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「ライリー様がミリアム姉様に求めるものは何でしょうか?」


 レイチェルの質問にライリーがゆっくりと視線を向ける。

 レイチェルの真っ直ぐな視線を受け止めつつ、ライリーは質問を質問で返す。

 

「求めるもの?」

「はい、あなた様がミリアム姉様に求めるもの、です」


 ライリーが少し考える素振りを見せ、何かを発しようと息を吸ったその時。


「はい、とりあえず一旦ここまでにしてくれ。この続きは場所を変えてからにしよう」


 そう言ってレアンドルがレイチェルとライリーの間に割って入り、レイチェルとライリーの舌打ちがシンクロした。


「あのなぁ、ここだと人目があるから言っているんだが……。ったく」


 面白くなさそうにブツブツと呟くレアンドルは置いておいて周囲に気を向ければ、彼の言うようにこちらの動向を注視している令息令嬢達がいる。

 確かにここで話す内容ではなかったと、レイチェルは小さく息を吐いた。

 横にいるライリーに視線を向ければ、先ほどまでの無表情から一転し、微かではあるが優しげな笑みを浮かべてミリアムに「場所を移しますよ」と言葉を掛けている。

 ミリアムはそんなライリーにふんわり笑顔で「はい」と答えて立ち上がった。

 ーー何か二人とも、いい感じになってない?

 勝手知ったるレアンドル(他人)の家とばかりに、ライリーはミリアムの速度に合わせホールを抜けてプライベートエリアへと進み、二人の後ろをレイチェルとレアンドルが並んでついていく。

 隣に並ぶミリアムへ優しい視線を投げかけるライリーの横顔を見ても、深い皺を刻んでいたはずの彼の眉間には、今は皺の一つも見当たらない。

 特に会話を交わしていない二人ではあるが、二人の間の空気は何とも穏やかでほんのりと甘く感じる。


「……あれこれ聞く必要あるのかしら」


 思わずポロッと本音が口から溢れ、それにレアンドルも頷きながら呟いた。


「もう十年以上の付き合いになるが、あいつのあんな顔を初めて見たんだが」

「ミリーも満更でもないみたいだし、何か、私の心配なんて要らなかったかも……」


 自分で言っておきながら、何だか少し寂しい気持ちになる。

 この三年間、ずっと二人で手を取り励ましあってやってきた。

 のんびりほんわかしたミリアムのことは、自分が守るのだと思ってこれまでやってきたけれど。

 もう、私の手は必要ないのかもしれない。

 そう思った途端に、胸に大きな穴がポッカリと空いてしまったような、埋めようのない寂寥感(せきりょうかん)に襲われる。

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