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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第1部.そして出会いは突然に
8/110

彼らは出会い、物語が始まる



 水晶の洞窟内部は壁一面が光る水晶によって埋め尽くされていて外とは切り離されたかのような幻想的な景色が広がっていた。 

  コウスケはそんな景色に目もくれずただ最深部につながる一本の道を駆け抜けていた。



「 なんだ…これ…」


 最深部に到着したコウスケは言葉を失った。


 翼や首が切り落とされた赤竜の死体…そしてそのまわりに広がる血だまりには首の無い男達の残骸がある一点のまわりに転がっていた。

 その中心には赤みがかった長い茶髪に整った顔立ち、丈の長いスカートを履いた美しい『少女』が倒れていた。

 そんな少女に、コウスケは不覚にも見惚れてしまっていた…


「あの人じゃない?竜人が保護してほしい人って」


 コウスケが固まっていると遅れてやってきたミリンはそう言った。

 コウスケは我に帰ると少女のほうへと駆け寄った。


「大丈夫か…?」


 コウスケはうつ伏せになっている少女を背負うと、大きな袋を抱えたミリンがコウスケのほうへとやってきた。


「ミリン、その袋は?」

ドラゴンの骨とウロコよ。いい武器の材料になるからね」


 ミリンは赤竜のほうへ指差しながらそう言うともと来た道へと歩いていった。

 コウスケは少女を背負ったままミリンのあとを追うようにその場を後にした。



ーーー



「…ん…ここは…?」


 宿にあるミリンのベットの上寝かされていた少女は目を覚ますとまわりをキョロキョロと見回していた。


「あ、起きた?」


 ミリンは手に持ったタオルを絞りながら少女のほうへ目を向けた。


「ちょっと動かないでね…」


 ミリンはそう言うと手に持った新しいタオルで少女の顔をそっと拭いた。


「よし、これで綺麗になった」


 ミリンは血の染みたタオルを洗うと少女は申し訳なさそうに口を開いた。


「あ、ありがとうございます…」


 透き通るような高く美しい声でそう言う少女がベットから降りようとすると部屋の扉が開き、コウスケが入ってきた。


「あ、起きたのか。その、大丈夫か?」


 少女はルビーのような瞳をコウスケのほうへ向けるとゆっくりと後ずさった。


「こ、来ないでください…」


 瞳を潤わせながらそう言う少女にコウスケは混乱しつつも手を上げながら首を振った。


「お、俺はコウスケ。君に何もする気はないよ!」

「ほ、ホントですか?」


 少女は疑うような目をミリンに向けるとミリンは2人に聞こえないくらいの小さなため息をついた。


「ホントホント。大丈夫よ。コウスケにそんな度胸ないし…わたしのこと襲ってくれないし…」


 後半は小さくて聞き取れなかったが少女は安心したのかそっと胸をなでおろした。


「わたしはミリン。コウスケと一緒に倒れてた君をここまで運んできたんだけど…君はなんて名前なの?」


 少女はミリンの顔をじっと見つめると、ゆっくりと口を開けた。


「私はユウ、です。…あなたは確か3日前の…無事でなによりです」

「3日前?」


 少女─ユウの言葉にミリンは不思議そうにしていたがユウは「なんでもないです」とそれ以上は言わなかったので深く言及はしなかった。

 ミリンはユウの全身を見回すと口を開いた。


「ねぇユウ。その格好じゃアレだしお風呂にでも入らない?」


 ユウの服はところどころ血が染みていて破れたりこそしていないがとても痛々しかった。


「オフロ…?なんですかそれ?」

「「えっ?」」


 ユウの以外な返答にコウスケとミリンの声が重なった。



  2人はユウに風呂(主に銭湯について)のざっとした説明をするとユウはガタガタと肩を震わせていた。


「お、男の人と一緒に入るんですか…?い、いやです…」


 そう言いながら首を振るユウを見るとミリンはコウスケのほうを見てウインクをしてきた。

 コウスケはその意図を理解すると自室へと戻っていった。


「ささ、男はいないから早く入りましょう」


 ミリンはユウの手をとると女湯へと連れて行こうとした。


「女湯はダメですよ!大丈夫です、その、私は風呂とやらに入らなくても大丈夫ですから!」


 ミリンは抵抗するユウを女湯に強制連行すると『本日貸切』の札をたてた。



ーーー



 コウスケは自室に戻った後、自分も風呂に入ろうと男湯の暖簾のれんの前に来てきた。


「あれはミリンと…ユウさん?」


 女湯に強制連行されるユウを横目にコウスケは男湯の暖簾のれんをくぐった。


「ほら、さっさと脱いじゃって」


 ミリンはユウに急かすようにそう言うと自分の服を脱ぎ始めた。


「な、何やってるんですか!私は男ですよ!」


 顔を赤らめてそう言うユウの言葉をミリンはまったく信じようとせず全て脱いでしまった。


「またまた〜こんな可愛い男がいるわけないじゃない〜♪」


 ミリンはユウの服に手をかけるとユウが抵抗するよりもはやくそれを剥ぎ取った。


「や、やめ…」

「えっ…」


 ミリンは固まった(主にユウの下半身を見て)。ユウが男であることよりも赤いドラゴンのような尻尾にミリンは目を奪われた。

 ユウはとっさに手で隠すと遅れて状況を理解したミリンは顔を赤らめ──


「「い、いやあぁぁぁぁぁっ!」」


2人の声が重なった。



「な、なんだ⁉︎」


 ひとり男湯に浸かっていたコウスケは女湯側から聞こえてきた声に驚いていた。


「ミリンが何かしたのか?…まぁいいや。幸いあのときみたいなことは起きてないしこれが正解だったってことでいいのかな…?」


 コウスケはブツブツと呟きながら鼻まで湯船に浸かるのだった。




「もうお婿に行けない…」


 一通り叫んだ後、落ち着いたユウはそんな声をもらした。


「ご、ごめん!まさかホントに男だったなんて…」


 ミリンはそう言うと話を変えるように咳払いをするとユウの肩に手を置いた。


「見られたものは仕方ないよ。もうこの際一緒に入ろう」


 ミリンの発言にユウは驚いた表情をしていた。


「だ、駄目ですよ!私だって男ですよ!全裸の男女2人は構図的にダメです!もっと警戒心を持ってください!」


 早口でまくしたてるユウに若干気圧されながらもミリンは言葉を続けた。


「大丈夫よ。わたしにはユウがそんなことする人には見えないもん。それともなに?わたしのこと襲ってくるの?」

「しませんよ⁉︎そんなこと!」

「そこまで即答されると女として複雑だわ…でもそれなら問題ないよね」


 ミリンがそう言うとユウは観念したように手をあげると湯船へと連れていかれた。



「ねぇユウ」

「なんですかミリン?」


 ミリンはユウの髪を洗いながら言葉を続けた。


「なんでスカートなんて履いてたの?」


 ユウはピクッと反応すると口を開いた。


「あれは母さん達の形見です…それに、姉さんが尻尾を隠すならこれがいいって言ってたので…」


 ユウの言葉はミリン予想より重く、そんな空気に耐えられなくなったミリンは話を切り替えようと口を開いた。


「そ、そういえばユウはこれからどうするの?ここまでユウさえ良ければ一緒に冒険者やらない?」

「冒険者…ですか?あの人を襲う輩ですか?」


 ミリンはユウの意外な発言にしばらく固まっていたがユウが何故コウスケにあんな反応をしたのかわかった気がした。


「大丈夫よ。わたし達はそんなことしないし」


 ミリンがそう言うとユウはクスクスと笑いだした。


「いいですよ。私も貴方達なら大丈夫です。悪い人には思えません。それにミリンもコースケさんも私と同じ力を持っているみたいですし」


 笑顔でそう言うユウはとても美しく、可愛らしかった。(男なのに)



ーーー



「…と、いうわけでユウ。わたし達のパーティへようこそ!」


 風呂から上がったユウとミリンは服(ユウはミリンから借りたスカート丈の長い女性服)を着るとミリンの部屋に集まっていた。


「よろしくお願いします」


 一つにくくった長い髪のユウは風呂上がりなのもあり、とても不思議な魅力が漂っていた。


「歓迎するよユウさん。これからよろしく」


 コウスケは手をさし出すがユウはビクッと反応すると半歩後ろに下がった。


「あ、あはは…」


 2人の乾いた笑い声とともに新しい生活が始まった。

  皆さんこんにちは赤槻春来あかつきはるきです。


  とりあえず第1章完ということで2人の主人公、コウスケとユウの出会いまで書かせてもらいました。


 8部に分かれていて読みにくいと思いますがこれからも読んでくれると嬉しいです。


 更新は不定期ですがコメントやツイッターで不満点など書いていただければ改善していこうと思いますのでよろしくお願いします。


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