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 一歩踏み入れてまず最初に目に入ったのは、乳白色の壁と立派な暖炉。

 そして大きな窓に掛かる金糸の模様の入った豪華なえんじ色のカーテンと、えんじ色のカーペットが敷かれた床に重厚感のあるテーブルやソファーなどの家具。

 その全てがとんでもなく高価なものであることが一目で分かる。

 レイチェルにとってそこは、なんとも落ち着かない空間だった。

 ライリーは当たり前のようにミリアムを隣に座らせ、テーブルを挟んだ向かい側にレアンドルが腰掛ける。

 残った席はレアンドルの隣しかなく、レイチェルは渋々そこへ腰を下ろした。

 誰も口を開かず、使用人がハーブティーを淹れる音が微かに部屋の中に響く。

 人数分のハーブティーを淹れると使用人はお辞儀をし、静かに部屋を出ていった。

 パタンと扉の閉まる音を確認すると、


「で? この並びはおかしいんじゃないかしら?」


 レイチェルはレアンドルに席がえを遠回し(のつもり)でお願いしてみる。

 とはいえ、ライリーがミリアムの手をしっかりと握っているあたりで、十中八九無理であろうことは分かっていたけれど。

 やはりというかレアンドルは一言「諦めろ」と言って、視線をレイチェルからライリー達へ向ける。

 

「さて。ある程度察しはつくが、念のため詳しく説明してくれるかな?」


◇◇◇


 話は思った以上に進んでいたと言えばいいのか。

 まさかミリアムのためにライリーがそこまで考えていたなど、思ってもみなかった。

 バフェット家と縁を切るというのは、レイチェルも賛成だ。

 きっとあの父と兄ならば、縁切りをしなければ恥も外聞もなくいつまでも金を無心しに来ることなど容易に想像できる。

 だが少しばかり多めの金を目の前でチラつかせれば、きっと目先の金を取って簡単に縁切りのサインをすることだろう。

 これほどまでに強く望まれているミリアムならば、泥舟に乗ったあの父と兄(バカ)と縁が切れさえすれば、きっと幸せになれるはずだ。

 レイチェルは真剣な面持ちでライリーをしっかりと見つめ、そして深々と頭を下げた。


「私の大切な姉を、どうぞよろしくお願いいたします」


 この時点でレイチェルは、ミリアムの婚約が成立し、あのバカ達と縁が切れたのを見届けたらさっさと泥舟からトンズラ(死語)しようと考えていた。

 今日のパーティーでもし自分にも良い縁があれば、などと、ほんの少しでも期待していなかったと言ったら嘘になる。

 だがそんなに都合良くコトが運ぶはずもなく。

 まあ、一番の希望はミリアムの相手を見つけることだったのだし、その相手が見つかっただけでも御の字。

 これ以上を望んだらバチが当たるかもしれないし。

 ーーもともと庶民育ちだったのだ。

 生まれながらの貴族令嬢であれば庶民の生活など無理だっただろうが、子爵令嬢となった今も庶民に毛が生えた程度の生活なわけで。

 またもとの生活に戻るだけ、なんて思っていたのに。

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