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「プロポーズ……!?」
レイチェルはギギギ……と軋むような音が聞こえそうなほどにぎこちなく、ライリーへと顔を向けた。
彼は真剣な面持ちで、熱い眼差しをミリアムへと向けている。
視界の端には驚いたようにポカンと口を開けてライリーを見ているレアンドルが映るが、今のレイチェルにはそんなことはどうでもよかった。
「この方が、ミリーに、プロポーズ?」
いやいやいや、この方ミリーに会ったばかりよね? 二人きりで話したのは、ダンス一曲分ちょっとくらいの時間だけでしょ?
それでプロポーズって、どこがどうなってそんな話になってるの?
ーーレイチェルは混乱していた。
確かにこのパーティーに参加したのは何より大切な姉、ミリアムがヒキガエルとトカゲから逃れるために結婚相手(婚約者)を探すためではあった。
レアンドルの言った通り、このライリーという男性ならば条件にピッタリではある。というか、願ってもない相手だ。
だがしかし。
これはちょっと、話が上手くいきすぎじゃあないだろうか? 上手くいきすぎて逆に何かあるのではないかと疑ってしまうのは、仕方がないといえるだろう。
レイチェルはコクリと小さく喉を鳴らすと、意を決してライリーへと声を掛けた。
「あの、ステラート伯爵子息様は……」
「ライリーでいい」
「……ありがとうございます。では遠慮なく。ライリー様は、ミリー……ミリアム姉様に本当にプロポーズされたのですか?」
「ああ。まだ返事はもらっていないが、な」
そう言ってライリーはレアンドルをジロリと睨みつけた。
……あ〜、これ。プロポーズの途中で私達が来ちゃったから、邪魔されたと思って不機嫌なんだ。そりゃそうだよね。
いや、それは本当〜に申し訳ない。
レイチェルは心の中でライリーに謝罪した。
とはいえ。
彼の熱い眼差しを見てしまえば、ミリアムに対して何らかの執着心が芽生えてしまったのだろうことが分かるが、それとこれとは話が別である。
彼のミリアムに対する気持ちや、彼がミリアムに望むこと。
そして一番大事なことは、彼の婚約者になったとして、ミリアムが幸せになれるのかということ。
それをしっかりと確認して納得出来なければ、どんなに爵位が上の人間だろうとミリアムは絶対に渡さない!
レイチェルはフゥと息を一つ吐き出すと、気持ちを引き締めてライリーに質問を投げかけた。




