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西暦2021年11月19日における部分月食の観望記

作者: 比下良治
掲載日:2021/11/19

皆さんもご覧になられたでしょう、天体ショーの記録をかなり簡潔に、最後は感じたことを書き綴りました。

 私がそれを見たのは午後5時を折り返した頃。テレビで九州場所を観戦しているときだった。

 東の空遠くに、伸びた爪先のような白い月が浮かんでいたのだ。地球の影が月の光を食む、所謂月食。その神秘的な天体ショーが私の眼前で行われていた。

 その時でさえかなり食されていたのだが、最大食は午後6時を少し回って3分後のこと。まだまだ食むと云うことだ。

 私はそれから最大食までの約30分間、時を置いて5回観望した。

 その記録をここに書き留めたい。


 と、その前に今回の月食は『部分月食』と云う日本では2017年の8月8日以来となる天体ショーでして、さらに月の約98%が隠れる部分月食、つまり『ほぼ皆既食に近い部分月食』であった。細かく云えば1932年9月15日以来となる約89年ぶりの天体ショーと云える。また、次に見られるのが2086年11月21日の約65年後と云うこともあり、一生に一度見れるかと云った天体ショーだったので私はご満悦である。

 閑話休題。

 1回目の観望はと云うと、前述の5時の半分を過ぎた頃の月。昨日見た満月に近い大きな月は今日、伸びた爪先のように白く、右下の方を6分の1ほど光らせて浮かんでいた。

 その横に地球に食まれて影になった月が赤黒くあった。これは普段の月の満ち欠けでも見られるが今回は全く違う。原因は太陽の入射角度ではなく地球の影なのだ。そう分かっていると、やはり特別な何かを感じて止まない。


 2回目の観望は簡単に云うと、月の右下の方が先程より小さく輝いていた、となる。3回目も4回目も同じだ。

 しかし、その度に共通して思ったことがある。


 「まだまだ小さくなるのか」と。


 このまま行けばやがて新月に為ると思うほど小さくなっていく。伸びた爪先は徐々に切られていくのだった。


 そして最後、5回目の観望。私は6時3分にベランダでそれを見た。私の眼前には僅かに光る月。

 皓々と輝くその天上の金剛は、あぁ、これが……、と恍惚とするまでは無かったが確かに私の心に何かを与えた。それが何なのか私にも分からない。しかし、それはかなり重要なもので、こうして筆を執ったのもそれが起因したと見られる。


 また、人間の()の力に驚嘆させられた。前述の今後の日付のように、未来の天体現象を予測出来る。これは敬服すべき力である。この力はこの世のどんなものより美しく、魅力的なものであり、云うなればアフロディテ学問だろうか。人間に愛と美と心の豊穣を享受するものだと思われる。

 世にこのような高尚たる学問が及べば、きっと長居したくなる桃源郷が作られるだろう。現在の混沌たる時勢を鑑みれば、私はそうなることを願うことばかり。これは書生論に過ぎぬが、書生論も現実に多少必要である。

 明日の良き日のために。



 月食。それはただの天体ショーではない。

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