第8話「隠密シスモ」
第8話
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長い軍議が終わり、僕は用意された宿舎へと案内された。
聞いていただけだが、それでも長時間拘束されると肉体的にも精神的にも疲れる。
宿舎の部屋ではゴシファーがいつもの執事服で待っていた。
ゴシファー:「お疲れでしょう。軽食と紅茶をご用意しました」
マサヴェイ:「ああ。ありがとう。戦場に似つかわしくない格好だな、ふふふ」
ゴシファー:「私はマサヴェイ様の執事ですから、ふふふ」
オシマンはエゾモン72柱のひとり、200の魔族軍団を従える王。
魔界の北部全体を治めるエゾモン王の配下である。
ゴシファーは、ヴィオデスと共に魔界を出て、冥界の大森林に来てから500年間、魔界には戻っていないので、魔界の現状は知らないとのことだ。
ゴシファーは遠くを見ながら懐かしそうな眼をしていたから、きっとヴィオデスが冥界の大森林の魔王に上り詰めるまでの冒険を思い出していたんだろう。
今、魔界で何かが起きているのかもしれないが、何人たりともこの“ヴィオデスの冥界の大森林”への侵略は認められないそうだ。
いずれにせよ、我々にとって脅威となる共通の敵が現れたことは確かだ。
そう考えていると、黒装束のシスモが音もなく現れた。
黒装束は肌に吸いつくように張り付き、胸元の大胆なカットが蝋燭の明かりを受けて艶やかに輝く。
布の隙間から覗く滑らかな肌は、見る者の理性を試す罠のようだ。
腰のラインは妖しくくびれ、脚線美は一歩踏み出すたびに闇を撫でる。
そのポーズは挑発的でありながら、どこか神聖な儀式のような気高さを帯びている。
まるで「見られること」そのものが彼女の術式であるかのように。
まったく忍んでいない。。。
いまは隠密の役割のはずなのに、彼女は隠れることを拒絶している。
いや、それがシスモの個性なのだが・・・、隠密は向いてないな・・・。
シスモ:「あら~、マサヴェイ君。もしかして、この衣装、気に入ってくれた?こういうのが好みなのね~」
マサヴェイ:「違う。そういう目で見ているわけではない」
シスモ:「え~、そうなの。残念~。でも、ちょっとは嬉しいでしょ♡」
マサヴェイ:「もういいから・・・、それでどうだったの?」
シスモ:「はいはい、すぐに仕事なんだから。真面目過ぎるとモテないわよっ、プイッ」
シスモからの情報を整理すると
・冥界の大森林に魔界とつながる“魔界門”が2か所できている
・魔界門を通って魔族軍団や魔物が魔界から入ってきている
・魔界門はエゾモンの柱が守っている
・2つの魔界門には“憤怒のフタン”と“暴食のボルゼブ”がそれぞれ向かった
・“強欲のゴモン”は魔王城へ向かい、そこにある転送装置を使い魔界へ行くつもり
マサヴェイ:「なるほど。かなりの勢力だ。厄介そうだね。それでオシマンたちの目的はなんだろうね?」
シスモ:「なにかな~?」
そういいながら、僕たちはゴシファーの方を見る。
ゴシファー:「そんな目で見られても、わかりません」
シスモ:「即答!ゴシファーはいつも即答なのよね。少しぐらいは考えたふりとか、予想でもしてみたらっ!」
ゴシファー:「不確定な意見に意味はありませんので。混乱させるだけです」
マサヴェイ:「ふふふ、ゴシファーらしいね。そうだとしても、ゴシファー個人としてはどう考えているの?」
ゴシファー:「私個人として・・・ですか・・・」
ためらいがちにゴシファーは続ける
ゴシファー:「事実として、魔族軍が魔物を伴い冥界の大森林に入ってきており、ムツート連合国への侵略を行っていること。それが、エゾモン王の意思であるかはわかりませんが、リーダーがオシマン王であることは間違いないと思います」
マサヴェイ:「なるほど。それで僕はどうしたらいいと思う?」
ゴシファー:「私はマサヴェイ様のご判断に従います。ただ・・・、もし・・・、よろしければ・・・、アップルティーでもいかがでしょうか?」
そういうと深く頭を下げた。
シスモの頭上には「???」が飛んでいるのが見える。
マサヴェイ:「例のアップルティーか・・・」
シスモ:「なっ、なによ~。二人だけでずる~ぃ。何のことか教えてよ~」
シスモはプリプリと怒っている。
僕は一息つき、ゆっくりと考える。
マサヴェイ:「そうだな。アップルティーを一杯お願いする」
ゴシファー:「畏まりました」
ゴシファーは深く一礼すると、キビキビとアップルティーの準備のため、部屋を出ていった。
シスモは頬を膨らませ、怒った目で、僕を見つめている。
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