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第一話 愛、向けられてるらしいです

 

 時は2XXX年、人類は窮地に立たされていた。


 紛争戦争、環境問題や流行するウイルスにも負けず多くの国家が破滅したり新たに誕生したりと緩やかな衰退をしながら発達という矛盾を抱え生き延びていた。


 だが、その衰退も急激に進むことになる『事象』が発生した。


 地球に突如、無数の『(ホール)』が発生し、そこに住まう住民らは『(ホール)』の中へ消えていった。その数は数十億と未曾有の大災害とされ世界各国で穴の調査に向かった。


 しかし、外から『(ホール)』に侵入した調査隊は誰一人帰ってくることはなかった。


 何度調査しようとも誰も帰ってこないため、誰もが頭を抱えた『(ホール)』の発生から数年後、『(ホール)』から『事象』が発生した日に消えたはずの人間たち、『帰還者』が返ってきた。


『帰還者』の服装は一昔前の物になっていたのは『(ホール)』の中でかろうじて生活していたため特に疑問には思わなかったが、問題となったのはその服の上に着けていた装備だった。


 まず地上では存在しない物質で作られたナイフや剣、明らかに鉄よりも固いのに鉄よりも軽く加工も現時点の地上の技術では製錬不可能な金属。そして、彼らが持ち帰ったこの世のものとは思えない色や形をした肉や果実、骨など…………今まで味わったことのない美食や夢のような効能を持ったものなど現実と思えないものを持ち帰ったのだ。


(ホール)』から帰ってきた彼らの話を聞くと、あの中にはモンスターが大量に発生しており、たくさんの犠牲を出しながら生き延びて、気づいたらよく分らない特殊能力を手に入れていたという。


 それは生物を殺すのに特化したものであったり生活必需品を作成するものだったりとまるでゲームのような技術や超能力なものだったため総じて『スキル』と呼ぶようになった。


 地上にいた人間も『スキル』を手に入れられないかと『帰還者』と共に『(ホール)』に潜った結果、モンスターを殺害することによって『スキル』を身に着けることが出来るという結果が分かった。また、地上でもその道の職人や達人と呼ばれる者たちには彼らの得意技が『スキル』として見についているということも発覚したため世界そのものが変質したのではないかと議論を呼んだが、これは別の話。


 そういった経緯があり地上と『(ホール)』でかろうじて生存していた者たちは資源を求め、そして生きる場を求め協力し合い大きな衰退から発展を繰り広げることとなる。


『帰還者』らはトレジャーハンター組織を立ち上げ地上で才能ある人材を見極めては勧誘し危険と夢が釣り合う世界の開拓を開始して早数十年、ここに一人の青年の男が居た。


「愛ってなんだよ、こっちが聞きたいわ!」


 彼は思わず持っていた紙を叩きつけた。誰だってそうする、特に恋人がおらずモテない奴らならこの気持ちを分かってくれるだろうと思いながら。


 ここの近くには『(ホール)』がある、多くの者が恐れる魔物が跋扈し、底に眠る幾千の秘宝を秘めた天国と地獄を両方味わうことになる謎を秘めた場所だ。


 最近、一人暮らしで金銭面に余裕がなくなってきてヤバいと思っていた矢先に『(ホール)』にて生き残る手段として活躍する『スキル』が発現した。


 発現したと言っても感覚的なもので、その時は何か力が湧く感覚がある程度なのでどんな能力を秘めているのかは当人からは分からない。彼の場合、急に身体能力が上昇し、階段から転げ落ちた際に無傷でぴんぴんしていることから異常と思い診断してもらうことを決意した。


『スキル』鑑定専門の『スキル』を持った人が在住する役所のようなところに行ってやっと知ることができるのだが…………


「『愛パワー』…………恋人がいる人が持ってたらそれなりに強くなれるってやつ…………どうしろというんだよ!愛され度が1000あるって基準も分からないのにさぁ」


 愛とは何かと聞かれたら、それは概念で人それぞれが持つものとしか答えないだろう。


『愛パワー』の解説に移るが、このスキルは『愛され度』という謎基準のパラメーターの程度によって身体能力が強化されると言うものだ。


『愛され度』についてはそのままでどれだけ愛されているかを当人だけが知ることが出来るよく分らないパラメーター、となっている。


 実際に持つ人は少ないのだ。割と有名どころではあるが実際に持っている人は少ないし、大抵恋人持ちとかアイドルだったりするので数値として見ることはプライベートの観点上不可能となっている。


 なので『愛され度《1000》』がどれだけ高いのか分からない。この愛されは他人だけでなく親も含まれるということなので余計に基準が分からない。『愛され度』そのものが世間一般に公開されている者ではなく、『スキル』による差別を防ぐために秘匿されている場合もあるため、この『スキル』を持った人間に直接話を聞くほかない。


「はぁーっ、身体測定もしてないから実感わかんねー」


 トボトボと『(ホール)』入坑許可の申請だけした帰りにそうぼやく。入坑許可を得てもすぐに『(ホール)』に入って稼ぐことはできない。無知のまま『(ホール)』に入り死ぬのを防ぐための制度があり、多少の講習を受けたのちに入坑する許可を得られるのだ。


 ただ、準備だけは必要だ。生活費を稼ぐためのバイトにも都合を着けなきゃいけないし、『(ホール)』に潜るための準備をしなければならない。


 多少の人生経験を稼ぐついでに一攫千金を夢見るためとはいえ、ままならぬことが多い。


「武器とかどうすっかな。いや、盾とかで一回防御固めた方がいいのか?」


 彼はスマホの端末でネット上に転がる武器についての話を検索した。この時には役に立つかどうか分からない『スキル』のことは頭の中から抜け落ちていた。


 この時にもっと早く調べておけばよかったと彼は後悔することになる。




 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


『愛パワー』希少度3(10段階あるうち下から三番目、つまりそこまでレアじゃない)


 効果・このスキルを持つ対象の愛され度合いによって身体能力向上。

 『愛され度』が一定数溜まると追加効果を得る。『愛され度』を得る条件は愛を対象に向けてどれほど注いでいるか。愛を向けていた対象に対して悪感情を持った場合は数値の変動アリ


 《+1》そこそこ意識する程度の仲がいる

 《+2》淡い恋愛感情を向けている

 《+3~》非常に強い愛情を向けている分だけ数値が増加する


 愛され度《10》―再生能力《微小》を付与

 愛され度《20》―味方全体にダメージ軽減《微弱》を付与

 愛され度《30》―味方全体に攻撃力増加《微弱》を付与

 愛され度《40》―即死するダメージを受けた際に必ず生き残る

 愛され度《50》―再生能力《小》を付与(上記の再生能力《微弱》と重ね掛け可能)

 愛され度《60》―味方全体にダメージ軽減《小》を付与(上記と重ね掛け可能)

 愛され度《70》―味方全体に攻撃力増加《小》を付与(上記と重ね掛け可能)

 愛され度《80》―愛の底力(一定時間全ステータス上昇及び強化効果付与を対象とその場にいる愛され度を貢献している順に与える)

 愛され度《90》―愛の広がり(味方全体に常時回復《小》を提供)

 愛され度《100(限界値)》―『最・愛』(全ステータス向上。幸運値上昇。ターゲットを取りやすくなる)


 愛され度《100~???》―【これ以上は危険な領域になります。そもそもこのようなことにはなるはずが3.fr@t@ueki、h.zwe.】



 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 真相を知るのは、もう少し先の話。


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