(一章)
テーマ:小説
薫からグラグラ言われてから次の日。
登校途中、後から声をかけながら走って来るのは同じクラスの和泉だ。
「よぉ悠一!急がないと遅刻するぞ。」
と良いながら去って行った。
俺は時計を見て咄嗟に慌てて走り出した。
何とか遅刻は免れたが、
自分の席に着くと否や隣に座っていた薫が俺の方を向いて
「今日、半日で授業終だからどこか行かない?どうせ暇でしょ?」
「まぁ良いけど、どこ行くんだ?」
「何処でも良いわよ!」
「…」
「私、想うのよ卒業まで一週間くらいしか無いじゃない?
だったら思い出作りくらい良いんじゃない!」
こんな話しをしていると担任が入って来たのを
横目で確認すると前へと向き直った。
四時限目の終礼チャイムが鳴ると否や隣の席にいた
薫が声をかけようとしているとこに和泉がやって来て
「ちょっと付き合え」
と言われるがままに階段の踊り場に連れて行かれ,
そこには他クラスの奴が2、3人座り込んで
俺達が来るのを待ってる様に見えた。
「待たしたな!」
「そうでもない!」
「御呼び立てしてすいません!
実はこのあと付き合ってもらいたい場所が在るのですが、
構いませんか?もしご都合が合えばの話ですが…。」
ちょうどそのタイミングで予鈴が木霊した。
「ホームルームが終り次第もう一度確認に行きますので
それまでに考えといてください。」
男たちは用件を言い終わると踵を返し、階段を降りて行った。
「はぁ」
なんだなんだ一体何なんだあいつ等は。
俺はあいつ等とまともに話しすらした事無いぞ!
何かの間違いか!
「いいえそうじゃありません!我々は目的を持って貴方の処に
出向いた訳ですから…。
いずれ貴方にも解る時が来まよ!」
何気なくそう呟いたのは、小柄な女子生徒だった。
女子生徒は木村の顔を認めると、
「貴方は近いうち興味を持つはず」
そう言うと、階段に腰を下ろしこちらの様子を伺って居る様に見えた。
「和泉はあいつ等と知り合いか?」
「違うけど、余り気にするな!」
「ところでお前は行くのか?」
と和泉に問い掛けた時だった!突然耳元で
「悠一君達戻った方が良いですよ!
今こちらに薫さん向かっている…」
と囁く声が聞こえ、振向くと円らな眸が俺を凝視していた。
動揺した俺は表面に出さずに、唯、只管堪えていた。
然し、女子生徒は表情一つ変えずに
俺の額辺りを見つめたままフリーズしている。
俺は咄嗟にその場から離れ自分のクラスに戻って行った。
「なぁ、和泉!あいつらは何で俺を誘ったのかな?」
「俺には解らんな!で、行くんだろう?」
「知ってるとは想うが薫との…」
「私がなんだって?」
「何でもない!」
と言いつつ、でもどうしよう薫がわざわざルンルン気分で迎に来たと言うのに
此処で断って気まずい空気が流れるのも避けたい処だ。
まて待てさっきはこうも言ってたな
『都合が合えばの話ですが』
とか言ってたな、取り合えず今回は見送りにしよう。
「あのさ和泉、あいつらに伝言頼んで良いか?
『今日は無理だから明日にして!』と伝えてくれ!」
「解った!」
そして放課後…。
制服姿のまま界隈へと繰り出した。
「最初は腹拵えしたいわね」
と言われ、ファーストフードに入り少し話しをして店を後にした。
次に来たのはカラオケ、バッティングセンター、ボウリング
最後が行きつけの喫茶店である。
今日は疲れるな!
「すいません、カフェラテとカプチーノ」
むろん独り言ではなくウェイトレスに注文したのだが、
ちなみに俺はラテの方だ。
「今日はどうだった?少しは楽しめたか?」
「まあそこそこね。そういえば明日で卒業だけど、
高校行くんでしょ?何処の学校行くの?」
「俺か、三校。古河三高だけど、薫は?」
笑顔で「一緒、三高よ!」
何が嬉しいやら解らんな!
「和泉も三校だってよ。」
「あっそう!」
顰めっ面に答えた。俺、変な事言ったかな!
興味のない話題を振ったせいか!
卒業式も無事終り校門近くで和みムードが流れる中、
見覚えのある姿が俺の方へと近づいて来た。
昨日帰り際に会話した女子生徒だった。
と想い気や俺の胸ポケットに紙切れをすッと入れ、耳元で
「暇になったら読んで…」と言うと人込み紛れる様に去って行った!
何だろうないったい…。
「悠一! こんな処に居たのね!帰るわよ。」
薫はそう言うと俺の衿元を持って引きずるように引っ張って行った。
今度は何処に行くのかな?