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作者: NOKO

私は39歳、独身、特にこれといった特徴のない会社員だ。

毎日の小さな楽しみは、仕事帰りに近所の海辺を散歩すること。潮風に当たりながら、夜の静けさに浸る時間が好きだった。


8月13日。世間は夏休み。だが私は今日も朝から晩まで働いて、やっと海辺にたどり着いた。


夜風が心地よく吹いていた。そんな時、ふと波打ち際に佇む“子供”が目に入る。こんな夜中に? 月明かりはあるが、その顔も服装もはっきり見えない。ただ背格好から、小学5、6年生くらいに見えた。


虐待……?

けれど声をかけるのも躊躇われた。不審者と思われかねない。

葛藤の末、私は正義感を奮い起こす。

「こんばんは。こんな夜に何してるの? お父さんかお母さんは?」


返事はない。


不安になって顔を覗き込んだ瞬間――



それは“子供”ではなかった。首が完全に反対に折れ曲がり、岸の方を向いていた。身体には無数の刃物が突き刺さっていた。


私はその場からの記憶をなくし、次に気づいた時には、自宅の玄関先に立っていた。


後日、聞いた話によると、昔からこの辺りでは“刃物を海に投げると縁が切れる”という言い伝えがあるらしい。


あれは、親から縁を切られた存在だったのか。帰る場所を失い、ただ海に立ち尽くしていたのではないか。


なぜ、最後にあれは私の方を向いたのか。


私の中に残る、あの得体の知れぬ恐怖と、ひどく寂しい感情。



――きっと私は、一生忘れられない。




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