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 さすがは侯爵家と言うべきか、ブッフェに並ぶ料理には高級食材がふんだんに使用されている。

 黒トリュフのパスタやキャビアをたっぷりのせたスモークサーモンのカナッペに続き、テリーヌだけでもフォアグラを使ったものや色とりどりの野菜を使ったものに海老を使ったものなど数種類あり、生ハムやチーズを使った可愛らしいピンチョスも、目を楽しませてくれる。

 きっとどれも文句のつけようがないほど美味しいに違いない。


「まあ、とても美味しそうですわね。ライリー様は好き嫌いはございますか?」

「あ、いや、特にはないが……」

「好き嫌いなく食べられるのは素晴らしいことですわ。ではちょっと失礼して」


 ミリアムはお皿を一枚手に取ると、少しずつ丁寧に盛り付けていく。

 お皿が埋まれば空いているスペースに一旦置いて、また新たなお皿を手に取り先ほどとは違う料理をまた盛り付けていく。

 ミリアムは料理ののったお皿を二枚手に取るとくるりと振り返り、


「どちらがよろしいですか?」


 と、ライリーに尋ねた。

 一枚はパスタを中心に少しコッテリしたもの、もう一枚はサッパリしたもので纏めている。

 少し困ったような表情に見えるライリーに、ミリアムはうふふと笑いながら言った。


「私の好みのものを勝手に盛らせていただきましたので、どちらを選ばれても文句は言いませんわよ?」


 ライリーはホッとしたように少しコッテリな方のお皿に手を伸ばす。


「……では、こちらの皿をいただこう」

「はい、どうぞ」


 皿を手にした二人は、壁際に並べられた椅子の方へと向かって歩き出した。

 



「ん、美味しい」


 思わず口から言葉がこぼれ出てしまうほどに、ミリアムはテリーヌの滑らかさに感動していた。

 これだけの滑らかさを出すためには、相当丁寧に裏ごししているに違いない。

 ミリアムはフォークを持っていない方の手を頬に添えると、ウットリと目を瞑り味の余韻に浸る。


「バフェット子爵令嬢は……」


 己を呼ぶ声にパチッと目を開けて視線を向ければ、困惑した様子のライリーがこちらを見ていた。


「その、ミリアム嬢とお呼びしてもいいだろうか?」

「ええ、構いませんわ」

「では、ミリアム嬢」

「はい」

「先ほどは大変失礼した」


 そう言って突然ライリーはミリアムに頭を下げた。


「あの、謝罪されるようなこと、ありましたかしら?」


 美味しい食事に先ほどあったことなどすっかり忘れていたミリアムは、困ったように小首を傾げる。


「いや、その、期待しても無駄だとか、婚約者の座を狙っているのだろうとか。疲れていたとはいえ、勝手に他の令嬢達と同じ部類の女性だと決めつけて、大変失礼なことを言ってしまった。本当に申し訳ない」


 言葉の通り申し訳なさそうに大きな体を小さく丸めたその姿は、何とも可愛らしいとミリアムは思った。

 ーー口には出さないが。


「そのことでしたら、全く気にしておりませんわ」

「いや、だが……」

「謝罪してくださるということは、その誤解は解けたと思ってよいのでしょう?」

「ああ」

「でしたらもう謝罪は不要ですわ」


 そう言って、まだ謝罪の言葉を紡ごうとするライリーにニッコリ笑顔を向けた。

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