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第14話「次兄アツレクの苛立ち」

第14話

ご愛読いただきありがとうございます~。

テルディス王の胸には短剣が刺さったまま、肉体は眠り、精神は別の世界で生き続けている。

それは現実と夢、物質と霊の境界を越える魔界の魔法。

オシマン王によってかけられた幻想世界への転移魔法である。


僕以外の者の目には、呪いとしてうつっている。


黒雷の龍剣士によってゾガン王は討伐され、ひと時の平和が訪れたように感じるが、オシマン王とは接触もできていないし、転移魔法を解くヒントすら見つかっていない。


・・・・・・・・・・


王の寝室。


ベッドに横たわり目を覚まさないままの父テルディスに向けて、今回の戦いの報告をする長兄マサライ。

それを傍らで見守る次兄アツレク。

僕はベッドの傍らに膝をつき、父の手を握っている。


マサライは報告を終えると、僕たちに向き直った。


長兄マサライ:「アツレク、マサヴェイ。よくやってくれた。黒雷の龍剣士という謎の存在はあるが、ひと時の猶予を手に入れることができた」

次兄アツレク:「はい。今後、私は防衛拠点の増設に尽力したいと考えています」

長兄マサライ:「そうか、そうであれば、アツレクには防衛拠点の増設と、魔族軍の監視を任せたいと思う」

次兄アツレク:「はい!必ずご期待に応えてみせます!」


アツレクはマサライの言葉に力強く頷いたものの、心の奥では別の感情が渦巻いていた。

戦の報告を終えた今、彼の視線は自然とマサヴェイへと向かう。

(・・・結局、あいつは何もしていない)

父の手を握り、静かに膝をつく末弟。

その姿は、まるで祈るように見えたが、アツレクにはただの傍観者にしか映らなかった。

(戦場にはいたが、剣を振るうこともなく、ただ守られているだけの存在。あまりにも頼りない)

黒雷の龍剣士——あの異形の力が戦局を変えたのは確かだ。

だが、その正体は未だ謎のまま。

アツレクはその存在に敬意を抱きつつも、同時に苛立ちを覚えていた。

(あの龍剣士がいなければ、俺たちは勝てなかった)

彼は拳を握りしめた。

その手には、戦場で流した血と汗の記憶が刻まれている。

(俺はまだ戦い足りない。この国を守るために、もっと強くならなければならない。

そして、誰が本当に王にふさわしいのか——それを見極められる時が必ず来る)

アツレクの瞳には、燃えるような決意と、弟への冷たい疑念が宿っていた。


僕はアツレク兄の瞳から目をそらし、ただ黙っていた。


長兄マサライ:「マサヴェイ。そなたには新しい任務を頼みたい」

マサヴェイ:「は、はい。僕にできることなら」


長兄マサライは気にせず続ける

「エドザー王国、サマヴァー獣人王国と対魔王での軍事同盟の締結を任せたい」



この大陸は4つの国と魔王によって分割されている

-西:サマヴァー獣人王国

 -中央:エドザー王国

 -東:ムツート連合国

 -南:神聖ヤマノーフ帝国

 -北:魔王が統治する“冥界の大森林”


270年前に龍魔王ヴィオデスが白銀の剣士ブロンに討たれてから、絶対的な存在となる魔王は不在だと思われてきた。

しかし、魔族が活発化していることから、魔王が空位ではなくなったと考えられている。

だから、確かに、対魔王で連携すべきだとは思う。


しかし、歴史的に4つの国間には争い合いがあり、お互いに仲がいいわけではない。

特に、“冥界の大森林”に接するサマヴァー獣人王国、エドザー王国、ムツート連合国はそれぞれ武を競い合い、お互いを頼るというようなことはこれまでなかった。


“連携すべき”と“連携する”というのはイコールではないのだ。



アツレクが舌打ちをした。

その音は小さかったが、寝室の静寂の中では鋭く響いた。

(またマサヴェイか……)

マサライの言葉に、アツレクの胸は煮えたぎる。

軍事同盟の締結——それは、外交と交渉、そして信頼の重みを背負う任務。

それを、このぐーたらで、何もできない、何も成せない弟に任せるというのか。

「マサライ兄っ!本気ですか!?」

アツレクの声が思わず荒ぶった。

(サマヴァー獣人王国もエドザー王国も、簡単に首を縦に振る相手じゃない。

魔王の存在が疑われるこの状況ではあるが、連携を呼びかけるなど、命を賭けた交渉だ。

それを、あいつに……?)

マサヴェイは驚きと戸惑いの表情を浮かべていた。

その姿が、アツレクにはますます頼りなく見えた。


アツレクが再び舌打ちをする。


だが、マサライは動じない。

その瞳には、何か確信めいた光が宿っていた。

(・・・・・兄上は何を見ている?

俺には見えない何かを、マサヴェイに見ているというのか?)

アツレクは拳を握りしめた。

この任務が、弟の無力を証明するものになるのか。

それとも——自分の目が曇っていたことを思い知らされるのか。


アツレクは三度目の舌打ちをする。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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