第10話「突撃の号令」
第10話
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お待たせしておりすみません。
トカゲがティーカップに頭を突っ込み、アップルティーを味わっている。
綺麗な黒の艶をもつトカゲ・・・、いやいや、ヴィオデスか。
確かに、僕の言うことを聞くことを条件に使い魔として召喚したが、トカゲのヴィオデスは本当に余計な事を何もしない。
毎日、ぐーたらと暮らしている。
そして、楽しそうで、満足そうだ。
羨ましい・・・
ひとりだけ、いや、一匹だけずるいぞ!
僕は軍議に出席し、それなりに判断を迫られる。
いや、正確には「よろしいですか?」といわれ、頷いているだけだが。
そして、もちろん、最後尾とはいえ出陣もしている。
そんな日々を繰り返していた。
トカゲのヴィオデス:「おい、マサヴェイ。いつまでやるんだ?」
マサヴェイ:「うーん、わからない」
エゾモン王には72の柱がいて、全柱の魔族軍団を合わせると2,723軍団になるという。
このまま毎日、戦を繰り返していても、数量的にも身体能力的にも劣る我々人間側が消耗していくだけだ。
それに人間は機械ではない。
終わりが見えないということ自体が不安を生んでいく。
高い士気を常に持続し続けるということは不可能だ。
僕もティーカップに口をつける。
アールグレイの香りが脳を刺激する。
突如、ゴゴゴゴゴーーーーーと地の底から音がし、大きく揺れ始めた。
ヴィオデスはティーカップから顔を上げると
「マサヴェイ!強い気を感じる。大物が来るぞ」
と言いながら、僕の肩に移動してきた。
ヴィオデス:「嫌な予感がする」
マサヴェイ:「うん、そうだね。すごい気だ」
ヴィオデス:「ふふふ、わかるか。さすがは、我が血を引くもの」
マサヴェイ:「それはどういうことなの?」
ヴィオデス:「気になるか?」
マサヴェイ:「気になるかと言われれば、気になるけど、どうしても知りたいわけじゃないよ」
ヴィオデス:「ははは、我慢しおって。教えてやってもよいぞ。ふふふ、でもいまは、そんな時間はなさそうだがな」
僕は「そうだね」と頷き、天幕から出る。
・・・・・・・・・・
モードル・アシテミール公爵が雷鳴のような声を張り上げ、ビリビリと空気が震えている。
「前列、盾を構えろ!後列、砲撃の準備を急げ!」
ドドドドド・・・と地面を踏み鳴らす音が連なり、戦場の鼓動が始まる。
陣形は次々と整い、旗がはためき、甲冑がギラリと光る。
その光景はまるで巨大な生き物が目を覚ましたかのようで、壮観だ。
遠くに魔族の大軍の姿が見えている。
その先頭中央に大きな存在を感じる。
ヴィオデス:「あれだな」
僕はじっとその存在を凝視する。
・・・・・・・・・・
突撃の号令が空を裂いた瞬間、戦場は咆哮した。
地面が揺れる。
無数の足音が一つの鼓動となり、鉄と革と怒声が混ざり合って、巨大な生き物のようにうねり始める。
前列の盾兵が一斉に駆け出し、槍の穂先が太陽を弾いて光る。
後列の砲兵は狙いを定め引き金を握る。
魔族の軍勢も応えるように咆哮を上げる。
黒煙を纏った獣たちが地を蹴り、牙と爪が閃く。
空気が裂け、魔力の奔流が地面を焦がす。
両軍の衝突は、まるで山が崩れ、海が割れるような衝撃だった。
甲冑が軋み、肉が裂け、叫びが空を突き抜ける。
だが誰も止まらない。
この戦場は、意思を持った怪物のように、ただ前へ、ただ喰らい合う。
漆黒の甲冑に身を包み、ウレーナ・アシテミールは戦場の中心を駆ける。
彼女の剣が振るわれるたび、魔族の前衛が裂け、恐怖が波のように広がっていく。
その姿はまるで夜の嵐。
静寂と死を纏いながら、確実に敵陣を切り崩していく。
「戦姫が抜けたぞ!押せ!」
兵士たちの声が上がる。
彼女の一撃が、軍全体の鼓動を加速させる。
士気は炎のように燃え上がり、我々の陣形が一気に前進する。
盾兵が踏み込み、槍兵が突き上げ、砲撃が魔族の後列を焼く。
ウレーナの存在が、まるで心臓の鼓動のように軍を動かしていく。
彼女が斬れば、兵が吠える。
彼女が進めば、陣が押し出す。
戦場そのものが彼女の意志に呼応しているかのようだった。
魔族の軍勢が一瞬、たじろいだ。
その隙を逃さず、モードル公爵が号令を飛ばす。
「全軍、突き崩せ!黒の戦姫が道を拓いたぞ!」
旗が翻り、地鳴りのような突撃が再び始まる。
我々の軍勢は、今や獣のように吠え、波のように押し寄せる。
ウレーナの剣が空を裂き、勝利の兆しが戦場に差し始めていた。
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