表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/26

第20話「黎明パン」

第20話

ご愛読いただきありがとうございます。


エドザー王国の建国記念祭「黎明の日」

まだ祭りまで一か月あるというのに、王都はすでに“本番直前”のような熱気に包まれていた。


大通りでは、職人たちが巨大な紋章旗を掲げるために足場を組み、

兵士たちは行進の訓練を繰り返し、楽師たちは太鼓と角笛の音を響かせている。

「・・・いや、ちょっと待て。これ、建国記念祭の“準備”だよな?本番じゃないよな?」


ムツートの祭りは、もっとこう・・・なんというか・・・そう、のんびりしている。


だが、エドザー王国は違う。

街そのものが巨大な舞台装置のように動いている。


・・・・・・・・・・


僕は、香ばしい匂いに誘われてパン屋の前で足を止めた。

店主が腕まくりしながら、山のような生地をこねている。

「今年は“黎明パン”の注文が多くてねぇ!祭り当日は5,000個は焼くよ!」

「ご・・・せん・・・?」

僕は思わず聞き返しそうになった。

5,000個のパンを焼く祭りなど聞いたことがない。


エドザー王国、どれだけ食べるんだ……?

いや、食べる以前に、どれだけ人が集まるんだ……?


僕は黎明パンを1個買い、焼き立てを受け取った。

円盤状の硬いパンは、手のひらにずしりと重く、表面には太陽を模した放射状の切れ込みが入っている。

「それが黎明パンだよ、兄ちゃん」

パン屋の店主が胸を張って言った。

「王国の始まりを象徴する“糧”さ。黎明の日には、王様がこれを割って民に分け与えるんだ。

“今日からまた一年を共に歩む”って意味でね」

「……王が、民に?」

「そうさ。だから皆、このパンを食べると気が引き締まるんだよ。“頑張るぞ”ってな」

僕は思わずパンを見つめ直した。

ただの素朴なパンだと思っていたものが、急に重みを持って見えてくる。


――――――――――

パン屋の店主からの情報を整理すると、


黎明パン ――エドザー王国の“始まり”を象徴する糧

形は太陽を象った円盤状。

表面には浅く刻まれた放射状の切れ込みがあり、焼き上がるとその線が黄金色になり、太陽の光芒のように見える。

生地は硬めで、噛むほどに味が出る素朴なもの。

材料は驚くほど簡素だ。

•粗挽きの小麦

•岩塩

•発酵バター

•少量の蜂蜜(ほんのり甘みをつけるため)

•そして“黎明の水”と呼ばれる、王都近郊の泉の水

特別な材料はない。

だが、どの家庭も、どの店も、

「一年で一番丁寧に作るパン」

として心を込めて焼く。

だからこそ、素朴なのに深い味わいになる。


ということらしい。

――――――――――


僕は、焼き立ての黎明パンをひと口かじる。

すると、硬い外皮が“パリッ”と小気味よく割れ、中から湯気とともにバターの香りがふわりと広がった。

「・・・っ、うま・・・・・ぁ」

思わず声が漏れた。


噛むほどに、小麦の甘みとバターのコクがじんわり広がる。

塩気は控えめで、後味は驚くほど軽い。

素朴なのに、なぜか胸の奥が温かくなる味だ。


僕はもう一口かじる。

噛むたびに癖になる。

止まらない。


持ち帰り用に黎明パンを10個追加した。


・・・・・・・・・・


パンの残りをゆっくり噛みしめながら、大通りの喧騒を眺めた。


「・・・・・この国の祭り、すごいな」

最後までお読みいただきありがとうございました。

気に入っていただけた方は、ぜひ、

・ブックマーク

・下の評価で5つ星

よろしくお願いいたしますm(__)m

つけてくれると、嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ