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バットエンド・キャンセラー  作者: 赤槻春来
第3部.始まる旅の行き先は…
48/112

初めての野宿



「…別に隠す必要ないと思うけど?いつもの姿でもいいけど俺はその格好も好きだぞ。パワーアップって感じがして」

「ぱ、パワーアップ…?なんか複雑…」


 一通りの説明を終えたミリンにコウスケがそう言うと、ミリンは今まで肩に入っていた変な力が抜けたのか、今更ながら全身に疲労が押し寄せてきた。


「あ、おい!大丈夫かミリン!?」


 ガクリと崩れるように倒れるミリンをコウスケが咄嗟に抱き抱えると、ミリンはその腕の中で静かに寝息を立てていた。


「これは安心しただけだろ。悪いがコースケよ、ミリンのことは任せていいか?」

「えっ!?この状態でですか!?」

「あぁ…今ユリとサクラが野宿のできそうな開けた場所を探してる。俺達も2人と合流して野宿の支度をするぞ」


 コウスケはそんなユイの言葉に影移動で宿に戻ればいいのではと思ったが喉まででかかったその言葉をすんでのところで飲み込んだ。




「義姉さん、ここはどうでしょう!?」

「さっきのアレよりはマシだと思うんだけど…」


 2人と合流したコウスケ達はそう言って指さされた空間を見て納得したように頷いた。


「用意したテントを建てるぞ。あ、コースケは完成し次第自分用のテントを建ててくれ」

「わかりましたよユイさん」


 コウスケは魔法陣からクッションのようなものを取り出すと、背負っていたミリンをその上にそっと寝かせた。



ーーー



「…では、アヤメはここにはいないと」

「はい」


 事件の一部始終を見ていた少女エルフからアヤメについて聞いたユウは、アヤメが連れ去られたことを知って言葉を失っていた。


「あ、でもローズって呼ばれてた女がアヤメを攫ったわけじゃないですよ」


 そんなユウを前に少女エルフはふと思い出したようにそう言うと、ユウの疑問に答えるように言葉を付け足した。


「あの後現れた別の女…たしか『イヨ』って呼ばれてた女が3人に敵対するみたいにアヤメを攫っていきました。ローズはその女のことを確か…『姉様』?って呼んでました」

「イヨ…?いや、まさかそんな…」

「イヨについて何か知ってるんですか?」

「いえ、私が小さい頃に同じ名前の幼馴染がいたので。少し、ね?」


 ユウはそう言うと、ポケットの中に入っている指輪を布越しに握りしめた。

 少女エルフはそんなユウの様子を察したのかそれ以上問いかけることはなかった。


「竜人様、お話は終わりましたか?」


 タイミングを見計らっていたのか、しばらく続いたその沈黙を破るようにレンゲが部屋へと入ってきた。


「えぇ、もう終わりましたよ。どうかしたんですか?」

「いえ…わたくしレンゲ、失礼ながら貴女様の名前を知らなかったので…」

「私の名前?ユウですけど…」

「ユウ!?」


 ユウがそう名乗った瞬間、先程までどこか他人行儀だった少女エルフが大声を上げながら立ち上がった。


「アヤメが言ってた竜人の冒険者ってまさか…」

「アヤメさんが…?あーそういえば私、前にここにきた時はアヤメさんにしか名乗ってませんでしたね。コースケさん達が普通に呼んでたので皆さんわかってるものだと思ってました」

「じゃあやっぱり…」

「多分私のことだと思いますよ?そもそも竜人自体伝説上の生物ですし、私も姉さんやミリンくらいしか知りません」

「ほぉ…まさか竜人様…いえ、ユウ様以外にも竜人がいたとは。わたくしレンゲ、驚きが隠せませんな」


 ユウの言葉に対し、驚愕のあまり固まっている少女エルフとどこか楽しそうに笑うレンゲを前に、ユウは苦笑いを浮かべることしかできなかった。



ーーー



「これでよし」

「義姉さん、何してたんです?」


 テントをたて終えたコウスケ達がテント内に各々荷物運び込む中、外で何やらやっていたユイにサクラが声をかけた。


「結界魔法だ。明日の朝までしかもたないがこれがある限りドラゴンクラスの魔物じゃない限りここには入ってこれん。安全確保は野宿をする上で欠かせないからな」

「結界…ですか」

「ま、結界これの内側にいるコースケ(オオカミ)に襲われたら別の話だが…ミリンがなんとかするだろ」

「…?」


 ユイはそう言うと、女性用の大きめのテントへと入っていった。

 コウスケ達がたてたテントは2つ。片方はユイ、ユリ、サクラの3人が入る女性用テント、もう片方はミリンが中で寝ているコウスケの使うテントである。(コウスケは最初こそ反対したものの、3人の勢いに押し切られた)


「義姉さん、ユウは?」


 ユイがテントの中入ると既に中に待機していたユリがそう問いかけた。


「ユウなら例のエルフの街だぞ。なんかあったみたいで合流は明日になるらしい」

「残念…」

「言うな、俺もサクラ(あいつ)もそう思ってるさ」




 3人に押し切られる形でミリンと共にテントに入っているコウスケは、気持ちよさそうに寝るミリンを前にただひとり、何を考えるわけでもなくボーッとしていた。


「…腹減った。そういや朝からなんも食ってないや」


 コウスケは思い出したようにそう呟くと、魔法陣の中に手を突っこんで何か食べれるものを漁り出した。


「…ん…コウスケ?」

「あ、ミリン起きたか?」

「うへへ…コウスケぇ…」

「ちょ、ミリン!?」


 ふと目を覚ましたミリンは寝ぼけているのか、その尻尾と両腕を使ってコウスケを拘束すると、そのままコウスケを押し倒した。


「コースケ、夕食を持ってk…」

「あ…」

「…お取り込み中悪かったな。じゃあ俺はこれで…」

「ユイさん!?誤解ですって!せめて夕食だけでも置いていって!?」




 翌朝、無事森で一晩を過ごしたコウスケ達はテントから出ると各々の身体を伸ばしていた。


「リーダー、どうしたんですか?目の下クマできてますよ」


 どこか意地悪そうにニヤニヤとそう問いかけるサクラ。


「あ、うん…気にしないで…」

「ま、リーダーのことですからどうせミリンに抱きつかれてて眠れなかったとかなんでしょうけど」

「な、なんでそれを…」

「へぇ…図星ですかぁ」


 サクラのその台詞にコウスケは墓穴を掘ったことを悟ると、誤魔化すように吹けもしない口笛を吹くとそっと目線をそらした。


「ユイさん!?何やってるんですか!?」

「え?こっちのほうが楽でいいだろ」


 ミリンとユイの声にコウスケ達が視線を向けると、そこにはテントがズブズブと影に沈むという異様な光景が広がっていた。


「えっ…何が起きてんだ?」

「うはぁ…すごい光景…さすが義姉さん」

「あたしもこの発想はなかった」


 困惑するコウスケとミリンに感心するような声を上げるユリとサクラ。コウスケが状況を理解した頃には既にテントは無くなっていた。


「よし、これでいいだろ」

「いやいやいや…ユイさん、何してんですか!?」

「何って…影の中にしまっただけだけど?」

「テント、片付けなきゃいけないのに!?」

「わざわざまた時間をかけて立て直す時間はない。影の中(ここ)にしまっとけばこのまま直ぐに設置できるだろ」


 ユイのその言葉にコウスケはなんとなくその意味を理解すると、それ以上は言及するのを諦めた。



「みなさんおはようございます」



 コウスケ達が落ち着くと、不意にユイの影の中からそんな声と共にユウがヌッと現れた。


「遅かったな。何してたんだ?」

「遅いって姉さん…開口一番がそれってひどくないですか?まぁいいですけど」


 ユウはユイにそう言い返すと、一度話題を変えるようにスゥっと息を吐いた。


「レンゲさん達の情報によれば近くの街に遺跡があるみたいです。まぁそこに住んでるダークエルフ達は交戦的で遺跡に近づくことすら難しいらしいですけど…そこには数百年前からドラゴンが住み着いてるみたいなので、その方に話を聞こうかなと」

ドラゴンなら交渉は俺達ができるし妥当か…霊竜オーダー・ドラゴンの時みたいに何か状況を知ってるかも知れないしな」


 ユウとユイがそれぞれそう言うと、コウスケ達はお互いの顔を見合わせた後、異論はないというように頷いた。



ーーー



『俺達を呼ぶ声が聞こえる…』

『我らが弟よ』

『俺達の血を引く弟よ』

『我らのこの目て確かめようぞ』


 深い霧に埋まった遺跡の中、2つの声は抑えきれぬその威圧感と共に遺跡内に響き渡った。

 影操作有能すぎ!


 みなさんこんにちは!赤槻あかつき春来はるきです!


 第15章、いかがでしょうか?短いって?いやこっちもいろいろとあるんだよ…

 始まったコウスケ楽しみの『旅』の終着点はどこになるのやら…(あんまり長くはない)


 今回は前半、後半通じてユウが別行動をしています。あのエルフの街でユウは一体何を見てきたのやら…

 コウスケ達はテントをはるのに苦戦していた様子。なお、寝ぼけたミリンの行動はまだDTのコウスケには厳しかった模様。(当たり前だよね)


 さてさて次回は16章!最後のあの声の正体が明らかに…!長くなりそうだから17章と合わせて前編、後編になりそうです。

 そろそろユウちゃんに強化がほしいのは内緒。


 面白いと思ったら今後も読んでくれると嬉しいです。

 感想やアドバイスなどありましたらコメント欄やツイッターなどに書き込んでくれると幸いです。


 それではみなさん、またどこかでお会いしましょう。

 バイバイ!

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