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「では、私と恋をしてみませんか?」


 自然と自らの口からスルリと出てきた言葉に、我が事ながら驚きはしたものの。

 それは間違いなく、嘘偽りない私の本心だと言えた。

 確かに私は、彼女と恋をしてみたいと思ったのだ。

 恋などとは無縁だと思っていたこの私が、である。

 ライリーは真剣な顔でミリアムを見つめた。

 ミリアムはライリーの言葉に一瞬キョトンとした顔をしたかと思うと、左手を頬に当てて困ったように微笑みながら、


「まあ、ごめんなさい。気を使わせてしまいましたわね」


 などと、本気にしてはいない様子。

 ライリーは膝に乗せられたお皿を隣の椅子に避けるとスクッと立ち上がり、彼女の膝に乗せられたお皿を反対側の椅子へと避ける。

 そしてーー。

 ミリアムの手を取り、跪いた。


「ミリアム・バフェット嬢。私が恋をしてみたいなどと思ったのは、あなたが初めてだ。私と、婚約してくれないだろうか?」

「え? 婚、約?」


 驚きに大きなヘーゼルの瞳をさらに大きくさせて、ライリーを見つめるミリアム。


「あら、まあ。どうしましょう?」


 そののんびりとした口調は全く困ったようには聞こえないが、オロオロと視線をさ迷わせ始めた彼女の姿がとても可愛らしくて、自分以外の誰にも見せたくないと思った。


「私のことは嫌いですか?」

「いいえ、そんなことはありませんわ」

「ならば……」

「貧乏なんです」

「は?」


 驚きで思わず体が固まってしまった。

 困惑しつつもミリアムを見ていれば、彼女は困ったように重ねられた手に視線を落とした。


「あの、お恥ずかしながら、我がバフェット家はそれはそれはもう、どうしようもないほどに貧乏なんです。父も兄も、私とレイチェルのことはいわば換金するための道具としか思っておりませんの。……もし、私などと婚約してしまったら、あの二人はライリー様のお屋敷へお金の無心に足繁く訪れると思います。あなたにそんなご迷惑をお掛けしたくありません。ですから、お受けすることは……」

「私との婚約に頷けない理由はそれだけ?」

「え? ええ、ですが……」

「金のことだけが問題なのであれば、金で解決すればいい」


 その言葉にミリアムが思わず視線を少しだけ上げると、ライリーの視線と重なった。

 強い意志の感じられる視線から、ミリアムは逃れられない。


「何度も無心に来るというのなら、来させぬようにすればいい。最初に多めの金を目の前にチラつかせて、これ以上の金は渡さないと契約書を交わせばいいし、ついでにバフェット家と君の縁を切る書類も交わしておこう。君は何の心配もせずに身一つで我が家に来てくれたらいい」

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