訪ねてくると読んでいた。


 セオドアは魔導杖と感応した。魔導杖の柄頭には誓血石が嵌まっている。すなわち、魔導杖の発する喚び声に共鳴した魔断はちゃんと実在しているわけで、ならば操主であるセオドアの身を気遣い、けがを気にしてやってくるだろうと踏んでいたのだが。


 しかし予想に反してセオドアに面会を申し込んできたのは各国の使者ばかりで――傷に障るとして丁重に、がんとして断ったが――それらしい魔断は現れなかった。


 いいかげん、5カ月も経てはその望みも薄い。

 とすれば、何が最善の策となるか。

 考え抜いた末、アルフレートは彼女を封師にという案を採択したのである。


「それも、幻聖宮に所属させることがいいと、判断されたんだ。多少の非難を覚悟でね。

 きみは封師としてザーハに配属され、あの魔導杖は宮の奥深くに安置される」

「それでおさまるんでしょうか?」

「言ったろう? 覚悟しているよ、みんな。

 それに、どの国にきみを所属させても結局非難がくるのは間違いないんだ。どの国にも渡さない、という方法が一番なのは分かるよね。

 反発はあってもあとを引くほどのものではないだろうし、このことで国同士がいがみ合い、禍根を生むことこそ避けるべきだ」


 もちろん魔導杖安置の件は表向きだけだよ。使者たちが帰国したら、責任もってザーハへ送ってあげる。感応している以上、きみが剣師になる可能性を消す権利はだれにもないんだからね。いつでも、きみはそれを主張していいんだ。


 執務室へ戻る間際、蒼駕は、この不安に揺れる瞳ですがりつかんばかりに自分を見る、大切な大切な預かり子に、そう優しく説いてきかせた。


 政務で忙しい中、大切な時間を割かせてしまったというのに別段急ぐふうもなく、歩いていく。

 夕方の強い赤光を受け、まるで光の中に溶けこんでゆくような背中を見送りながら、セオドアは、たとえどちらを選んだとしても、もうあのひとの側にはいられないのだという恐怖と、闘っていた……。

ここまでご読了いただき、ありがとうございました。


魔断の立候補が殺到とか、おかしいと思われた方もいらっしゃったのでは?

こういうことが起きていたので、使者の目にとまるように魔断たちがわざと騒動を画策したのでしょうね。

(でもたぶんセオドアは、それとなく蒼駕が教えてくれたことに気付いていないと思います……)

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