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ダンジョンキラー  作者: 佐々木尽左
第7章 高校生活に慣れてきた頃

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鷹宮自然公園

 駐輪場に自転車を置いて校舎に入った祥吾は廊下を歩いていた。1年生の校舎の中はいつもとは異なり、誰もが体育のときのジャージ姿だ。それは祥吾も例外ではない。


 教室に入るといつもの面子がいる。唯一いつもと違うのは服装だ。まるで次の時間が体育のようである。


「おはよう、祥吾君。今日は晴れて良かったね」


「多少の小雨だと決行するって言われていたから安心したよ。さえぎる物が何もない場所で雨に遭うのは最悪だからな」


 自分の机に向かう途中で良樹から声をかけられた祥吾は返答した。思い出すのは異世界で旅をしていたときのことだ。全周囲に地平線が見える場所で風雨に曝されながら歩くのは逃げ場がないので本当につらい。


 自席に着くとリュックサックを机の上に置いた。ダンジョンでの活動で使っているものだ。弁当とペットボトルくらいしか入っていないのでとても軽い。


 そこへ今度は祐介が近寄って声をかけてくる。


「よう、祥吾。ついに遠足だな。歩く覚悟はできてるか?」


「いつでも。丸1日でもあるけるぞ」


「そうか。お前はそうだったな。ちなみにオレはできてない」


「なんだよそれ。人に問いかけておいて自分はそれか」


 腕を組んで偉そうにしゃべっている祐介に祥吾が突っ込んだ。珍しい友人の態度に呆れる。どうやら浮かれているらしい。


 チャイムが鳴ると全員が自席に座る。教室にやって来た沢村教諭が今日の遠足についての簡単な説明を前日に続いて行い、それが終わると生徒に廊下で整列するよう指示した。


 祥吾も友人たちと一緒に廊下で整列する。前後の教室からも同じようにジャージ姿の生徒が出てきて並んでいた。それらと一緒に校舎の外に出る。


 そのまま正門を通って校外に出ると道に沿って観光バスが並んでいた。今回の目的地である鷹宮自然公園へ向かうための移動手段だ。


 自分たちが乗り込むバスの荷台にリュックサックを入れた生徒たちは次々にバスへと乗り込む。1-B組は1-A組と一緒だ。2組合わせて40人程度なのでちょうど1台分なのだ。


 座席は1列に2席が連なる運転手側の席と通路を挟んで扉側に1席がある。ここに通路上の補助席も加えて生徒が座るのだ。


 事前の取り決め通り、祥吾は扉側の1席に座る。場所としては個人的に良い場所だ。


 生徒全員が乗り込むといよいよ出発である。バスが動き始める前から騒がしい車内は一層うるさくなった。


 その中で祥吾は目をつむって眠る。スマートフォンでウェブ小説を読むことも考えたが、話しかけられるのも面倒なので寝ることにしたのだ。


 約2時間後、目的地である鷹宮自然公園へと到着した。バスに乗っていた生徒たちは乗り込んだ順に外へ出て行く。


 自分のリュックサックをバスの荷台から取り出した祥吾は友人たちと合流した。祐介、良樹、敦、徳秋の4人だ。香奈と睦美は別の女子グループに入っている。


 1-B組は沢村教諭の元に集まって本日の予定を改めて確認した。今からするのはハイキングである。出発地点から定められたコースをたどって教師の立つチェックポイントを通過して公園内を1周するというものだ。


 祥吾は祐介たち4人とこのハイキングに参加する。沢村教諭の出発という合図と共に1-B組の生徒が歩き始めた。


 歩き始めてすぐ、丘をひとつ乗り越えたところで徳秋が声を上げる。


「オレもう疲れたなぁ」


「まだ始まったばっかりじゃねーか。いくら何でも早すぎるだろ」


 さすがに呆れた敦が諭した。面倒に感じている点は徳秋と同じなのは周囲か見てもわかるが、こちらはまだやり遂げようという意思がある。


 今回使うハイキングコースはほぼ1本道なので道沿いには黒岡高等学校のジャージ姿の生徒が点在していた。ハイキングに積極的あるいは消極的の違いはあるものの、友人としゃべりながら楽しく歩いているのは共通している。


 途中で立っている教師にチェックポイントシートへスタンプを押してもらいながら祥吾たちは歩いて行った。非常に穏やかな一時(ひととき)だ。


 3分の2を歩いたところで徳秋が再び根を上げる。


「ううぅ、なんでこんなことしなきゃいけないんだよぉ」


「あ~だるい。疲れた」


「さすがにこの距離はきついな」


「秋なのに汗をかいてきたよ、僕は」


 1周2キロメートル以上あるハイキングコースは徳秋だけでなく、敦や祐介にも不評なようだ。一方、最も運動から縁遠いはずの良樹はそこまで印象は悪くないようである。噴き出す汗をタオルで拭きながら笑みを浮かべて歩いていた。


 ハイキングが終わると自由時間である。後はバスに乗り込む時間まで好きにするわけだ。この自由時間には食事の時間も含まれているので食べる時間も自分たちで決めることになる。


 スタート地点でもあるゴールにたどり着いた祥吾たち5人は最初に乗り越えた丘の上に向かった。ここで弁当を食べるのだ。


 リュックサックから取り出した祥吾の弁当はいつも通り大きな箱が2つである。当人からするとダンジョンでは携行食を取り出していたので新鮮だ。蓋を開けて早速食べ始める。


「祥吾君のお弁を当見ていると、僕のももう少し大きくてもいいかなって思えて来るよ」


「でも実際に食べるとそうでもないんだよな。結局胃袋の大きさは変わらんわけだし」


 5人が円になって食べていると、良樹が祥吾の弁当を見てその大きさに感心し、祐介がその意見に突っ込んだ。それを皮切りに敦と徳秋も祥吾の弁当を話のネタにする。


「オレはそこまでいらないな。いつもより少し多めにほしいっていう意見には賛成だが」


「さすがにあの量は胸焼けするとか以前に食べられないかなぁ」


「お前ら好き勝手に言ってくれるな」


「でも祥吾って、それだけ食べてるのに全然太らないよねぇ」


「すごいよな。全部筋肉で消費してるって感じだぜ」


 思わず言い返した祥吾だったが、徳秋に感心されて戸惑った。敦は徳秋に同調しつつもからかってくる。祥吾としては微妙に言い返しづらい。


 食事が終わると食休み後に公園の芝の上で5人は遊び始めた。徳秋が持ってきたバトミントンの道具を使う。ラケットは2つだけなので交代で遊んだ。


 その様子を通りかかった香奈と睦美が目にして声をかけてくる。


「あんたたち、ラケットなんて持ってきてたんだ」


「バトミントンか~。楽しそうだね~」


「2人もやってみるか?」


「あたしたち、他のクラスの子と約束してるからいいわ」


「また今度ね~」


 どうやら一言声をかけたかっただけらしく、香奈も睦美も敦の誘いを断るとすぐにその場を立ち去った。あの2人の交友関係はなかなか広いので、こういうときは他のクラスの友人から声がかかりやすいのだ。


 再び男だけとなった祥吾たちはバトミントンに飽きると次はビーチボールで遊び始めた。これは敦が持ってきたもので、本当はバレーボールを持ってくる予定だったがかさばるので直前に取り替えたということである。


 輪になった5人は膨らませたビーチボールをバレーのトスの要領で次々と上げていった。正面や隣と最初は穏やかに続けていた5人だが、次第に変則的な上げ方に変わってゆく。何も考えずに集中するとこれがなかなか面白い。


 ビーチボールを徳秋から受けた敦が祥吾に向けてアタックを仕掛ける。


「はっ!」


「うぉ!?」


 突然のことに驚いた祥吾だったが反射的に返した。そのビーチボールは祐介のいる方へと向かってゆく。


「なんでいきなり打ち込んでくるんだよ?」


「祥吾ならいけるかなと思ってな!」


「それにしても、きれいなフォームだったな。前にやっていたのか?」


「小学生のときに少しな」


 ビーチボールが祐介から良樹のところへと移る間に祥吾は敦に話を聞いた。その後、徳秋を経由して再び祥吾へと回ってきたので話が中断する。


 以後、祥吾はやたらと遠くにビーチボールを飛ばされたりするなど、友人から何かと試練を与えられた。今回はそういう役回りになってしまったらしく、最後までその扱いは変わらなかった。終わった頃には疲れ果てる。


 そうやって遊んでいるとやがて教師から集合の声がかかった。広い公園に点在している生徒が集まるとなると相応に時間がかかったが、30分ほどで1年生が全員集まる。点呼がかかって欠けている生徒がいないことを確認すると順次バスに乗り込んだ。


 行きと同じ座席に座った祥吾はシートにべったりともたれた。朝は孤独になるためだったが、帰りは疲れのためだ。あくびをしてから目を閉じる。


 次に起きたときは学校に着く寸前だった。沢村教諭が降りる準備をするよう生徒に呼びかけていたときである。その間の記憶が一切ない。


 バスが学校に到着すると全員が降りる。その場で集まると教師からの話があり、それも終わると解散だ。


 散ってゆく友人たちに混じって祥吾も家に足を向けた。

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