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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第4部.彼らの後を追いかけて
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それぞれの役目

『…()はもういない。なら、私()が呼ばれた意味は一体…』


 コウスケ達が寝静まった夜。コウスケの部屋のテラスから顔を出した少女は夜空を見上げながらひとり、そう呟いた。


「─それは魔王ルインの仕業、でしょう?悪魔さん」

『…魔人・・、か。まさか私の索敵に引っかからないとはね』


 不意に屋根の上から聞こえてきたその声に、少女は驚いた様子も見せずにそう呟くと、何処か警戒するようにその視線を声のしたほうへと向けた。


『それで、私になんの用かい?わざわざこんな夜中に聞くということは、それほど彼らには聞かれたくない事なんだろう?』

「…いや、別に聞かれても困るような事ではないけど、今のあの子達は知る必要が無いからね。ただでさえ問題を抱えてるのに、そこに追い討ちをかけるわけにはいかないわよ」


 少女の声にそう答えながら屋根から飛び降りる魔人・・

 少女は、隣に着地したその姿を前に一瞬その目を見開くと、すぐさま何も無かったように視線をそらした。


『…それで、話っていうのは?』


 何処か焦った素振りを見せながら、そう言う少女。

 そんな少女を前に、魔人・・は腕を組みながら手すりによりかかると、少し間を開けてから静かに口を開いた。


「そうね…この世界の神話の真相について、詳しく聞かせてくれないかしら?」

『…なんでそんなことを』

「知ってるんでしょう?貴女…いえ、創造神の使いの1人、トイフェル(・・・・・)なら」



ーーー



「ねぇユア」


 魔王城の一角、そんな声とともにローズの部屋へと足を踏み入れたマラリア。

 しばらくの沈黙の中、不意に部屋に火の玉が出現すると、空気から滲み出るように狐の面を付けた女が姿を表した。


「何?マラリアから私に話しかけてくるなんて」

「…ちょっと、聞きたいことがあってね」

「…聞きたいこと?」


 マラリアの言葉にピタリと動きを止める女。

 その様子を前にマラリアは一瞬顔をしかめると、釘を刺すように言葉を繋げた。


「言っておくけど、この前あれ、一応貸しだからね?まさか断ったりは」

「しないわよ。そんな無粋なこと。それくらい覚悟の上で頼んだからね」

「なら、いいんだけど…」


 歯切れの悪いマラリアの言い方に、何処か苛立った様子で腰に手を当てる女。

 マラリアはそっと息を吐くと、女に歩み寄りながら口を開いた。


「ユアは…天使・・の居場所を知ってるかしら?」

「天使…?あの神話に出てくる存在?」

「そう、その天使よ」

「…何故、そんなことを聞くの?」

「そうね…イヨちゃんからの伝言、じゃ駄目かしら?」

「イヨちゃんから?…そう、そうなのね…」


 マラリアの言葉に一瞬驚いたように声を上げた女は、マラリアの今までの言い回しに対し何かを察したのかうんうんと頷くと、そっと視線をマラリアへと向けた。


「…じゃあ、私の方でも少し、探って見ることにするわ。貴女も、それでいい?」


 女の言葉にコクリと頷くマラリア。

 マラリアのその反応を前に、女は何かを考えがあるといった様子で再びその視線をそらすと、何処か楽しそうに妖艶な笑みを浮かべながら、空気に溶けるように消えていった。



ーーー



 アラクネとの交戦から2日。

 再びガウラに呼び出されたコウスケ、ミリン、スミレの3人はギルドへと足を運んでいた。


「コウスケです。入ってもよろしいでしょうか?」

「お…来たか、入っていいぞ」


 部屋の中から聞こえたガウラの声に、応接室の扉を開けたコウスケ。

 ガウラは扉の前に立つコウスケ達を座るように促すと、そっと部屋の鍵をかけた。


「それでガウラさん、話って一体…?」


 ガウラがソファーに腰掛けると同時に口を開いたコウスケ。

 3人の視線が集中する中、ガウラは窓を一瞥すると、手元に出現した魔法陣の中から数枚の資料のようなものを取り出した。


「まずは、コイツを見てくれ」


 ガウラに促され、資料に目を通すコウスケ。

 資料には先日の一件に対する詳細と共に、目撃されたとされる虐殺の女神(・・・・・)の情報や各所で起きた盗賊関係の事件について記載がされていた。


「見てもらったとおり、この情報が正しければ虐殺の女神が世界中の色んな国に足を運んでいたことになる。…それがどういう意味か、わかるか?」


 一拍おいてそう言うガウラ。

 コウスケとミリンはその意図を汲めなかったのかお互いの目を合わせていると、しばらくの沈黙の後、不意にスミレが呟くように口を開いた。


「…魔王軍の手が世界中に広まっている、ということですか」

「正解だ」


 スミレの言葉に静かにそう返すガウラ。

 首を傾げるコウスケとミリンを横に、2人は資料の中から1枚を取り出すと、ガウラの手元にあった地図と共にそれを机の上に広げてみせた。


「虐殺の女神が現れたのはこの3箇所。森の中で目撃されたというこの場所は先日お前達に行ってもらった村のすぐ近くだ。同一といっていいだろう」

「問題は残り2箇所、ということですね」

「あぁ…片方は数ヶ月前に水没した例の国、そしてもう片方が…」

「古代都市『ヴィエーユ』…」


 呟かれたようなスミレの声。

 ガウラとスミレの不意にしんとしたその空気に、コウスケとミリンはそっと息を呑んだ。


「そう、あの古代都市ヴィエーユだ。噂には聞いているが、実際のところ俺もまだ行ったことはない」


 神妙な表情でそう言うガウラ。

 何処か重い空気が流れる中、知識の疎いコウスケがその噂について聞こうと口を開いた瞬間、まるでその先を言わせないといったタイミングでコンコンと窓が叩かれた。


「…やはり来たか」


 自身で作った空気を壊すように、知っていたような様子でそう呟いたガウラ。

 3人の視線が注がれる中、ガウラはそっとその席を立つと、音のした窓を勢いよく開いてみせた。


「これは…」

「あの時の…」


 静かに羽音を立て、開け放たれた窓から部屋へと入ってきた1羽の美しい鶴。

 コウスケとミリンがポツリと呟くと同時に、机の上に乗った鶴は、一瞬にしてその姿を手のひらサイズの折り鶴へと変えた。


「…すまないが、この話はまた後で話す。今は…コイツの対応が先だ」



ーーー



 アイテム屋KAZUにて。

 ガウラとの話を終え、少女と共に買い物をしていたスズナ、ライムと合流したコウスケ達。

 カズヤに案内されるようにレジの裏へとやってきたコウスケは、ミリン達にレジを手伝うようにそう言うと、ガウラから預けられた折り鶴をポケットから取り出した。


「おっちゃん、これ…」

「折り鶴…どうしてあんちゃんがこれを?」

「さっきギルドに飛んできた奴で、ガウラさんから預かった。おっちゃんに見てほしいって…」


 コウスケのその言葉に、そっと折り鶴を取ったカズヤ。

 コウスケが見つめる中、カズヤはそっとその折り鶴を広げると、中に書いてあったその内容を目にそっと肩を落とした。


「あんちゃん、この鶴…ガウラは開けたのか?」

「いや…コレが来た瞬間練習してたみたいに俺に手渡してきたんだ。おっちゃんが開けるべきだから届けてこいって」

「はぁ…アイツらしい…」


 そう呟きながら頭に手を当てるカズヤ。

 カズヤの手元にあった広げられた紙は、まるで要件は済んだとでも言っているように発火すると、カズヤの手の中で跡形もなく消滅した。


「あんちゃん」

「…?」

「…ユウの居場所がわかった」

「…ぇ?」


 唐突の言葉に素っ頓狂な声を上げるコウスケ。

 カズヤは頭に置いていた手をそっと離すと、困惑した様子のコウスケの肩をガッシリと掴んだ。


「あんちゃん…いや、コウスケ。あの手紙には、2日後、ユウがとある遺跡へ行くと書かれていた」

「2日後…?でも、それじゃあまだ」

「…いや、あの手紙()がここに届くまで2日かかる」

「…ってことは、ユウさんは今日その遺跡とやらに向かってる…?」

「あぁ、そういうことだ」


 コウスケの言葉に頷いたカズヤは不意に、背後にあった棚から2つのスマホ(・・・)小さな箱(キューブ)を取り出すと、そっとソレをコウスケの前へと差し出した。


「おっちゃん、これは…?」

「コイツは俺からの餞別…新しい2人の分と改良したあんちゃん専用の翼だ。…ユウのこと、任されてくれるか?」

 懇願するようなカズヤの表情を前に、コウスケはそっとソレを受け取ると、力強く頷いた。




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