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「ん? 何を言っている? 君が彼女をここへ連れ出したからこそ、彼女のあの表情(かお)を引き出せたのだろう?」


 レアンドルがレイチェルの頭にポンポンと優しく手を置く。

 思わぬ優しい言葉に、レイチェルの顔がカァッと熱を帯び出す。


「こ、子ども扱いしないでくださいっっ!」


 レイチェルは赤くなっているだろう顔を見られぬよう、廊下の隅に置かれている豪華な花瓶にススッと顔ごと視線を向けた。

 普段のレイチェルであれば、この花瓶一つで庶民が何年生活出来るかなどと思って呆れた溜息をつくところではあるが、今の彼女にはそんな余裕など全くと言っていいほどになかった。

 とはいえ、先ほどの言葉にレイチェルの心がジワジワと喜びの声を上げており、ボソリと「ありがとう」と呟く。

 かなり小さな声ではあったが、レアンドルの耳には届いたようだ。

 素直なのか素直じゃないのか、自分の周りにはあまりいないタイプのレイチェルの様子に、レアンドルはクツクツと可笑しそうに笑った。

 そんな彼にムッと頬を膨らましつつ話を逸らそうと、レイチェルは口を開く。


「そ、そんなことより、ここはライリー様のお家ではないわよね? あなたのお家よね?」

「……私の家だがな。あいつはいつもあんな感じだぞ?」

「いいの?」

「ま、いいんじゃないか? ライリーだしな」

「ふぅん」


 チラリと横目に見ればレアンドルが楽しそうに口角を上げた横顔が目に入り、その瞬間、何だか背中がザワつくような嫌な予感がした。


「あの……」

「着いたぞ」


 レイチェルが口を開くのと同時にレアンドルから目的地に着いたことを知らされ、バフェット家とは比べ物にならないほどに立派な扉を開けて中へと通されてしまった。

 これが逃げ出す最後のチャンスだったのだと理解したのは、もう少しだけ先のこと。

 その頃にはもう外堀は埋め尽くされて、そそり立つ壁に囲まれて脱出不可能となっているわけだが、幸か不幸か今のレイチェルはそのことをまだ知らないのである。

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