第15話「沈黙の中の声」
第15話
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ムツート連合国・政庁塔、第五会議室。
重厚な扉が閉じられた瞬間、空気が変わった。
円卓を囲む三人の重鎮たちは、それぞれ異なる威圧感を放っている。
・宰相 ミツイル・ナンブノフ公爵
灰色の長髪を後ろで束ね、銀縁の眼鏡を通して冷静な視線を投げかけてくる。
高齢だが、その姿勢は一分の隙もなく、言葉の一つひとつが刃のように鋭い漢だ。
黒と金の刺繍が施された宰相服は、彼の知略と格式を象徴している。
彼は理論と実績を重んじる男であり、感情に流されることを何よりも嫌う。
・諜報機関長官 ヨシアン・モーガスキー侯爵
対照的に柔らかな物腰で椅子に身を預けている。
栗色の髪を無造作に撫でつけ、細身の体に深緑の外套を羽織っている。
だが、その瞳は常に周囲を観察し、誰よりも多くを見ている漢だ。
諜報機関長官として、彼の言葉には裏の裏まで意味がある。
皮肉と笑みを交えた語り口は、敵にも味方にも警戒を抱かせる。
・将軍 ウレーナ・アシテミール公爵
“黒の戦姫”と呼ばれる無双の女傑。
漆黒の甲冑が身体を包み、長い黒髪は背に流れている。
左足の義足は床を打つたび、金属音が静寂を切り裂く。
その音は、彼女が戦場で失ったものと、今も戦い続ける意志を象徴している。
言葉は少ないが、発する一言には軍を動かすだけの力がある。
冷徹でありながら、内に秘めた情熱は誰よりも熱い。
円卓の上には、各国の地図と魔族の進行ルートを示す赤い線が広がっている。
その場にいる誰も、僕に目を向けようとはしない。
ミツイル・ナンブノフ宰相が、低く重い声で切り出す。
「エドザー王国は、かつて我らの交易路を一方的に封鎖した前例がある。信頼の土台がないまま、軍事同盟など夢物語じゃの」
ヨシアン・モーガスキー長官が、指先で地図を叩く。
「サマヴァーの獣人たちは、誇り高く、外の助けを恥とする。交渉の使者が誰であれ、“弱さの匂い”を嗅がれた瞬間に門前払いだな」
ウレーナ・アシテミール将軍は、義足を鳴らしながら立ち上がる。
「ならば、力を示すべきだ。交渉の前に、我らが魔族をさらに撃退し、実力を見せつける。そうすれば、奴らも耳を傾ける」
ミツイル宰相:「その自信があるとな?、ほほほ、勇ましいの。じゃが、それでは時間がかかりすぎる。魔王の動きは速い。各国が孤立したままでは、各個撃破されるじゃろう」
ヨシアン長官:「ではどうする?誰が、どの顔で、どの言葉で、彼らを説得する?」
議論は熱を帯び、声が重なり、時にぶつかり合う。
僕はその輪の外にいた。
誰も僕に意見を求めないし、言葉の隙間に割って入る余地すらない。
(まあ、いつものことだ。決まるまで待つか・・・)そう思いかけた、その時だった。
議論が、ふと止まった。
誰もが言葉を失い、円卓の上に沈黙が落ちた。
地図の上を、風が吹くように静寂が撫でていく。
誰もが、次の一手を見失っている。
その沈黙の中で、僕はゆっくりと立ち上がった。
椅子の軋む音が、やけに大きく響いた。
誰も僕を見ていない。
でも、僕は口を開いた。
「正式に国境を越えて交渉に出るにも時間がかかると思うので・・・・・僕は先に行って状況を見ておこうかと思います」
その言葉は、静寂の水面に落ちた一滴のように、場の空気に波紋を生んだ。
ミツイル宰相がぎょろっと力強い目で睨みつけてくる。
「なにをぐーたら小僧がいっておるか。すわっておればいいんじゃ」
その視線は、言葉以上に重く、鋭く、マサヴェイの胸を突く。
ヨシアン長官は「ほほーん」と顎に右手をあてながら、興味深げに見てくる。
その目は、まるで盤上の駒を見定めるような冷静さと好奇心に満ちていた。
ウレーナ将軍は、どちらともつかない表情で地図を見つめたまま、沈黙を保っている。
その中で、ヨシアン長官が口を開いた。
「それはいい案かもしれませんな」
その一言が、場の均衡をわずかに傾けた。
・・・・・・・・・・
その夜、僕は静かに王宮の私室を後にした。
月光が石畳を照らし、僕たちの影を長く引き伸ばす。
僕
トカゲのヴィオデス
執事のゴシファー
メイドのシスモ
護衛の諜報員が3名
向かう先は、エドザー王立学園。
そのエドザー王立学園にはすでに諜報員として潜入している者がいる。
アユナ・モーガスキー。
諜報機関長官であるヨシアン・モーガスキー侯爵の娘である。
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