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ダンジョンキラー  作者: 佐々木尽左
第7章 高校生活に慣れてきた頃

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202/211

超美人の外国人

 12月に入って一段と冷えるようになった昨今だが、祥吾の起床時間は変わらない。布団から出るのが惜しくなる季節になりつつあるものの、そこは体を無理矢理布団から引き剥がしている。


 期末試験直前の週末もそれは変わらない。起きてから筋力トレーニングをして体を温めると朝食を済ませて試験勉強を始める。中間試験のときとは違って教科の数が多いのが難点だ。それでいて今回の週末は2日間しかない。なかなか大変である。


 そんな勉強漬けになっても祥吾は適度に息抜きをしていた。さすがに起きてから寝るまで最低限の生活以外はすべて勉強というわけにはいかない。人間の集中力は無限に続かないのである。


 普段ならばこの息抜きの時間にウェブ小説を読むのだが、試験直前は封印していた。下手に新しい連載ものを見つけて際限なく見てしまうと危険だからである。あれは時間が溶けるときはいくらでも消えてしまうのだ。


 ということで、今の祥吾はウェブサイトをやニュースサイトを巡回していた。興味を引かれたコンテンツは深掘りするものの、そうでなければ斜め読みして終わりである。


 最初は色々なところをとりとめもなく眺めていた祥吾だったが、ダンジョン関連のコンテンツを見てしまいがちなのは仕方ないところだ。そして、最初は真面目なところ回っていたが、次第に怪しい噂を扱うところに目が行くのも自然なことだろう。


 夕方、本日何度目かの休憩のときに祥吾はとある個人ブログを見つけて読んでいた。探索者が個人的なことを記載しているウェブサイトだ。毎回の探索について特定できない程度にぼかして書いている。


 その個人ブログの最新話にとある撮影隊が新宿ダンジョンに入っていったとの記載があった。しかもその撮影隊には幸山千紗がいたと記載されている。これだけなら単に仕事中の芸能人を見つけたという話なのだが、そこにその芸能人以上に美人の外国人がいたと書かれていたのだ。


 スマートフォンでその話を読んだ祥吾の顔は引きつった。クリュスのことであろうからだ。幸山千紗以外に特定できることは何も書かれていなかったが相当目を引いたらしい。あれだけ人がいたのだからこういうこともあるだろうことは予想していたが、実際にそれを目の当たりにすると色々と思うところが湧き上がってくる。


 気になった祥吾は休憩の度に幸山千紗と撮影隊について調べてみた。すると何件か引っかかる。名前まではさすがに記述されていないが、複数のサイトに記載されているのを見ると余程目立っていたらしいことを改めて理解した。


 なぜそんなに目立ったのかと祥吾が更に調べてみると、先日新宿ダンジョンの守護者の部屋から転移で正面玄関(エントランス)に戻った時のことがすぐに出てくる。しかも何十件もだ。守護者の部屋からの転移は知られているはずなのになぜかと一瞬首を傾げたが、そもそも新宿ダンジョンの守護者の部屋はここ数年攻略されていないため、攻略されたこと自体が珍しいらしい。そこへ輝きながらの帰還である。クリュスのような美人がだ。


 確かに話題になるなと祥吾は頭を抱えた。女神降臨と書かれていたのにはさすがに吹き出したが。


 ともかく、クリュスのことがネットの一部で目立ち始めていることは確かだった。時系列としては、最初に撮影隊に同行している件が公開され、次に守護者の部屋から転移してきた時の件で騒がれ、過去の撮影隊のときに同行していた人物と同じだと紐付けられて注目を浴びたらしい。


 なかなか厄介なことになっていることを知って祥吾は頭を抱えた。一緒に行動していた自分のことについてはほぼ記載がないことから、クリュスが美人だから目立ったのは間違いない。


 これはどうしたものかと祥吾は悩む。今後のダンジョンでの活動にもしかしたら影響が出るかもしれない。それは、祥吾以上にクリュスが困るだろう。


「うーん、これは当人に言ってやるべきかな」


 恐らくクリュスは知らないだろうと祥吾は予想した。祥吾も気まぐれに検索をした結果たまたま引っかけたというだけである。もし、今後の活動に影響がでるのならば相談する必要があるだろう。


 そう思った祥吾だった。そして、スマートフォンの時間を見て目を開く。予定よりも大幅に休憩時間を過ぎていた。




 翌日、祥吾は朝からクリュスを自室に招き入れて一緒に勉強をしていた。とはいっても、実際は祥吾がクリュスにわからないところを一方的に教えてもらっているわけだが。


 そんなもはや家庭教師を雇っている状態の祥吾だったが、その甲斐あって夕方には何とか全教科の勉強を終える。なかなかきつかったが明日からの試験には間に合った。


 椅子の背もたれに体を預ける祥吾を見たクリュスが微笑む。


「よく頑張ったわね。これで明日からの期末試験も乗り切れるはずよ」


「そうだな。平均9割はともかく、8割以上は確実だな」


「何弱気なことを言っているのよ。本来の目的をまず目指すべきでしょう。最初から諦めていたら何も成せないわよ?」


「あーまぁそうだな。9割かぁ」


「全教科90点以上取れば良いのよ。そうすれば平均9割以上は確実よ?」


「何だそのスーパーストロングスタイルは。こっちはできないから苦労しているのに」


「次の試験でできることを証明しましょうね」


 嬉しそうに言ってくるクリュスに祥吾は顔を引きつらせた。百歩譲って平均9割が達成できたとしても、全教科90点以上はとてもできる気がしない。難易度ははるかに高いのだ。


 そんなことを毎回当たり前のようにやっている化け物が目の前にいる事実に震えながらも祥吾は言うべきことを思い出した。少し真面目な顔をして切り出す。


「クリュス、昨日息抜きをしていたときに知ったことなんだが、お前のことがネットで噂になっているみたいだぞ」


「私のことが? どんな風に?」


「新宿ダンジョンに超美人の外国人が現われたって一部で騒がれているみたいだ」


 そう言いながら祥吾は昨日スマートフォンで見たことをクリュスに説明した。実際にキーワードで検索をして個人ブログやSNSの発言などを見せる。


「こんな感じなんだ。名前は出ていないから特定されていないとは思いたいが」


「写真や画像が出ていないのは幸いね。これなら、千紗さんたちがしゃべらなければ、これ以上は知られないはずよ」


「そんなのんきに構えていて大丈夫なのか? こういうの特定するのが得意な奴もいるという話を聞いたことがあるが」


「100パーセントと断言はできないけれど大丈夫だと思うわよ。私たち、もう新宿ダンジョンには行かないから」


「そういえばそうだな」


「他のダンジョンで私を探す人がいるかもしれないけれど、それも当面は気にしなくても良いわよ」


「どうしてなんだ?」


「忘れたの? 年内はもうダンジョンでの活動はしないのよ。だから、どこのダンジョンを探しても私は見つけられないわ」


 平気だという理由を並べられた祥吾は反論できなかった。確かに新宿ダンジョンで見かけたという以外の情報が乏しいので、大半の人々はクリュスを探し出すことはできないように思える。


「それに、私は年末年始に日本を離れているから、日本のどこを探しても見つけようがないでしょう?」


「あー」


「最近は人の噂の流れは速いから、1ヵ月もあればまた別の話にみんな食いついているわよ。だから、今は下手に動かない方が良いわね」


「なるほど、様子を見た方が良いのか」


「幸い、今の私はSNSもやっていないからインターネット上で探しても痕跡は見つからないでしょう。だから気にしなくてもよいわ」


「後は幸山さんたちが黙ってくれることを祈るのみか」


「そちらも大丈夫でしょう。あの人たちは職業上、一般の人に噂をばらまくなんてことはそうないわ。もしやったら、口の軽い人物という評判が付いて自分たちが困るだけですもの」


 実際のところはわからない祥吾は曖昧にうなずくしかなかった。そう言われるとそうと思うしかない。


 何となく納得できないような気がする祥吾だったが、当人が平気だというのでそれ以上は言わないことにした。なので、話題を変える。


「ところで、あの幸山さんがこの前撮影した動画が公開されているのを知っているか?」


「いえ、知らないわ」


「撮影現場を知っているとまた別の面白さがあるんだなと思ったんだ。クリュスも見てみたらどうだ」


 しゃべりながら祥吾はクリュスにその動画を見せた。探索者協会のピーアール動画のひとつで、探索者の基本的な活動を簡単にまとめたものだ。2人は地下2層の撮影現場しかほとんど知らないが、それでもその部分が流れてくると感心する。実際の現場での幸山とは印象が違うからだ。


 当時の現場のことを思い出しながら2人はしばらくその動画を眺めた。

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