第6話「父テルディス王の緊急帰還」
第6話
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冥界の大森林への長期遠征から、父テルディス王と長兄マサライ皇太子が緊急帰還した。
父は大怪我を負っており、意識が戻らないまま部屋まで運ばれた。
医師団による治療が優先され、僕は父に会うことなくいつも通り過ごしている。
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270年前に龍魔王に対抗するために、ムツート地方にある3つの親戚王国が連合軍をつくり戦った。
それ以降、連合国という体制が創られ維持されている。
宗家であるシロンドルフ家が盟主となり、知のイキノフ王家と武のリクヴォフ王家が支えている。
皇太子である長兄マサライが父テルディスに代わってムツート連合国の盟主代理を担う。
そして、イキノフ王家、リクヴォフ王家、その他貴族との緊急議会から戻ってくると、第2王子アツレクと第3王子である僕は、父テルディスがいる王の部屋に呼ばれた。
部屋に入るとベッドに横たわり目を覚まさない父テルディス、それを見守る長兄マサライと次兄アツレクがいた。
僕はベッドの傍らに膝をつき、父の手を握る。
長兄マサライ:「父上の傷は治っている。だが、目が覚めないのだ」
僕はこっそりと鑑定魔法を発動し、父を診る。
なんということだ・・・
幻想世界への転移魔法がかけられている。
肉体は眠ったまま、精神は別の世界で生き続ける。
それは現実と夢、物質と霊の境界を越える魔界の魔法。
マサヴェイ:「マサライ兄さん。冥界の大森林で父上に何があったのですか?」
長兄マサライ:「うむ。冥界の大森林で魔物が活性化しており、魔物による被害がムツート連合国内で問題となっていることは知っているな?」
次兄アツレク:「はい。それで父上と兄上が遠征に出られました」
長兄マサライ:「そうだ。マサヴェイはそこまでは大丈夫か?」
そういえば、そんなこと聞いたような気がすると思いながら、僕は頷く。
長兄マサライ:「うむ」
次兄アツレクは僕に疑いの目を向けているが、長兄マサライは気にしていないようだ。
長兄マサライ:「我々は魔物を蹴散らし、冥界の大森林の奥へと進んだ。そして、魔族軍団からの襲撃を受けたのだ」
次兄アツレク:「魔族軍団?いまは、冥界の大森林に魔王はいないはずでは?」
長兄マサライは頷きながら続ける。
「そうだ。270年前に龍魔王ヴィオデスは白銀の剣士ブロンに討たれた」
次兄アツレク:「それではなぜ?魔族軍団がいるのですか?」
長兄マサライは顎に手をあて、深く考えながら、言葉を選びながら応える
「正しいことは、わからない。しかし、魔族軍団を従える何者かが現れたのは確かだ。それが龍魔王なのかは、わからないが・・・」
(龍魔王ではないな~。だって、僕の中にいるから)と考えていると、
長兄マサライ:「どうした、マサヴェイ?」
マサヴェイ:「いっ、いえっ」
次兄アツレク:「マサヴェイ!ちゃんとしろ!いつまでもぐーたらしてるんじゃない!」
長兄マサライ:「まあ、よい。マサヴェイにもお願いがあるのだ。そろそろ本気を出すときだぞ」
マサヴェイ:「はっ、はい・・・、いつも本気ですが・・・」
なんだかイヤな予感がしてきた・・・
長兄マサライ:「話を戻すが、夜の軍議の最中、そいつは現れた」
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天幕の中で、テルディス王、マサライ皇太子と3人の将軍が軍議をしている。
一旦、魔族軍団をなんとか圧し返すことはできたが、明日からの戦いをどう進めるのか。
敵の戦力もわからず、いつまで続くかもわからない戦いに対して、どのように対処していくのか。
先が見えないことが不安を生む。
しかし、どんな不安な状態でも、リーダシップを発揮し、みなを導いていくのが王である。
いま、この時点での情報をもとに最善の一手を打たなければならない。
それが正しい手なのかどうかは、わからない。
しかし、いま、正しいと思う手を選択し、決断する役割を担うのが王である。
その手には、みなの運命が委ねられている。
テルディス王はそのとてつもなく大きなプレッシャーに押しつぶされそうになっていた。
しかし、それを表に出すことはない。
決めること、それが王の役目だから、逃げ出すことはできない。
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