第9話「トカゲ召喚」
第9話
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奥行きがわからない真っ白な空間。
目の前には蒼く輝く透明のキューブ。
その中には、ヴィオデスがあぐらをかいて座っている。
ヴィオデス:「久しいのぉ。マサヴェイ」
マサヴェイ:「そうだね」
ヴィオデス:「何か余に相談でもあるのか?」
マサヴェイ:「そうかもね」
ヴィオデス:「焦らすでない。余とお主の関係だ」
マサヴェイ:「そうだね。単刀直入に言うと、魔界のオシマン王が冥界の大森林に侵入してきたんだ」
ヴィオデス:「そうか。それで、余に何を求める」
マサヴェイ:「いや、別に、何も求めてないけど。試しに、会いにきただけだよ。僕にとって有益な情報が得られればいいなと思って」
ヴィオデス:「はっはっはっ、まったく、生意気な奴だ。さすがは我が血を引くものよ」
マサヴェイ:「えっ、どういうこと?」
ヴィオデス:「なんだ、知らんのか。余の記憶をすべて引き継いでいるわけではないのだな」
マサヴェイ:「うーん、どうやらそういうことみたいだね。それも興味あるけど、今はオシマン王について教えてくれるの?」
ヴィオデス:「はっはっはっ、余もそんなには知らん」
ヴィオデスは一息ついて続ける。
「エゾモン72柱のひとり。序列9位。階級は王。相手にとって不足はないな。手ごたえのある敵だと思うぞ、ふふふ。」
マサヴェイ:「そうか。詳しくは知らないってことなんだね。じゃあ、僕は帰ろうかな」
ヴィオデス:「ちょっ、ちょっと待て。待つのだ」
マサヴェイ:「他に何かあるの?」
ヴィオデス:「いや、何もない。だが、提案がある」
マサヴェイ:「提案?」
ヴィオデス:「余を使い魔として召喚しないか?」
マサヴェイ:「どういうこと?」
ヴィオデス:「いつも傍にいる使い魔として余を召喚すれば、いつでも余と話せるぞ」
マサヴェイ:「興味ないけど」
ヴィオデス:「ちょちょちょ、ちょっと、もう少し余に気を使え!余は龍魔王だぞ!」
マサヴェイ:「そんなもんかな~」
ヴィオデス:「そんなもんだ!」
マサヴェイ:「まあ、僕の言うことを聞くなら、封印を解いて、使い魔にしてあげてもいいよ」
ヴィオデス:「そうか、では、すぐにやってくれ。いい加減、このキューブの中にいるのも飽きた」
マサヴェイ:「わかったよ。でも、余計な事したら、すぐにキューブに戻すからね」
ヴィオデス:「うぅぅぅ・・・うむ、わかった・・・」
マサヴェイ:「じゃあ、僕は戻るね」
ヴィオデス:「うむ、待っておるぞ。必ず頼むぞ!約束したぞ!」
僕はヴィオデスに微笑み返し、目を閉じた。
そして、現実世界に向かって精神を飛ばすイメージを描く。
・・・・・・・・・・
ゴシファー:「お帰りなさいませ、マサヴェイ様」
と言い、深く一礼する。
シスモは何が起きたのか分かっておらず、目が点になっている。
面白い顔をしていると思ってしまった。
マサヴェイ:「ヴィオデスも詳しくは知らないって」
シスモ:「ど、ど、ど、どういうこと?ヴィオデス様に会ってきたってこと?」
僕はニヤッと微笑み、シスモを見る。
シスモ:「もー、マサヴェイ君のいじわる!」
僕は、ふふふと微笑む。
マサヴェイ:「僕は使い魔を召喚しようと思う」
シスモ:「唐突ね~」
ゴシファーは察したようで頷いている。
僕は部屋の床に召喚の魔法陣を書き始める。
ゴシファーは机を端に寄せて、魔法陣のスペースを確保していく。
シスモはただ見ている。
召喚の魔法陣が完成し、僕は召喚の呪文を唱える。
魔法陣が強い光を発し、その光が収束していく。
そして、そこに現われたのは“トカゲ”。
トカゲ:「おおー、召喚してくれたかー」
甲高く小さな声が聞こえる。
そして、そのトカゲは僕の頭の上に登って、ゴシファーとシスモを交互に見る。
トカゲ:「久しいのー」
甲高く小さな声に小さな身体でまったく威厳が感じられないことに、僕は笑ってしまう。
トカゲ:「むむむ、マサヴェイよ。失礼ではないか。余は喜んでおるというのに」
ゴシファーは跪き、トカゲに敬意を示す。
シスモ:「なによ、このトカゲは。威張ってるわね~」
ゴシファーが静かな声で「シスモ。わからぬか。ヴィオデス様であるぞ」
シスモ:「えっ、えっ・・・何を言ってるの?どういうこと?このトカゲが?」
トカゲ:「シスモよ。余はヴィオデスである」
シスモ:「何言ってるの、このトカゲは?何か証拠があるというの?」
トカゲ:「そうじゃのー。お主の左の胸には5連のホクロがあるというのはどうじゃ」
シスモは、まるで頭上に雷が落ちたかのように硬直した。
目はぐるぐると泳ぎ、口は開いたまま言葉にならない音を漏らしている。
シスモ:「えっ、えっ・・・な、なにそれ・・・ど、どういうこと・・・このトカゲが・・・?」
普段は冷静沈着、毒舌すら芸術の域に達する彼女が、今やただの困惑マシーンと化している。
顔は真っ赤、耳まで染まり、まるで湯気でも出そうな勢いだ。
シスモ:「なになになになにーーー!?」
その声は、もはや悲鳴とも疑問ともつかない。
足元はふらつき、手は意味もなく空を切り、まるで見えない敵と戦っているかのようだ。
トカゲ――いや、ヴィオデスは、そんなシスモをじっと見つめている。
その目には、どこか慈しみと、ほんの少しの愉快さが混じっていた。
トカゲ:「余はヴィオデスである」
その一言が、シスモの脳内に再び雷を落とす。
彼女はついに椅子に座り込み、頭を抱えながら叫んだ。
シスモ:「えっ、これ夢?幻?それとも新手のドッキリ?バグってる?」
僕はシスモの肩に手を置き
マサヴェイ:「落ち着け。それで信じるのか、信じないのか、どっちなの?」
シスモ:「わ、わ、わ、わ、わかったわ。信じる。それを知っているのはヴィオデス様だけだから」
トカゲ:「余はヴィオデスである。心配かけたな」
シスモは、まるで感情の蛇口が全開になったかのように、ワーワーと泣きながら僕に飛びついてきた。
涙は滝のように流れ、鼻はすすり、言葉にならない声が漏れている。
その勢いは、まるで「感情の暴風雨」だ。
「うわぁぁぁぁぁん!ヴィオデス様ぁぁぁぁぁぁぁ!」
抱きつく力は予想以上に強く、僕の肋骨が「ギブ」と言いかけた。
それでも、彼女の震える肩に手を回し、そっと包み込む。
ゴシファーは、隅で「今はそっとしておいてください」とでも言いたげな顔で、静かに見守っている。
その表情は、まるで「感情の取扱説明書」を熟読した者のような達観ぶりだ。
僕はただ、シスモの涙が枯れるまで、静かにその場に立ち尽くした。
彼女の涙が落ちるたび、過去の痛みと再会の喜びが混ざり合って、胸の奥がじんわりと熱くなる。
でも、そろそろ、僕の肋骨は限界かもしれない・・・。
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