第13話「エゾモン72柱がひとりゾガン王」
第13話
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ゴシファーは
「マサヴェイ様。東の戦場にエゾモン72柱のひとりが現れたようです」
と言い、一礼をした。
ティーカップに頭を突っ込み、アップルティーを味わっていた綺麗な黒の艶をもつトカゲが頭をあげ、僕を見る。
マサヴェイ:「そうか。では行くか、ヴィオデス」
ヴィオデス:「わかったが・・・、もう少しまってくれ。まだ、アップルティーが残っているのだ」
マサヴェイ:「ダメだ。1秒たりとも無駄にはできない」
ヴィオデス:「ほいほい。トカゲ使いが荒いんだから、まったく。そもそも、余を誰だと」
マサヴェイ:「そこまで。それはもういいから、行くよ!」
ヴィオデスはしぶしぶと頷き、マサヴェイの頭の上にササササとくると、飛び上がった。
その瞬間、漆黒の布がパァッーーーとひるがえり、僕の体を包み込んでいく。
瞬間、全身に力が満ちる感覚。
それはただの装いではない。
ひとつながりの漆黒の龍のマスクとマントを纏った私は、ヴィオデスと一体となった。
マサヴェイ:「ふふふ。じゃあ、行こうか!」
胸元の漆黒のメダルには立体的な龍が刻まれている。
その黒龍が目を開けると漆黒の瞳の中の稲妻がギラリと光る。
ゴシファー:「留守はお任せください」
シスモはいつも通り羨ましそうにこちらをみている。
僕は頷き、空へと舞い上がった。
・・・・・・・・・・
戦場に、大きな気を放つ“それ”がいた。
エゾモン72柱のひとり、ゾガン王だ。
僕はゾガンの前にゆっくりと舞い降りた。
戦場の空気を震わせる巨躯が、ゆっくりと歩を進める。
ゾガン王──その姿は、鋼鉄と魔気が融合した威容そのものだ。
甲冑は、まるで夜空を閉じ込めたかのように光を吸い込み、肩から突き出す二本の角は、雄牛の怒りを象徴するように湾曲している。
金属のように輝く琥珀色の瞳が、僕を見据えて微動だにしない。
彼の背には、硬貨の嵐を生む魔力炉が埋め込まれており、歩くたびに、地面から金属が浮かび上がり、硬貨へと変じて舞い踊る。
その足元は、踏みしめた地が金属化し、まるで王の歩みに従うかのように道が生まれていく。
腕には巨大な剛剣が握られており、剣の根元には、かつて彼が征服した王国の紋章が刻まれている。
ゾガン王の存在は、ただの魔族ではない。
彼は“富と力”を体現する支配者であり、その容姿は、見る者すべてに「抗うことなき王威」を刻みつける。
ゾガン:「待っていたぞ、黒雷の龍剣士!」
僕は無言でゾガンに向かい合う。
ゾガン:「ふふふ。応えぬか。まあ、よかろう」
彼の周りで舞い踊る硬貨の量が増えていく。
ゾガン:「余の配下である6柱を倒したことは褒めて遣わす。どうじゃ、余の騎士とならぬか。ぐふふふふ」
僕は黒雷の大剣を構える。
ゾガン王の笑いは、金属が軋むような不気味さを帯びていた。
彼の周囲では、無数の硬貨が渦を巻き、まるで王の感情に呼応するかのように舞い踊る。
その一枚一枚が、かつて砕かれた剣、折れた槍、沈んだ王国の象徴であるかのように、鈍く光っていた。
ゾガン:「剣を掲げるか。それが答えか。よかろう。ならば、余が王たる所以を見せてやろうぞ!」
彼が一歩踏み出すたび、地が金属へと変わり、戦場は黄金と鋼の舞台へと変貌していく。
僕は黒雷の大剣を高く掲げた。
雷が刃に集い、空が震える。
雷鳴が轟き、硬貨の嵐を裂いて一閃が走る──戦いが、始まった。
・・・・・・・・・・
僕が踏み出すと同時に、ゾガン王の硬貨が嵐のように舞い上がる。
金属の風が吹き荒れ、視界が黄金に染まる。
だが、僕の瞳はその奥にある王の気を捉えていた。
ゾガン:「来い、小童!余の剛剣が貴様の雷を砕いてくれよう!」
剛剣が振り下ろされる。
地が割れ、金属化した地面が爆ぜる。
僕はその一撃を紙一重でかわし、雷を纏った大剣で反撃する。
雷の刃が硬貨の嵐を裂き、ゾガンの肩甲をかすめた。
ゾガン:「ほう・・・その雷、なかなかのものよ!」
彼は笑いながら、両腕を広げる。
周囲の金属が一斉に硬貨へと変わり、空中に浮かぶ。
次の瞬間、それらが弾丸のように僕へと降り注ぐ。
僕は剣を旋回させ、雷の盾を展開。
硬貨が弾かれ、火花が散る。
だが一枚、二枚、三枚──鋭く削られた硬貨が防御をすり抜け、肩を裂いた。
血が滲む。
だが、僕は一歩も退く気はない。
雷が剣に集い、空が轟く。
その一閃は、ゾガン王の硬貨の嵐を貫き、剛剣と激突する。
金属と雷がぶつかり合い、爆音が戦場を包む。
魔族もムツート軍も、ただその光景を見守るしかなかった。
──そして、静寂が訪れる。
煙の中、二つの影が再び向かい合う。
・・・・・・・・・
煙が晴れ、視界が戻る。
その瞬間、僕とゾガン王の瞳が交錯した。
言葉はない。ただ、互いの意思がぶつかり合い、再び、戦いが始まった。
ゾガン王の剛剣が唸りを上げる。
硬貨の嵐が巻き起こり、金属の雨が戦場を覆う。
僕は雷を纏い、刃を旋回させながら応戦する。
剣と剣がぶつかるたび、火花が散り、雷鳴が轟く。
血が流れる。
僕の肩を裂いた硬貨、ゾガンの脇腹を貫いた雷の刃。
互いに傷つきながらも、一歩も退かない。
ゾガン:「ぐふふ・・・なかなかやるではないか・・・!」
彼が笑った瞬間、僕は見逃さなかった。
わずかに剛剣の重心が崩れた。
硬貨の制御が一瞬、乱れた。
──今だ。
僕は地を蹴り、雷を纏った大剣を逆手に構える。
空気が震え、雷が収束する。
黒雷の龍剣士:「雷穿!!!」
一閃。
雷が咆哮し、ゾガン王の胸元を貫いた。
硬貨が砕け、剛剣が落ちる。
彼の巨躯が、ゆっくりと膝をついた。
ゾガン:「・・・見事・・・なり・・・」
その言葉を最後に、ゾガン王は崩れ落ちた。
硬貨の嵐が静まり、戦場に静寂が訪れる。
僕は剣を収め、空を見上げた。
雷雲が晴れ、昼間だというのに明るい星が瞬いていた。
・・・・・・・・・・
ゾガン王の討伐によって、ムツート連合国を揺るがしていた魔族軍の侵略はひとまず沈静化した。
だが、エゾモン72柱を束ねる大王──エゾモン大王の真意は、霧の中にある。
ゾガン王は倒れた。
だが、それは序章に過ぎないのかもしれない。
ムツート連合国は、冥界の大森林との境界線に防衛拠点を増設し始めた。
森の奥からは、時折、異形の気配が漏れ出していた。
僕は空を見上げる。
──嵐は、まだ遠くにある。
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