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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第4部.彼だけが失った世界で
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仲間と対価

「…ごめんなさいコースケさん」


 目の前に倒れるコウスケ達を前にユウはひとりそう呟くと、都内に立つルインへとその瞳を向けた。


「これで…コースケさん達には手を出さないんですよね」

「あぁ…俺は約束は守る男だからな。貴様がそれを破らない限り俺は手出しはしない。…だが、そうだなぁ…貴様の言うことを何か一つ叶えてやる。これでどうだ?」

「一体、どういう風の吹き回しで…」


 ルインの言葉に驚愕と言った視線を向けるユウ。

 ルインは相変わらず奇妙な笑みを浮かべると、その言葉を続けた。


「何、別に変な意味はない。俺が約束を守るってことを証明するだけだ。これで貴様に逃げられでもしたら意味がないからな」

「…ッ!そんなこと…ッ!」

「いいから何か一つ言え」

「─ッ!」


 ふざけたようなルインの言葉に歯を食いしばったユウが殴りかかりそうになるその拳を抑えた瞬間─



『出会っているという事実がなければ悲しむということもない』



 一瞬脳裏をよぎった考えを前に、その口をゆっくりと開いた。


「…なら、彼らの記憶の中から私という存在を消してください」



ーーー



「ローズ」

「はい、父様」


 魔王城の一室。不意にルインが名前を呼ぶと、まるで空気から滲み出るようにローズが出現した。


「正真正銘、貴様のだ。貴様に課す任務ただ一つ…ローズを守る、それだけだ」


 ルインの言葉に目を瞑ったままただただ立ち尽くすユウ。そして、目の前にローズが立つとユウはゆっくりとその瞳を開けた。


「はじめまして兄様。これから一生、よろしくお願いしますね」


 表情も無く、ただ機械のようにそう言うローズ。

 ユウはそっとその手をローズの頭に乗せると小さく頷いた。



ーーー



「あら、先約がいたのね」


 ルインの痕跡を追い、空間を裂いて災いの森までやってきたマラリアは目的地であるコウスケ達の交戦した場所へと向かうと、既にその場に立っていたコウスケ達以外・・の人物を前にそう呟いた。


「マラリア…」

「ちょっとちょっと!いきなり武器を構えないでよイヨ・・ちゃん!」


 マラリアに名前を呼ばれたイヨはそっと構えていたクロスボウを下ろすと、改めてマラリアの方へと向き直った。


「貴女、何の用なの?」

「あたしはユアちゃんに頼まれてこの子達を回収しに来ただけ。…あ、別にルインに頼まれてイヨちゃんを捕まえに来たわけじゃないよ?」


 イヨの言葉にどこか戯けるようにそう言うマラリア。

 イヨはそんなマラリアを前に溜息を吐くと、呆れたように腰に手を当てた。


「義母さんの頼みならいいや、私もどうせ同じ目的だったし」

「えっ…じゃあお姉さんの言葉を信じてくれるの!?」

「『義母さん』のことは信用してるからね」

「もー釣れないなぁ…」

「手当だけはしておいたから、さっさとこの子達を街まで返してあげて」

「はいはいっと」


 マラリアの言葉を無視し、淡々とそう言うイヨは背中を向けてその場を離れようとした瞬間、不意に足を止めて「それに…」と言葉を付け足した。


「貴女、150超えて経験ないからってそのキャラはちょっと…いや、結構痛いからね」

「な!?イヨちゃん!?」


 マラリアがその言葉に反応するや否や、イヨはどこか微笑を浮かべると、空気に溶けるようにその場を後にした。



ーーー



「───ユウ…さん…」



 無意識のうちに漏れたその名前に、思わず持っていた武器を落とすコウスケとミリン。

 2人は、目の前で対峙するその人物に対しどこか安心したような、そんな不思議な感覚に襲われていた。


「ユウさん!ユウさんだよね!よかった…俺、ユウさんが魔王に攫われたから心配しt…」


「何故、貴方が私の名前を知っている」


「えっ…」


 久々(2週間ぶり)の再会を前にコウスケが近づこうとするも、ユウから返ってきたその言葉にコウスケはその足を止めた。


「何故って…ユウさん、覚えてないの…?」

「覚える?寝言は寝て言いなさい」

「そんな…!俺だよ!コウスケだよ!一緒に冒険者として戦ったじゃないか!」


 身体を動かして熱弁するコウスケの姿に、ユウはゴミを見るような目でしばらくそれを見ると、呆れたようにどこか溜息を吐いた。


「コウスケと言いましたか…貴方もどうせ倒すべき相手であることには変わりませんしね」

「ユウさん…」

「…チッ…気安く名前を呼ばないでくださいよッ!」


 食い下がるコウスケに対し、ユウは不機嫌そうに舌打ちをすると、持っていたペンデュラムを振り回した。


「ッ!」


 コウスケはすんでのところで地面を蹴ってそれをかわすと、後方へ退いて落としていた2本の剣を拾って身構えた。

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