第21話「黎明の儀式」
第21話
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王城前の広場の端。
松明の光が揺れ、群衆のざわめきが波のように押し寄せる中、3人で肩を寄せ合って立っている。
僕、ゴシファー、シスモ。
そして、僕の胸ポケットの中ではトカゲのヴィオデスが爆睡している。
ヴィオデスは夜明け前で眠いということもあるが、黎明の儀式に興味もないそうだ。
マサヴェイ:「・・・・・すごい・・・・・」
思わず漏れた声は、歓声にかき消された。
だが、僕の胸の震えは誰にも止められない。
夜の冷気と群衆の熱気が混ざり合い、松明の炎が石畳に揺れる。
王が立つ高壇は遠いはずなのに、
その存在感はまるで目の前にあるかのようだった。
これが・・・エドザー王国の“始まり”の儀式・・・かぁ・・・
王の声が響き、宰相が黎明パンを割る。
その瞬間、群衆が一斉にパンを掲げ、朝日を受け止めた。
マサヴェイ:「・・・・・本当に、国全体が一つになっているようだ・・・・・」
僕の隣で、ゴシファーは腕を組み、深く頷いていた。
「見事なものですな。王と民が、これほど自然に心を合わせるとは」
彼の声は低く、しかしどこか温かい。
「儀式の構成、動線、警備。すべてが洗練されております。準備にどれほどの労力が費やされたか、想像に難くありませんな」
ゴシファーは執事の癖がついてしまっているようだ、つい“運営側”の視点で見てしまうようだ。
だが、その目にも確かな感動が宿っているようにみえる。
一方、シスモはというと――
目を輝かせ、両手で胸元を押さえながら小さく跳ねていた。
「すごい、すごいですーーー!
あんなに大きなパンーーー!
あんなに綺麗な朝日―――!
王様、かっこよすぎますーーー!」
完全に観光客である。
「シスモ、声が大きい」
「ひゃっ、す、すみませんーーー!」
だが、彼女の頬は紅潮し、その目には涙が浮かんでいた。
「なんだか・・・胸があったかくなりますねーーー、
“始まり”って、こんなに綺麗なんですねーーー」
その言葉に、僕もゴシファーも思わず視線を交わした。
「・・・確かに、そうだな」
・・・・・・・・・・
儀式が終わり、楽師たちの演奏が始まると、群衆は歓声を上げ、祭りの熱気が一気に広がった。
僕は深く息を吸い、胸の奥に残る温かさを確かめるように目を閉じた。
「・・・・・来てよかった」
ゴシファーは静かに頷き、
「マサヴェイ様、これは貴重な経験ですな」と言った。
シスモは両手を握りしめ、
「一生の思い出ですーーー!」と満面の笑みを浮かべた。
潜入任務の緊張は確かにある。
だが、この瞬間だけは――
3人とも、ただの旅人として“黎明”を味わっていた。
なお、トカゲのヴィオデスは、この熱量など無いかのように僕の胸ポケットの中で爆睡し続けている。
・・・・・・・・・・
儀式の余韻がまだ胸の奥で温かく揺れている中、広場の喧騒はさらに賑やかさを増していった。
甘い菓子の匂い、焼きたての肉の香り、紅茶の湯気――屋台の並ぶ大通りは、まるで色と香りの奔流だ。
「では、我々は少し屋台を巡ってから家へ戻ります」とゴシファーが恭しく頭を下げ、
シスモは「ぜったい美味しいもの食べますーーー!」と元気いっぱいに手を振った。
僕は二人に別れを告げ、胸ポケットのヴィオデスをそっと押さえながら、王立学園へ向かう道を歩き出す。
今日の午後、中庭ではイネザベスの研究室主催のBBQが開かれる。
彼女の魔道具研究の“素顔”に触れられるかもしれない機会だ。
祭りの熱気を背に受けながら、僕は期待を胸に静かに歩みを進めた。
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