表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/24

13

 ミリアムの笑顔にそれ以上の謝罪は逆に失礼にあたると判断したらしいライリーは、一度グッと口を閉じてから思い出したように、「そうだ」と話し出した。


「今更ですが、先ほどまで一緒におられた彼は放っておいてよいのですか?」


 ライリーの言う彼とは、格上の侯爵子息であるレアンドルに丸っと存在を無視されてそっとその場を後にした、レイチェルからクズと言われた伯爵子息のことである。

 この男の存在もミリアムはすっかり忘れていたようだ。


「彼?」

「ええ、レアンが来るまで一緒におられた彼です」

「……確かに私、お話していた方がおりましたわね。そういえば、あの方はどこにいかれたのかしら?」


 言われて思い出し、会場内をザッと見渡せば少し離れたところでどちらかの令嬢と楽しそうに話をしている姿が目に入った。

 ライリーはミリアムの視線の先にいる二人を目にし、またしても申し訳なさそうな顔で謝罪した。


「その、すまない」

「何がですか?」

「いや、仲の良いところを邪魔してしまったようで」


 お茶会や夜会は貴族の若い子息令嬢にとって、貴重な出会いの場である。

 その貴重な出会いの邪魔をしてしまったと、あの伯爵子息のクズさを知らないライリーは再度大きな体を小さく丸めていた。

 そんな姿にミリアムはクスッと笑みを浮かべると。


「別に構いませんわ。きっと彼とはご縁がなかったのでしょう。せっかく私のために手を尽くしてくれたレイチェルには申し訳ないけれど、父の望み通りヒキガエル様かトカゲ様に嫁ぎますわ」

「は? ヒキガエル? トカゲ?」


 驚きでライリーの眉間の皺が消えている。


「ええ。実は私、お相手の方がどのような方なのかは存じませんの。ただ妹のレイチェルが父と兄が話していたのを聞いていたらしく、ヒキガエル様かトカゲ様のお二人のどちらかに嫁ぐことが決まりそうだと言っておりましたから」

「ではパーティー(ここ)へ来たのは……」

「もしかしたら最後に良いご縁があるかもしれないと参加させていただきましたが、どうやら私にはご縁はなかったようですわ」


 そう言ったミリアムの横顔は、なぜか晴れ晴れとした顔をしているように見えた。

 もともとミリアムは、父の選んだ相手に嫁ぐつもりでいた。

 貧乏子爵家とはいえ、貴族の結婚とはそういうものだと子どもの頃から覚悟はしていた。

 だが自分のためにあれこれと動いてくれたレイチェルのために、やれるだけのことはしてみようと思ったのだ。

 そしてその結果、自分には良いご縁がなかっただけで。

 出来るだけのことをやってダメだったのだからと、ミリアムの心はスッキリとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ミリアムもレイチェルもむちゃくちゃ可愛いです!アップされている部分3周しました。あまり辛い目に合わずに幸せになったらいいなぁと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ