第22話「イネザベスの危機」
第22話
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グレた名門貴族の三男は、魔法の廃れた世界で、大魔導士の魔法の力をこっそり使い、世界を救う
第71話「イネザベスの危機」も合わせてお楽しみください。
王立学園の中庭は、炭火の香りと学生たちの笑い声で満ちており、魔道具研究室主催のBBQは、まるで小さな宴のように賑わっている。
その中心で、ひときわ存在感を放っている人物がいた。
イネザベス・クスヴァリ先生。
白衣の上にエプロンをつけ、片手には肉串、もう片手にはワインボトル。
頬をほんのり赤く染め、上機嫌で学生たちに囲まれている。
「見なさい見なさい! この魔道具――回転炭火グリル!
火力調整は自動、煙は逆流して香りだけ残す優れものよ!
ほら、肉が勝手に回るの、かわいいでしょ!」
「先生、それ“かわいい”の基準おかしくないですか・・・」
学生のツッコミに、イネザベスはケラケラと笑う。
「細かいことはいいのよ! 美味しければ正義!
さあ、食べなさい食べなさい! 若いんだからもっと食べなきゃ!」
彼女が魔道具で焼いた肉は驚くほどジューシーで、学生たちは次々と皿を差し出し、イネザベスはそのたびに得意げに胸を張った。
「先生、飲みすぎじゃ・・・」
「大丈夫よぉ、私は強いの。研究者はね、酒にも強くないと――」
と言いながら、ワインボトルを傾ける手が少し揺れている。
「・・・先生、本当に大丈夫ですか」
「だいじょーぶよぉーーーたぶんーーー」
学生たちが苦笑する中、イネザベス先生は満足そうに頷いている。
カコレット先生は、とっくに酔いつぶれて芝生の上で寝てしまっている。
イネザベス先生を止められる者はもういない。
・・・・・・・・・・
祝祭の高揚、茜色の空、炭火の香り。
そのすべてを胸いっぱいに吸い込み、彼女はふらりと立ち上がる。
「少し、夕風に当たってくるわ」
軽く手を振り、揺れる足取りで回廊へ向かっていく。
その時、トカゲのヴィオデスが僕の胸ポケットから頭を出し、小声でささやく
「おい、マサヴェイ。いま、魔族の気配をほんのわずかだが感じたぞ」
マサヴェイ:「えっ。なんだって?確かか?」
ヴィオデス:「ああ。間違いない。とりあえず、あの先生を追いかけたほうがいいぞ」
イネザベス先生が研究室の扉を開け、ふらふらと中に入ると、魔族の気配が僕にもわかるほどに伝わってきた。
僕が目で合図を送ると、わかったとばかりに、
ヴィオデスが僕の頭の上にササササと登り、さらに飛び上がった。
その瞬間、漆黒の布がパァッーーーとひるがえり、僕の体を包み込んでいく。
瞬間、全身に力が満ちる感覚。
それはただの装いではない。
ひとつながりの漆黒の龍のマスクとマントを纏った私は、ヴィオデスと一体となった。
自然と僕の口角が上がる。
胸元の漆黒のメダルの黒龍が目を開けると漆黒の瞳の中の稲妻がギラリと光る。
黒雷の龍剣士、参上である。
漆黒の鎧に身を包んだ魔族――ホルクス。
夕日の光を背にしたその姿は、まるで影そのものが形を取ったかのようだ。
剣の刃が夕日の赤を反射し、冷たい閃光を放ち、イネザベス先生に迫る。
「技術の芽は、ここで断たれる」
僕は魔族と先生の間に滑り込み、黒雷の大剣を振るい、魔族の一撃を受け止めた。
剣と剣がぶつかり合い、火花が散り、重々しい衝撃音が研究室の壁を震わせる。
先生が「逃げなさ!」と叫ぶ。
僕はトシードが研究室に入ってきたことを確認する。
彼はどうしたらいいのか動揺し、迷っているようだ。
申し訳ないが、彼では役に立たない、足手まといだ。
僕は目線とわずかな仕草で「ここは任せろ」と告げる。
その時、研究室の外から強烈な魔力の波動が押し寄せてきた。
「ちっ、他にもいるのか」と僕はつぶやいた。
気づけば、トシードは無事にこの研究室から逃げることができたようだ。
僕はまずは、ここにいる魔族を速やかに倒すことに集中する。
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