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第二話 はぐれ者同士

 講習と言うものは退屈なものだ。ダラダラと聞いてもいいのだが、『スキル』の効果が詳しく分らない内は少しでも情報を集めておかないと『(ホール)』に潜ってあっという間にお陀仏になってしまう、なんてこともある。かつていい『スキル』が発現したと自慢していたご近所さんがいつの間にか死んでいたことを彼は思い出した。


「で、この地上ではよく見る花なんですけど。ダンジョンでは土の中に潜む魔物の背中に生えていたりするので気をつけましょう。というか、基本的に土の地面があったら警戒は必要です」


 講師はこのダンジョンで中堅として有名なドラス・沢渡さん。かつては全戦で活躍していたが、モンスターとの戦闘で後遺症を伴うほどの怪我を負ってしまい現在は新人育成に熱を入れている有名人である。


 彼に育てられている新人は大成しやすいということで有名にもなっている。


 だが、その噂を過信してはいけない。それは生き残った場合の話であり(ホール)の中に消えていった人間は数知れないのだ。


「では、二人一組になって今から配られる紙に書いてある問題を解いてみましょう。なに、対処法を考えるだけなので」


 その言葉に周りがざわつく。


「見ず知らずの人と組むのは不安ですか?ですが、(ホール)に潜るときは知らぬ人間と組むときはままあります。これはその練習ですよ」


 そう言われたら納得だ。基本的に固定パーティと呼ばれる仲良しな集団以外だと知らない人で組むことはままあるらしい。むしろ、ここの講習から知ってる人を作れという訳か。


「あのー、君のスキルは何かお持ちですか?」


 いきなり背後から話しかけられた。やはりあちらもパートナーを探しているようだ。男性だったがここは素直に答えておこう。


「『愛パワー』です」


「愛パワー?あ、アイドルとか持ってる…………なるほどなるほど」


 そう言って考えるそぶりを見せながら男性は自然にフェードアウトしていった。


 それも仕方ない。アイドルだったらコネで最初から個別で講師をつけているのに集団講義に参加しているような人だとたかが知れてると察したんだ。


 実際、いまでもどこまでが基準と分かってもいないものでもあるため話しかけられ、そして話していくうちにほとんどがパートナーを見つけていった。


 まずい、これ本当にあまり者同士で組むことになりそうだ。せめて早く見つけないと…………


「あのー、貴方って『愛パワー』の人ですよね?」


 そう背後から(また後ろからだな)話しかけてきたのは自分と同い年に見える少女。なにやらこちらの様子を伺いながら寄ってくる。


「私、『狙撃』のスキル持ちなんです。でもちょうどいい前衛の方が居なくって、『愛パワー』って前衛向きって聞いたことがあるので一緒に組みませんか?」


「確かに前衛向きって言われてるし、数値もまあまああるから何とかなるだろうけど…………不安定と思わないのか?」


「大丈夫だと思います。貴方がここにいるってことはそれなりの実力はあるとみてますから」


「信頼が厚いなぁ。知ってる人に『愛パワー』を持ってる人がいるのか?」


「ええ、似たようなものです」


 なんだかちょっと怪しい気もするが、似たようなスキルと照らし合わせているのだろう。全部は信用できないが、最初から前衛をやる予定ではあったから問題はない。


「分かった、よろしく。俺はリクト。君は?」


丹野(ニノ)です。よろしくお願いしますね」


 そう言って彼女は俺に微笑みかけた。


 パートナーが決まったらドラスさんに報告しなければいけない。後から不正が無いようにしっかり顔を確認してから試験に臨むのだ。


「それじゃあ、早速だけどドラスさんのとこにいこうか」


「はい」


 そう伝えて俺はドラスさんのところに歩いていく。


「…………本当によろしくお願いしますね」


 突然、背後にぞくッとした感覚が走る。いやな予感がした際になる悪寒だ。


 もしや、この試験中に何か事故が起きる?安全管理はしっかりされているしそんなはずはないと嫌な予感を忘れようと早足になっていた。


 こうして丹野さんと俺はパートナーとなり試験に臨むことになった。


「だって、私がこんなに愛していますもの」


 あの時の小さな呟きは、俺の耳には一切届いていなかった。


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