放送室へ、そしてグングニルの強さ
思えば、フェイラー以外の全ての人に蔑まれてきた人生だった。
魔法の適性というものは、特に誰かに確認されたり神託を受けたりするわけでもなく、生活するうちに自ずと見えてくるものだった。
例えばだが、火の適性がある者は年中同じ格好でも涼しい顔をして生きているし、水の適性がある者の近くにある植物は育ちが早い。
土の適性があるものは物を作る時にいい造形になるし、命の魔法が使える者は小さいころから病気せず快活である。等である。
両親はどちらも4属性全ての適性に恵まれ、兄と姉も同じだった。だが自分だけは全ての適性が無く、虐げられてきた。
だが意外にもアリスには魔法に対する忌避感というものはなく、魔法の勉強や、教養の勉強は欠かさなかった結果、勉強だけは家族の誰よりも、ロスマギルス魔法学校へも入学することが出来た。だがそれは地獄の日々の始まりにすぎなかった。
この国では魔法学校へ入学するのは12歳と決まっている。それまでは近場の友人と魔法を見せ合ったりして切磋琢磨し、魔法の腕を伸ばす。それだけで魔法学校には入れるのだが、上を目指すものはそれに加えて勉強に励み、やっとロスマギルス魔法学校のような大きな学校へ行ける。
フェイラーはこの切磋琢磨する相手が出来ず、本来大きい学校には行けずに12歳になると雑用仕事や奴隷になったりするのだが、極めて稀に勉学に励み、ロスマギルス魔法学校のような実技の試験がない学校に入る者もいる。アリスとカイトもそのうちの二人であった。
そしてその二人は同じフェイラーなので、一年の時からある程度気が合う仲間であった。
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校舎前広場から校舎側へ逃げながら、駆け足でカイトと話す。
「これ、どうする? 今まで皆に虐められてきたけど、仕返しするチャンスじゃない?」
「…う~ん、でもこんな白昼堂々と大きい学校の校長を暗殺する相手ですよぅ、コンタクトをとったところで殺されると思いますがぁ…」
「でも、私は今凄くワクワクしてる。いじめて来た連中を殺してやろうかと思ったことも何度もあるのに、それをする力が無いのが今まで辛かった。殺すとは言わないまでも、昔人間の間で使われていた銃を使って、皆を見返してやりたい。」
「銃?っていうのはぁ、火薬で弾を飛ばして殺傷能力を得るあの武器でしたかねぇ?今やこの世界は土魔法と命魔法を使って物理対策の魔法も確立してきたんですよぉ?あの校長がやられたのはびっくりしましたけどぅ、流石にちょっと勝ち目が薄いんじゃないですかねぇ?」
そう言ってカイトと広場を出るが、やっぱり諦められない。
「私は放送室へ向かうよ。さっきグングニルと名乗った連中が学校放送を使っていた以上、校舎の放送室を使ったのは間違いない。カイトは来ない?」
そう言うとカイトは一瞬迷ったが、少し目に光を宿してこう言った。
「この5年間仲良くしてきた一番の友達、いやもう親友といえるでしょうかねぇ。その人と道を違えたところでいい未来なんて見えませんよぉ。僕も行きます。」
「そうか…ありがとう!!」
そういう会話を終え、カイトと放送室に全速力で向かう。魔法実技は適性がないからダメダメだったが体力は学校でも随一なので、他のぎゃーぎゃー騒ぎながら担任の指示で教室へ向かう生徒を追い抜かして放送室がある階へついた。
そこにはロスマギルス魔法学校の教員が10名ちょっとと、手を挙げながら放送室から出てくる見慣れない格好の男が3名ほど出てくるところであった。
「どうやってこの学校に侵入したか知らないが、拷問に掛けられる事は覚悟しておけ。お前らはここで捕らえて王都へ送り込む。」
「へぇ。王都ってここからどんくらいかかるんだい?俺らは口を割らねぇからその間に餓死しなければいいがね。」
「無論、命の魔術師を同行させる。死ぬことは…」
その瞬間、話していた1人は目の色を変えてこう言った。
「魔術師?あぁそうか、そういえばここには魔術師しかいないんだもんな。」
不可解な目をした教員だったが、すぐに目の色を変えて土魔法を作動させ捕縛しようとするが、
「魔法に頼ってるからダメなんだよ。俺らは全員魔法が使えない集団。フェイラーが集まってこの世界に復讐するために、準備をして待ってたんだ。」
と言い、3名が同時に無造作に腕を振るった。
「捕らえよ!!土魔法で腕と足を固定するんだはっ!?」
突如奇声をあげたと思いきや、唐突に話していた教員の首から鮮血が飛び散る。
残り二人の目の前の教員は胸から大量に出血していて、目を見開いて下を向きながら動くことはなかった。
恐らくほぼ即死していたのだと思う。
周りの教員が動揺した隙に走り出した3人は、全ての教員の首を切り裂いて終わらせた。教員たちがここまで弱いとは思わなかったが、やはり魔法学校は安全だと気を抜いていた結果なのだと思う。
と思っていると、3人のうち一人の目がこちらを向いた。
その一人が「シュゥゥゥ」と歯の隙間から鳴るような音を出すと、他の二人がすぐさまこちらを向き、武器を構えた。見たこともない武器だがあれが銃だろうか。
「待って待って待ってください!!!」
アリスがそう声を上げたが、相手はもうこちらに武器を向けて構えている。
銃は、トリガーと言うものを引くだけで発射できると本で見たことがあるが、人差し指には力がこもっていて、今にでも弾が発射されそうだ。
カイトはもう血の気が引いて、今にでも倒れそうな顔をしている。
そのうちにもう相手は1秒もすれば自分たちの事を殺すだろう。走馬灯が走る。
その瞬間世界が少しゆっくりに見える。だが効果的な言葉を言わないとここで1秒後に私は死ぬ。
走馬灯を見ているためか、なぜかゆっくり考えることができ、恐らく一番生存率が高いであろう言葉を叫ぶ。
「私達はフェイラーです!!!!!!」
その言葉で男たちは目を見開いた。
そして、1秒ほど顔を見合わせて頷いた。
「来い」
間一髪、死の危険から生き延びた私は放心していて、その言葉に対して何も行動できずにいたが、
「三秒以内に決めろ、生かすか殺すかはそれで判断する。」
そう言われ、自分が生きることが出来たのだと改めて思い、ガクガク震える体を引きずりながら男たちに付いていった。
…後ろでカイトが本当にほんの少し口角を上げていたことには気づかなかった。
読んでいただけた方、ありがとうございます。
仕事が忙しくて更新は不定期になるかと思いますが何卒よろしくお願いします。